豊田通商とそのグループ会社であるユーラスエナジーホールディングス(以下、ユーラスエナジー)、NTTドコモビジネス(旧 NTTコミュニケーションズ)は1月14日、北海道稚内市において風力発電由来の再生可能エネルギー(再エネ)を活用したグリーンデータセンター事業「宗谷グリーンデータセンターI(仮称)」を開始することを発表し、記者説明会を開催した。

今回の事業においては、ユーラスエナジーグループが同市内で運営する樺岡ウインドファーム(以下、樺岡WF)に隣接するデータセンターを建設し、同WFに直結して「生グリーン電力」を供給する。

なお、生グリーン電力とは、一般送配電事業者の系統を介した供給や、非化石証書などを組み合わせた電力ではなく、風力発電所から自営線で直接送られるグリーン電力を指す。

  • 宗谷グリーンデータセンターI(仮称)の概要

    宗谷グリーンデータセンターI(仮称)の概要

道北地域におけるデータセンターでの再エネ利活用の有効性

豊田通商グループは宗谷地域で現在10件の風力発電所を運営しており、その総連系容量は525.5メガワットに上る。道北の宗谷地域は風況に恵まれた有数の風力発電適地とされ、再エネ利活用のポテンシャルが高い地域となる。地形がなだらかなため開発面積を低減可能で、工事に伴う自然環境への影響も小さいと考えられる。

しかしその一方で、地域内の電力需要の不足や送電網の容量不足により、新たな風力発電所の建設は難しい。

  • 道北地域の優位性

    道北地域の優位性

近年、世界ではAI技術の発展に伴ってデータセンターの電力需要が拡大し、電力(ワット)とデータ処理や通信(ビット)を統合的に最適化する「ワット・ビット連携」の重要性が高まっている。また、その電力源として温室効果ガスを排出しない再エネへの期待が高まっている。

ただし、国内においてはデータセンターの多くが東京や大阪といった都市部に集中しており、電力負荷の偏在や災害発生時の事業継続性の観点から、送電網の負荷軽減、再エネ導入の拡大と地産地消の促進、データセンターの地方分散に貢献し、地域におけるエネルギーとデジタルインフラの価値創出を実現するため、両社は宗谷地域においてデータセンター事業を開始する。

  • データセンターの再エネ利用における課題

    データセンターの再エネ利用における課題

説明会に参加した稚内市長の工藤広氏は、同市におけるデータセンター運営の優位性について「この地域の冷涼な気候はデータセンター最大の課題である冷却コストを抑制し、二酸化炭素の排出削減に直結する。また、広大な土地や安定した地盤などの地理的特性から、将来の国際海底ケーブル活用という地理的なポテンシャルも秘めている。さらに、豊かな再エネ資源を有している」と紹介した。

  • 稚内市長 工藤広氏

    稚内市長 工藤広氏

風力発電所直結型のデータセンター稼働開始

今回の事業では、稚内市の樺岡WFに隣接する9900平方メートルの敷地に、受電容量3メガワット規模のドーム型データセンターを整備し、自営の送電線を通じて生グリーン電力を直接供給する。2026年4月着工、2027年中に稼働開始予定。

豊田通商はデータセンターサービスを提供し、サーバやネットワーク機器を収容できる環境を利用者のニーズに合わせて提供する。提供形態は、土地や建屋などのインフラを提供するホールセールサービスと、コンテナ型のデータセンターやラック単位でサービスを提供するコロケーションサービスの2種類。

  • ホールセールサービスとコロケーションサービスを展開する

    ホールセールサービスとコロケーションサービスを展開する

ユーラスエナジーは、土地と建屋の整備と生グリーン電力の供給を提供する。また、樺岡WFからの供給電力が不足する場合に備え、再エネ由来の電力を追加で調達できる仕組みを整える。

豊田通商のエンタープライズIT事業部で部長を務める水川和巳氏は、今後の構想について「受電容量3メガワットの宗谷グリーンデータセンターI(仮称)を2027年中に稼働開始する。2030年頃には道北地域でデータセンターを拡張し、受電容量10~20メガワット規模のデータセンター事業を検討する。さらに将来的には、100メガワットを超える大規模なデータセンター集積エリアと風力発電の一体開発も検討する」と説明した。

  • 豊田通商 デジタルソリューション本部 エンタープライズIT事業部 部長 水川和巳氏

    豊田通商 デジタルソリューション本部 エンタープライズIT事業部 部長 水川和巳氏

また、NTTドコモビジネス クラウド&ネットワークサービス部の松林修氏は「北海道においては、豊富な再エネと冷涼な気候を活用したコンテナ型データセンターが今後も展開されると想定している。その際には、札幌を中心に石狩、千歳、苫小牧、稚内などにデータセンターが集積するだろう。IOWNの低遅延なネットワークによって、これらの土地を有機的に結合していく」と、展望を語っていた。

  • NTTドコモビジネス プラットフォームサービス部門 クラウド&ネットワークサービス部 第二サービス部門 部門長 松林修氏

    NTTドコモビジネス プラットフォームサービス部門 クラウド&ネットワークサービス部 第二サービス部門 部門長 松林修氏