
経営環境に恵まれ日米の銀行・証券各社が好調だ。その中でもダントツなのがJP Morgan Chase & Co.だ。時価総額も国際金融界で初めて1兆ドル(150兆円)に達し得る勢い。覇者の立ち位置をどう獲得し得たのか。大きな要因は3つある。
第一は弛まぬ拡大戦略だ。現JP Morgan Chaseに息づく主要なDNAは実はChemical銀行だ。1824年設立以来、数々の買収も通じて中堅銀行に成長していたChemical は、80年代後半以降、名経営者Walter Shipleyのもと、その拡大戦略の勢いを増して行く。
86年にテキサスの名門Texas Commerceを、91年にはライバルの Manufacturers Hanoverを、96年にはかつてDavid Rockefellerが率いた Chase Manhattan を買収、更に2000年には 英国ロスチャイルド出資がルーツの名門Morgan Guarantee銀行と統合、今日のJP Morgan Chaseになる。
第二はブランド戦略だ。Chase買収時、Chemicalはあっさり自身の名称を捨てChaseを採用する。そして4年後のMorgan統合時には名跡JP Morganの名称も採用、新名称をJP Morgan Chase銀行とした。
金融史に燦然と輝く二大ブランドをそっくり活かす戦法を採った。太陽神戸三井の名称を捨てた「さくら銀行」が住友との合併後、新名称を「三井住友銀行」と先祖返りした事実に似る。
「過去を捨て新文化を創る」と勇ましく「みずほ銀行」と名乗ったが、Chemical戦略では第一富士興業銀行だったかも知れない。Chemicalは自身の名を捨て、強い明日を得た。
第三は名経営者の登用だ。Shipleyの直弟子・William Harrisonが2000年、JP Morgan Chaseの初代CEOに就任するが、04年 Bank One(First Chicago銀行が母体)を買収するとHarrisonは買収された小銀行のCEO・Jamie Dimonを高く評価、自身はたった1年強で早々に引退、CEO職を05年12月31日にDimonに譲ってしまう。
「金融界最強のCEO」と呼ばれるDimonが、その後20年間に亘りJP Morgan Chaseの経営をリードし、今日の金融界覇者の立ち位置を獲得している。
世界最強の銀行が偶然生まれた訳ではない。揺るがぬ戦略と卓越した経営者達が、同時にタッグを組まないと名門は生まれない。人材を磨き戦略を練って、わが国からも世界に冠たる金融機関が立ち上がって来ることを楽しみにしている。
ところでDimonも生まれながらの才人ではない。機会の国アメリカにいて、数奇な運命にさまざま鍛えられて出て来た人材だ。その疾風怒濤の興味深い経歴を次回、ご紹介したい。