Sansanは11月21日、AIソリューションに関する発表会を都内で開催した。発表会では、同社 代表取締役社長/CEO/CPOの寺田親弘氏らが説明を行った。今回、発表されたソリューションは「Sansan Zoom連携」「Sansan Data Intelligence」「Sansan AIエージェント」「Sansan MCPサーバ」となる。
日本のAI市場と企業の課題
日本ではAIシステム市場は2029年までに4兆円に拡大することが見込まれている。現在、企業では複数の生成AIやツール、設備、人材育成などに投資を行っているが、どれだけの期待値と比較して思い通りの効果を得ているのかは未知数だ。今年前半に企業の経営判断や承認業務などがAIに置き換わると強調されていたが、当初の期待値からすれば大きなギャップが存在しているのも確か。実際にガートナーも生成AIのハイプサイクルで「幻滅期」に入ったと指摘している。
こうした状況を鑑みて、寺田氏は「AIを考える知能と見たときに最も重要な要素が不足していた。それはデータだ。各企業が持つコンテキスト(文脈)や営業進捗、プロダクトの開発状況、顧客のフィードバックなど、AIから自社のコンテキストを考慮した回答を得るためには、企業独自のプライベートデータが必要。これをAIが参照できない限り、パブリックデータをもとにした回答しか返ってこない。ただ、なんでもかんでも手元にあるデータをAIに入れるのではなく、最新かつ正確にAIが読み解けるように構造化されたデータが必要となる」と説明した。
続けて、同氏は「AIに投資するということは、大半の企業にとって自社のデータに向き合うことだと考えている。そのためAI時代において、まず投資するべきものは企業独自のプライベートデータを正確に構造化し、その作業を継続していくことだ」と強調。同社は創業時からアナログな書類をデジタルに変換することに取り組んでおり、結果として企業のAI活動を最大化するための独自のデータベースが構築されたという。
寺田氏は「これまで当社は事業領域を“働き方を変えるDXサービス”としていたが、今後は“働き方を変えるAX(AIトランスフォーメーション)サービス”として事業領域を再定義する。当社が提供する働き方を変えるAXサービスで企業の生産性を向上するとともに、ビジネスを支えるデータインフラとして、働き方を変える土台になっていくことがAI時代における当社自身の挑戦だ」と力を込める。
Sansanが取り組むAX時代の3つの施策
その挑戦の第一歩として、同社では「顧客情報の取得」「顧客情報の管理・メンテナンス」「AIの活用」の3つの施策に取り組んでいる。
顧客情報の取得では「Sansan Zoom連携」を発表。これは、オンライン会議で顧客情報を蓄積する機能となり、2026年春ごろの提供開始を予定している。
例えば、参加者(顧客)がZoomのURLにアクセスすると、入室の際に会社名や役職、氏名、連絡先など名刺代わりの情報を入力してもらい、入力された情報はSansanに連携される。
また、入力した情報とオンライン会議の録画データを紐づけてプロフィールに保存することも可能とし、録画データから相手の顔も参照できるため、その後のフォローにも役立つという。
顧客情報管理を強化する「Sansan Data Intelligence」
次に、Sansan 執行役員/Sansan事業部 事業部長の小川泰正氏が登壇し、顧客情報の管理・メンテンナンスに関するプロダクトを紹介した。
まず、顧客情報の管理・メンテンナンスを行うSansan Data Intelligenceだ。同サービスは、同社が創業から培ってきたデータ化・名寄せ技術をもとに開発した、データクオリティマネジメントサービスとなり、12月下旬の提供開始を予定。
小川氏は、同サービスについて「高性能なAIを導入しても自社のデータベースとつながっていなければ、元となるデータが誤っていると正しい判断、予測ができない。AIを正しく活用するためにはデータの改善が必要不可欠になり、そうした課題を解決するもの」と述べている。
同サービスに搭載された800万件超の企業・事業所データベースをもとに、ユーザー企業内の取引先データの重複や更新漏れを補正し、AI活用や戦略立案に必要となる高品質なデータ基盤の実現を支援するとのこと。
基幹システムやCRM(顧客関係管理)・SFA(営業支援システム)などで管理している取引先データを連携すると、データに含まれる企業や事業所を特定し、データベースの情報をもとに重複や表記ゆれ、欠損、古い情報などを最新かつ正しい情報に更新・補完する。また、取引先を新たに登録する際に正しい情報を提案するほか、情報のアップデートが必要な際は通知を行う。
