ServiceNow Japanは10月22日・23日の2日間、東京ビッグサイトにて年次イベント「World Forum Tokyo 2025」を開催した。“AIエージェントを、働くあなたのパートナーに”をテーマに掲げた今回のイベントには、2日合計で1万1000人以上が来場。初日の基調講演には同社代表取締役社長の鈴木正敏氏が登壇し、9月にリリースされた最新版のAIプラットフォーム「Zurich」をはじめとする多様なソリューション群の最新状況や、国内各社の活用事例などを紹介した。

  • ServiceNow Japanの鈴木正敏社長

    ServiceNow Japanの鈴木正敏代表取締役社長

AI活用に新たな課題 - 企業が見直すべき本質とは

現代社会において、AIはもはや不可欠な存在だ。その技術進化は留まるところを知らず、特に生成AIの登場は、さまざまな企業に大規模な変革をもたらしている。しかし鈴木社長は、そうした社会転換の中で各企業が直面しつつある課題を取り上げた。それは、「AI技術はこれまでにないスピードで進化しているものの、それを利用する側が進化の速度に追いつけていない」という点だ。

AI活用ツールが乱立する昨今、各企業では平均でもおよそ360もの業務アプリケーションを並行して導入しているという。その中には、トライアルや検証が長く続き本格導入に至っていないものや、AIの効果が限定的なものにとどまっている例が多く見られるといい、またアプリケーション同士が相互に連携しないまま個別最適化を進めた結果、かえって複雑な業務環境が構築されているケースも少なくないという。

そして、そうした困難にさらなる追い打ちをかける可能性があるのが、“AIエージェント”の登場。単一のアプリケーションに対応した個別のAIエージェントは一定の効果を発揮するものの、企業全体を見渡せば大量のチャットボットやAIエージェントが乱立し、さらなる混乱につながりうる。鈴木社長はこうした状況について「複雑さを生み出してしまうだけでなく、それを未来の悪しき標準としてしまう可能性がある」と懸念を語るとともに、「今こそ、連携しないアプリケーションや高止まりするインテグレーションコストなどの悪循環を断ち切り、全体構造を根本から見直すべきタイミングだ」と話した。

効果最大化に必要なのは「一貫したプラットフォーム」

実際に、未来を見据えた抜本的な変革を進めている企業も出始めているといい、特にAI成熟度が高い企業は数歩先を進んでいるとのこと。そうした企業の違いを生む条件として鈴木社長は、以下5点を挙げる。

AI成熟度が高い企業に共通する5つの特徴

  1. トップダウンでの明確なAIビジョンを有していること
  2. AI活用に最適な整備されたデータ環境に投資していること
  3. プラットフォーム全体を優先した戦略が構築されていること
  4. スピード感とリスク・倫理に対するガードレールを両立していること
  5. AI活用効果の評価基準が“もたらされた実際の効果”であること

そしてこれらの指針の下、全社レベルに効果を最大化することがAI活用の鍵となると強調。AI・データ・ワークフローを単一かつオープンなプラットフォームに統合することで、クラウドネイティブかつデバイスに依存せず、シームレスにAIを活用できるようにする。それこそが企業規模でのスケーラビリティを備えたプラットフォームの果たすべき役割だとする鈴木社長は、「私たちServiceNowの製品は、あらゆるものをつなぎ、そして統合することを前提にした、“つぎはぎ”ではなくゼロから一貫して創り上げられたAIプラットフォームだ」と語る。

  • AI活用の鍵になるAI・データ・ワークフロー

    AI活用の鍵になるのはAI・データ・ワークフローの統合

こうした方針を象徴する具体的なソリューションのひとつとして紹介されたのが、1月に発表された「AIエージェントオーケストレーター」だ。これは、ServiceNowがIT・セキュリティ・CRM・人事・財務など幅広い領域向けに提供する1000以上もの事前構築済みAIエージェントを、最適な形で使いこなすための“指揮官”。その存在がシステムのサイロ化を防ぎ、適切なタイミングで適切なAIエージェントを活用できるとする。

また、数多くのAIエージェントを一元的に管理・保護する「AIコントロールタワー」では、ServiceNowだけでなく他社製のAIともシームレスな連携を可能にし、ガバナンスの向上に貢献。AIエージェント間の文脈の共有を実現する「AIエージェントファブリック」など、多角的にAIエージェントの効果拡大を支援するソリューションが多数紹介された。

  • キャプション

    ServiceNow AIプラットフォームの概要図

社内外で発揮されるServicenowの効果とは

スケーラビリティを有する統合AIプラットフォームの提供により、さまざまな企業の業務変革を支援するServiceNowだが、鈴木社長によれば、同社では「カスタマーゼロ・クライアントゼロ」の哲学を抱げているとのこと。顧客への提供より先に、まずは自社がゼロ番目のユーザーとして徹底的に製品を使い込んでいるといい、これにより社内のITサポートの86%が自動化されているという。そして、社内で培われたノウハウや経験とともに顧客へとサービスを展開することで、より効果的な支援が可能に。今回の講演では、ライフサイエンス企業における業務を横断したServiceNowソリューションの活用デモンストレーションが披露されるとともに、ユーザー企業であるアフラック生命保険・NEC・JTBの3社によるゲスト講演も行われた。

  • ServiceNow自身が自社サービスを徹底的に使い込む“カスタマーゼロ”

    ServiceNow自身が自社サービスを徹底的に使い込むことで、ITサポートの86%を自動化し課題解決の速度も向上させた

アフラックは、AIエージェントの活用により、調達・購買や部署間問い合わせの自動化を実現したとのこと。NECではIT・セキュリティ分野から人事・法務にわたる横断的なAI業務改革に取り組み、データドリブンな形でのプラットフォームの整備に成功したとする。またJTBでは、稟議プロセスの標準化や顧客サポートサイトにおけるヘルプデスクの業務改善による効果について説明。いずれの企業も、単一領域でなくさまざまな角度からAIエージェントなどのツールを適用することで、短期間で業務効率化を実現し、従業員の時間を生産性の高い作業に費やすことに成功していた。

人手不足の中でも“働きたい”と思えるように

鈴木社長は講演の締めくくりにあたり、来場者へひとつの問いを投げかけた。

「将来も、果たして今の状態を続けててよいのでしょうか?」

デジタル化が急速に進み、世の中では大規模な業務変革が進んでく中で、企業の競争力を維持するためには「先んじて変化をしていかなければ間に合わなくなる」と語る鈴木社長。デジタルネイティブな世代が占める割合が増えていく一方で、労働人口は減少し続ける未来では、人間の労働力にAIなどの“デジタル労働力”を加えることが鍵となり、さらに人手不足が深刻化すればデジタル労働力の活用は「もはや必然」だとする。

そして、その能力を最大限に発揮させるために必要となるのが、全社スケールでのAI活用。AIエージェントによって人間の力を解放させるため、統合されたプラットフォームの重要性を強調した。

「やる気がある従業員から、『今後この会社で何ができるのか、どのような働き方ができるのか』と問われたとき、自信をもって答えられる環境を作ることが、本当に必要になる」と語る鈴木社長。「3~5年後の未来を見据えて、今すぐに取り組むべき」とするAI業務変革に取り組む企業に対して、ServiceNowが“未来を支えるプラットフォーム”として伴走する姿勢を改めて示した。

  • ServiceNowが見据える未来への取り組み

    ServiceNowが見据える未来のための取り組み

  • 講演を締めくくる鈴木社長

    ServiceNowが見据える方向性を語った鈴木社長(出所:)