カクシン社長CEO・田尻望が語る「真の付加価値を生むためには何が必要か?」

付加価値をいかに上げるか─。少子高齢化社会の日本において避けては通れないテーマです。これに対し、様々な解決策が提示されていますが、私が強調することは「最小の資本と人の命の時間で、最大の付加価値を生み出す」です。これは2017年に創業した当社の独自のメソッドです。

 多くの人は新商品が誕生すると、その特長を取引先に話すと思います。「これまでの1.5倍の機能」「このサービスはここがすごいんです」……。実はここには大きな罠があります。

 付加価値とは、あくまで「お客様が決める」という点です。本当の価値はお客様が商品を使い、効果を実感したときにこそあります。つまり、自らが付加価値らしき性能を一方的に語っても、それがお客様にとって「これは役に立つ!」と思われなければ、真の価値にはならないのです。

 では、真の付加価値を生むためには何が必要か。それは徹底的にお客様のビジネスモデルを理解し、現場を知り、どんな課題に直面しているか、なぜそれが辛いのかを把握する以外にありません。それが分かって初めて、我々の商品の価値を語ることができるのです。

 肝は〝感動〟です。人は高い安いを感じるとき、無意識に価値と価格を比較します。一見高く見える商品であっても、価値があると納得すれば、むしろ喜んでお金を出すもの。これは単なる機能だけではなく価値を実感させるストーリーが価格の正当性を裏付けることになります。

 分かりやすい事例は飲食店です。2万円の高級ステーキを高いと思うかどうか。ステーキを出されるだけでなく、牛を育てる過程や料理へのこだわり、シェフの技術といったストーリー、そしてそのストーリーが2人の記念日にどんな意味をつけてくれるのか、が語られたらどう思うでしょう。「2万円もするのか」という感覚から「この時間、この料理を2万円で食べられるのか」という未来まで残る感動へと変わります。

 これは飲食の事例ですが、我々の仕事でも、単に管理職研修が3000万円です、と言うだけでは、単なる高い研修になる。しかしその研修を通し、1人当たり付加価値生産性が1000万円向上し、100人で年間10億円以上の経済効果がある、それが来年も続くとなれば、投資した3000万円がむしろ安いとなります。付加価値とは価格ではなく、購入後の成果(購入前との差分)なのです。

 私はこれを、このほど40代の社長が誕生し話題になっているキーエンスでコンサルティングエンジニアとして大手システム会社のシステム構築支援をはじめ、年30社に及ぶサポートを手がけた経験から学びました。同時に、仕事に求められることは机上の空論ではなく、価値を実現することだと学びました。

 私は2度目の独立の前に大阪茶屋町の居酒屋の業績改善を実現しました。そこで私のしたことは店舗改善策を3つに絞ること。「呼び込み」「トイレ掃除」「お出迎えとお見送り」。前向きに行えば成果が出る策ですが、どれも誰もがやりたがらない仕事です。しかし、この3つを私が徹底して行うことで、その姿を見ていた店長やスタッフが同じことをやり始めてくれました。そしてたった1カ月でお店全体が変わったのです。店舗の売り上げと離職率は、あっという間に改善しました。

 感動こそ価値の源泉─。感動から価値が生まれ、人が動き、より高い価値を生み出していく。これは業種業界を問わず、どんな企業でも実現できることです。

中塚庸仁・NYC社長の 「人生の転機」【ベンチャー投資から中小企業の承継へ】