Snowflakeは12月9日、企業内のデータに対して自然言語で質問できる企業向けインテリジェンスエージェント「Snowflake Intelligence」を国内で本格展開を開始したことを発表した。
Snowflake IntelligenceはAIエージェントを構築・運用するためのフレームワーク。構造化テーブルや非構造化文書から、ゼロコピー経由でのSalesforce Data 360といったサードパーティーのアプリのデータまで、さまざまなデータを統合し、質問に対するディープリサーチを行って解決策を提示する。自然言語による質問でデータの検索・分析やチャート作成まで行える。
Snowflake 社長執行役員 浮田竜路氏は「現在、1週間当たり3万件以上の質問が行われており、30分かかっていた質問が3分で回答できるようになった」と述べ、同社でもSnowflake Intelligenceを活用していることを紹介した。
Snowflake Intelligenceの強みは、AIデータクラウド「Snowflake」で稼働するためセキュリティとガバナンスが確保されていること、Snowflake内にあるLLMにデータを持って行けること、Snowflakeのきめ細かなアクセス権限を活用できることなどがあるという。
Snowflake Intelligenceのパブリックプレビュー版を活用している企業として、コクヨ、富士フイルム、ジンズホールディングスが自社の検証結果を紹介した。
コクヨ:非エンジニアでもAIエージェントの開発が可能に
今回、コクヨ ビジネスサプライ事業本部 ビジネスサプライ事業戦略室 データドリブン推進ユニット 夛名賀寛氏は、ビジネスサプライ流通事業における取り組みを紹介した。同事業はコクヨグループのデジタル活用、データ活用を推進している。
コクヨではSnowflakeにデータを蓄積し、BIツールやアプリを介して、データを活用してもらっている。そして、全員参加型のデータ活促進を目指し、ユーザーを「データリーダー」「コアユーザー」「データユーザー」に分けているが、提供されたレポートやデータを利用する「データユーザー」のデータ活用が課題になっていたという。
「データユーザーはデータ活用に対するマインドがあまり高くない一方、スキル習得のハードルが高すぎる。また、BIツールを全社員に配布するとコスト効果が低い」(夛名賀氏)
こうした背景から、コクヨではSnowflake Intelligenceを用いてデータ活用の壁を乗り越えることにした。
夛名賀氏は、Snowflake Intelligenceを導入することにした決め手について、「技術習得とライセンスが不要であり、かつ、データユーザーに利用させやすいと感じた」と述べた。
今年9月から導入を検討し、10月・11月と2カ月かけて、カウネットのデータを分析するエージェントの開発が行われた。ちなみに、開発を行ったのは非エンジニア以外の人だという。
エージェントを活用して、以下の検証が行われた。
- ビジネス担当者が自身の担当商品に関して、進捗確認や施策の効果検証を行う
- ビジネス担当者がサプライヤー様との商談前に、実績の概要を確認する
- 何らかのイベント前後の売上の変化や推移を確認する
夛名賀氏は、Snowflake Intelligenceの使い勝手について、「エージェントのモニタリングをフル活用しているが使いやすい。フィードバックを吸い上げて改善に役立てている」と語った。
Snowflake Intelligenceの導入効果として、夛名賀氏は「データ活用のエントリーポイントになる」「ドメイン知識を反映しやすい」「経営層の反応も上々」を挙げた。
今後は、回答品質とUXの向上に取り組むという。回答品質については、データモデルで表現できないドメイン知識を、エージェントやセマンティックビューに組み込む。また、売上分析エージェントを拡充して、サプライチェーン全般に関わるエージェントを作ることも構想しているという。
富士フイルム:UI層開発の省力化でAIエージェントPoCを高速化
富士フイルムは、「AI活用のProof of Value (価値実証)の早期実現」「自然言語の活用によるAIの民主化」「セキュリティレベル維持の効率化」を検証するために、Snowflake Intelligenceを検証することにしたという。
富士フイルム ICT戦略部 三ツ井哲也氏は、「当社はDXビジョンの実現に向けてデータを活用しているが、今まで以上にAIやデータ基盤の活用が重要になってきており、データセキュリティのニーズも高まっている」と語った。
具体的には、生産工程の複雑化、モニタリング項目の増加、品質悪化原因の多様化といった生産領域において、品質管理AIエージェントを試作し、応答の検証が行われた。三ツ井氏によると、Snowflake Intelligenceの活用によりUIの開発にかかる手間が省け、PoCの高速化が図れ、コンテキストエンジニアリングに注力できたという。定型レポートからの分析も多いので、カスタムUIも開発しているとのことだ。
また、事業運営領域では「売上データをAIが解析、レポート作成、課題の抽出を支援」、営業支援領域では「ターゲティング・施策立案を支援」といった検証も行われており、「非構造化データの検証が加速している」と三ツ井氏は語っていた。
そのほか、Cortex Searchを参照するAgentを作成してSnowflake Intelligenceから利用することで、Snowflakeの仕様の調査・問い合わせにかかる工数を大幅に削減したそうだ。
ジンズホールディングス:売上分析をAIによる対話型で実現
メガネブランド「JINS」を展開するジンズホールディングスでは、8種のスプレッドシートで国内約550店舗を管理しており、売上減少の原因や年代別の変化など、すぐに分析結果が得られないという課題があった。
こうした課題に対し、「売上データの収集、分析、示唆出しの作業をAIと会話するような形で代替できないかという構想があった」と、ジンズホールディングス AI推進室 室長 川嶋三香子氏は説明した。
当初の計画は、今年6月よりステップ1として「定型レポート開発とPoC」を、12月から「チャットボット開発とPoC」を開始するという予定だった。しかし、Snowflake Intelligenceを導入することで、非エンジニアが定型レポートで整理した要件に基づいて1・2週間でAIエージェントを開発できたため、開発期間とコストを大幅に削減できたという。
「Snowflake Intelligenceはコーディングがいらない 自然言語で指示を出して保存しておく形なのでエンジニアでなくてもできる。やりたかったことが前倒しできたのは大きな収穫」(川嶋氏)
売上実績の実データを使って営業部(店舗運営を統括)でPoCを実施中で、評価は概ねポジティブであり、今後の展開に向け調整中とのことだ。開発したAIエージェントはチャットのような形でやりとりできるため、データアナリティクスのスキルがなくても使え、担当役員も使っているそうだ。開発が容易なため、改善の要望に迅速に対応できるというメリットもある。
川嶋氏は、開発における工夫として「詳細なInstruction」「分析のための近道」「思考回路の短縮」を挙げた。詳細なInstructionの実現に向けては、同社独自の指標を定義し、いわば「分析の秘伝のたれ」を教え込んでいるという。ほか2つはスピードアップにまつわる取り組みで、「仮想テーブルを複数準備する」「、内容に合ったSQLを事前に定義する」などしているとのことだ。
今後は、国内営業部内で本格展開を図るとともに、組織としてのAI・データ活用基礎力アップに取り組むという。