利用の流れとしては、(1)社内システムと連携、(2)レコードで識別を行い、データベースに照合して重複・表記ゆれを検出・整理、(3)電話番号や住所などの欠損、誤りを補完して最新化・正規化、(4)フラグで業種などの特徴を付与、(5)正規化、最新化、リッチ化されたデータを取引先マスターとして整備し社内システムに反映する。
データをSansan Data Intelligenceに取り込むと、取引先名や住所、電話番号などの情報から企業や事業所が特定され、独自の識別コード「Sansan Organization Code(SOC)」が付与される。これにより、データを企業・事業所単位で管理できるとともに、グループ系列も確認できる。
さらに、従業員規模や業種、財務情報などのリッチ化情報も付与されることから、これまで人手に頼っていたデータメンテナンスの手間を削減できる同時に、常に高品質な取引先データを維持し、AI活用や事業分析の精度を高めることを可能としている。
加えて、システムページにアクセスすることで、営業活動やマーケティング施策などに活用することも可能。例えば、既存のシステムでは入力しきれない資本金やグループ企業などの項目を確認して取引先の情報を深掘りできることに加え、2000件超の独自フラグなど、多様な属性情報を組み合わせて、データベース全体から企業を絞り込むこともできるという。
自社の営業活動において注力している「営業戦略」「採用活動」などの条件に合致する企業を抽出し、アプローチ先の候補をリストアップすることも可能としている。なお、Sansanの契約がなくても単体で利用できる。小川氏は「マスターデータを構築することで全社横断の取り組みが可能になり、ターゲットリストの整備など、さまざまな業務で活用の幅が広がる。マスターデータが進化し、AIの学習に利用できれば企業のAXを加速することが可能だ」と強調していた。
営業DXを進化させるAIエージェントとMCPサーバ
そして、再びマイクは寺田氏に戻り、AIへの活用として発表したサービスのSansan AIエージェントとSansan MCPサーバを解説した。
Sansan AIエージェントは、Sansanや基幹システム、SFAなどのデータを統合し、AIとの対話形式で活用できるようにすることで、商談準備や顧客理解などの営業業務をAIがサポートするソリューションとなり、11月21日に提供を開始している。
Sansanの専門チームがユーザー企業のデータ構造や課題をヒアリングし、社内に点在するビジネスデータを統合して最適なデータ基盤を構築。データ基盤とSansan AIエージェントを連携させることで、ユーザーはチャット形式でAIに問いかけ、必要な情報や示唆を得ることができる。
企業独自のデータをAIが参照した上で解答を行うため、過去の成功事例をふまえた提案内容の作成や、商談相手の関心領域に基づくアプローチ方法の提案など、実践的なAI活用を行うことが可能。これまでの商談内容や顧客とのやりとりを自動で整理し、次回の商談に向けたアドバイスを得ることも可能としている。
寺田氏は「当社自身がAIツールそのものと、お客さまの社内環境のインテグレーションをサービスとして提供する。つまり、企業独自の環境とニーズにあわせて最適なユースケースをイチから作り上げることで、専門知識や技術がなくてもAIを活用できる環境が整えられる。例えば商談準備などに要していた時間を効率化し、営業活動を最大化できる」と説く。
一方、Sansan MCPサーバは、Microsoft CopilotやClaudeなど生成AIツールとSansanを接続する仕組みとなり、ユーザーは、普段利用している生成AIツール上で、Sansanに蓄積されたデータを検索・活用することが可能とし、11月10日からトライアル提供を開始。
例えば、生成AIツール上で「A社との人脈を探して」と指示するだけで、Sansan内のデータから接点履歴や名刺情報などを参照してやりとりすることができる。
オープンデータだけでは得られない自社独自の名刺情報や活動情報を活用できるようにすることで、営業活動のほか、全社的なデータ活用の高度化を支援するとのことだ。直近では住友商事が同サービスを利用し、生成AIでSansanのデータ活用をスタートしているという。
最後に寺田氏は「当社の働き方のAXサービスを活用してもらうことで、企業におけるAXの挑戦を後押しする存在になっていければと考えている」と述べ、プレゼンテーションを締めくくった。







