【2026年をどう占いますか?】 答える人 塩野義製薬会長兼社長CEO・手代木 功

 どこもやらない「低分子」「感染症」分野で攻める!

 ─ 日本の健康社会を支えている塩野義製薬会長兼社長CEOの手代木功さんに伺います。製薬業界は今後ますますグローバル市場での競争が激化してくると思いますが、26年はどんな基本姿勢で臨んでいきますか。

 手代木 近年、世界の製薬企業の株価は全セクターで最下位に沈み、底値も見えない不透明な状況が続いています。各国の保険制度や薬価、医療サービスの提供方法は税制も絡み、非常に複雑です。

 一方で、病気で苦しむ人々が世界中にいることは事実です。その方々に本当に必要とされる良い薬を提供することが我々の使命であり、業界全体が取り組んでいる課題です。

 当社は安全保障の観点から製薬ビジネスの重要性を訴え、各国政府との対話を深めていきたいと考えています。25年度は米国政府から当社の化合物の開発費として600億円ほど投資いただく契約を締結しましたし、工場設立の要請もいただきました。

 創薬はイノベーションが肝で、どれだけ新しい薬をグローバルに展開できるかが勝負です。先行き不透明な中でも、やるべきことを着実に進めることが重要な1年になると考えています。

 ─ その中で鳥居薬品とJT(日本たばこ産業)本体の医薬事業を買収しましたね。

 手代木 世界の潮流は抗体医薬や核酸医薬といったバイオ医薬に傾いています。一方、当社の強みである飲み薬に必要な「低分子」や「感染症」治療薬は、コスト面で採算が合わず、世界の製薬メーカーは撤退傾向にあります。

 しかし当社は、飲み薬やコロナ・インフルエンザなどの感染症治療薬、さらに抗HIV薬では世界で最も強いメーカーの1つです。(赤ん坊からお年寄りまで誰でも罹る気道感染症の)RSウイルスの治療薬候補は世界一だと自負しています。

 そこに、低分子に強みを持つJTさんの医薬事業、さらに鳥居薬品さんのアレルギーや皮膚科領域が加わることで、強みを掛け合わせ、レバレッジを高めながら世界に出て行く考えです。

 ─ 強みを磨くと?  

 手代木 ええ。26年以降は「感染症」と「低分子」という他の企業が手を引く領域でグローバル展開を加速します。コストコントロールを徹底し、資源を最大限に活用しながら、企業としてのインテグリティ(誠実さ)を守る。この強みへの集中戦略こそが、他国や他の製薬企業との差別化になると考えています。

 すべては当社の「最大たるより最良たれ」という思想に基づいています。引き続き、世界でも独自の道を歩んでいきたいと考えています。

日本医科大学学長・弦間昭彦 日本再生をどうするか?〈少子高齢化時代の医療人の育成と役割〉