NTTドコモビジネスとダッソー・システムズは12月4日、NTTのオールフォトニクスネットワーク(APN)の「IOWN APN」、およびダッソー・システムズが提供する3DEXPERIENCEプラットフォームを活用し、製品開発におけるリアルタイムな3D CADの遠隔共同作業に成功したことを発表した。

発表に際し両社は記者説明会を開催。NTTドコモビジネス IOWN推進室の羽石正則氏、ダッソー・システムズ Mgt Director ENOVIAインダストリープロセスサクセス APACのステファニー・ミュレ氏らが登壇し、3D CADのリアルタイム遠隔共同作業を行うデモンストレーションなどを通じて、IOWN APNによる設計作業の効率化効果をアピールした。

  • 3DEXPERIENCEプラットフォームを活用した遠隔リアルタイム共同作業

    3DEXPERIENCEプラットフォームを活用した遠隔リアルタイム共同作業が可能になった

  • NTTドコモビジネス IOWN推進室の羽石正則氏

    説明会に登壇したNTTドコモビジネス IOWN推進室の羽石正則氏

リアルタイム共有が難しかった3D設計に革新

近年のものづくり業界では、3D CADを用いた3次元設計が一般的になっている。設計をバーチャル上で行うこの設計手法では、数GB~数十GBにおよぶ大容量データを取り扱うことが不可欠である一方で、3次元設計データは圧縮が難しく、3D CADで設計された大容量3Dモデルを遠隔地との間でリアルタイムに共有しながら共同作業を行うことは、従来のネットワークでは困難だとされていた。そのため従来は設計レビューを行う際、関係者が対面で一堂に会する必要が生じており、その移動コストや時間が課題となっている。

このような背景を踏まえ、デジタルツイン構想として「4Dデジタル基盤」を掲げるNTTドコモビジネスと「3D UNIV+RSES」を掲げるダッソー・システムズの両社は、そうした未来像を共通項として連携を開始。3D CADを用いた設計作業を遠隔地からでもリアルタイムで行えるネットワーク環境の構築に着手した。今回は、NTTが提唱するAPNの一環で、電気信号ではなく光信号を用いて超低遅延・大容量・低消費電力の通信を行うIOWN APNを活用し、タイムラグの無い3DモデルやPLMソリューションを用いた遠隔共同作業の実現を目指したといい、その3Dデータ基盤としてダッソー・システムズの3DEXPERIENCEプラットフォームを用いたとする。

  • 両社の理想的なパートナーシップ

    両社によるデジタルツイン構築を軸とした理想的なパートナーシップの概要(提供:NTTドコモビジネス/ダッソー・システムズ)

今般行われた実証試験では、東京都武蔵野市に位置するNTTドコモビジネスの「東京第11データセンタ」と、千代田区大手町の「OPEN HUB Park」をIOWN APNで接続し、3DEXPERIENCEプラットフォームを用いた3D CADの遠隔共同編集作業を実施。東京第11データセンタには、3DEXPERIENCEプラットフォームのデスクトップアプリケーションと、3D CADデータを格納する同プラットフォームのサーバを設置した一方、OPEN HUB Parkには作業者のPCとして3DEXPERIENCEプラットフォームのデスクトップアプリケーションが設置され、数千から数万個におよぶ大容量・高精細かつ複数種類の3D CADデータやPLMデータをサーバよりダウンロードし、共同編集の検証を行ったという。

  • 実証実験の概要

    今回の実証実験の概要(提供:NTTドコモビジネス/ダッソー・システムズ)

その結果、この2拠点間通信による共同作業では、同一ビル内でサーバと作業者のPCを接続した場合と比較してもほぼ同程度のパフォーマンスで、共同での作業が行えることが確認されたとのこと。また3D CADにて編集可能な環境が同期される時間は、従来のインターネット経由と比べて速度が最大約500%向上し、まるで同じ空間で作業しているかのようなスムーズなリアルタイム共同作業が可能だったとした。なおNTTドコモビジネス イノベーションセンター IOWN推進室の羽石正則氏によれば、この通信速度は距離によって変わるものの「東京と台湾を繋いだ場合でも、通信の遅延は15ミリ秒程度で収まるため、拠点間距離がどこまで伸びたところで、違和感なく作業ができると考えられる」とした。

  • デモンストレーションの様子

    デモンストレーションの様子。精細な3D CADを用いて違和感なく共同作業を行える様子が示された

製造業から産業界全体へイノベーション拡大を目指す

今回の連携にあたり、ダッソー・システムズのステファニー・ミュレ氏は、NTTドコモビジネスとの協業によって期待されるシナジーとして“共通ターゲット顧客への共同提案”、“継続的な協働イノベーション”、“エコシステムの拡大”を挙げる。特に3点目については、NTTがインテル・ソニーと共同で立ち上げた「IOWNグローバルフォーラム」にダッソー・システムズも正式に加入し、4Dデジタル基盤の多分野展開に向けた協業体制を強化するという。

  • 協業での取り組みの概要

    両社による協業での取り組みの概要(提供:NTTドコモビジネス/ダッソー・システムズ)

  • ダッソー・システムズのステファニー・ミュレ氏

    ダッソー・システムズのステファニー・ミュレ氏

また両社は、製造業をターゲットに開始された今回の成果を、今後はIOWN構想において実現するさまざまなユースケースへの展開を視野に入れ、ライフサイエンス領域や街づくりなど産業全体のイノベーションを促進する取り組みを共に加速していくとのこと。さらに将来的には、NTTドコモビジネスが構築する「AI-Centric ICTプラットフォーム」を活用することで、それぞれの知識・ノウハウの基盤を共有すると共に、データセンタ・IoT・GPUなどを組み合わせ、あらゆる産業のデジタルツインを支えるプラットフォームの実現を目指すとしている。