こんにちは! 4月から未来館で働いている、丸山遥香(まるやまはるか)です。

 

私は高校生まで群馬県育ち。群馬県は海に面していない、いわゆる「海なし県」です。

そんな私が挑戦したのが、2025年度国際海洋科学掘削計画(IODP3)研究航海乗船サイエンスコミュニケーターです。海洋研究開発機構(JAMSTEC)が所有する地球深部探査船「ちきゅう」に乗り込み、アウトリーチ活動を行うというものでした。

海とは程遠い生活を送ってきましたが、なんと陸がまったく見えない海の上で2週間も船上生活をしました。

初めての船酔いに苦しみながらも(普段乗り物酔いもしないのに……!)、楽しく充実した船上生活を送りました。

 

このシリーズでは、「ちきゅう」で私が見た地球科学の最前線をお届けします。

「ちきゅう」と私。スケールの大きさが伝わるでしょうか。

「ちきゅう」ってどんな船?

「ちきゅう」は、JAMSTECが保有する世界最大の科学掘削船です。その大きさは全長210 m、船底からデリック(やぐら)のてっぺんまでの高さはなんと130 m。200人もの人が乗ることができる、とても大きな船です。この船からドリルパイプを海に降ろし、海底の地面を掘削します。昨年9月から12月に実施された研究航海で、総パイプ長が7,906mとなる最も深いところまで掘ることに成功し、今年9月にギネス世界記録に認定されました。

 

「ちきゅう」での生活を綴った科学コミュニケーターブログがありますのでぜひ読んでみてください!

三浦菜摘「ちきゅうの上からこんにちは~SC三浦の航海日誌#3~ちきゅうの歩き方」(https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20241225post-542.html)

「ちきゅう」はどこに行ったの?

清水港出航のときの様子。JAMSTECの職員や、海のみらい静岡友の会の皆さんが見送ってくれました。

10月18日午前10時、「ちきゅう」は母港の清水港(静岡県)を出発しました。港にはたくさんの方がお見送りに来てくださいました。「ちきゅう」はたくさんの方に期待され、愛されている船なんだなと実感しました。そして約2日間かけて宮城沖200 kmの地点に到着。ここが今回の調査地です。周りを見渡すと、海と空だけ。陸地はまったく見えません。

そこは2011年3月11日の東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震の震源地付近です。2012年、2024年にも、「ちきゅう」は同じ場所を調査して、その場所で何があったのかを調べてきました。

今回の航海の目的は?

2025年10月18日から10月29日まで、IODP3 Exp. 502Eという研究航海が行われました。この航海の目的は、2024年に海底の掘削孔に設置した温度センサの回収とデータ取得、そして掘削孔への温度センサの再設置です。

なぜ温度を測るの?

海の底の地面(地層)は、プレートの動きなどで圧力がかかり、割れ目ができます。これらの割れ目には水が流れ込みますが、流体と地震活動の関連についてはこれまでの研究でも示されてきました。一般的に、地層の浅い方を通る水は冷たく、深い方から上昇してくる水はより高温になるという特徴があります。つまりいろいろな深さで温度を測ることで、水の流れや深さ方向の分布を知ることができるわけです。この水の流れが地震活動とどう関係しているのかを探るというのが、温度を測る目的です。

今回の調査地では、北米プレートの下に太平洋プレートが沈み込む構造をしています。プレートは常に動いているため、プレート境界では摩擦の力によって岩盤にひずみが発生します。ひずみは長い時間をかけて蓄積されますが、限界を超えると岩盤が破壊され急激にずれて、蓄積されたエネルギーが解放されます。これが地震発生のメカニズムです。東北地方太平洋沖地震のような大きな地震が起きたあと、次の地震までプレートの間ではまたひずみが発生し、エネルギーがたまっていきます。その間、地下でどのように水が流れているのかを調べます。

宮城沖のプレートの様子。(未来館が生成AIで作成した画像を加工)

水深約7,000 m、さらに海底から約1,000 mという地下深くまで温度センサを設置し、長い時間をかけて温度の変化を測ることで水の流れをとらえます。今回の航海では、2024年の航海で既に二つの掘削孔に設置された温度計から、約1年分のデータを取得することができました。

温度センサが海底に設置されているイメージ図。割れ目の中を水が流れていきます。

次回は、温度センサってどんなもの? どうやって温度センサを回収・再設置したの? という作業の様子をご紹介します!



Author
執筆: 丸山 遥香(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
【担当業務】
アクティビティの企画全般に関わり、来館者へ展示解説や情報発信、対話活動を行う。ノーベル物理学賞イベントの担当、地球深部探査船「ちきゅう」の乗船サイエンスコミュニケーターとしての活動を行った。

【プロフィル】
なんとなく進んだ大学の物理学科で物理の面白さに目覚め、原子物理学を専門に博士号(工学)を取得。その後ポスドク研究員として量子センサの研究に従事。科学の楽しさを多くの人に広めたい、科学にまつわる意思決定の手助けをしたいと思い、未来館へ。科学や技術との付き合い方を一緒に考えたいです。

【分野・キーワード】
物理学、原子物理学、量子