東京センチュリー社長・藤原弘治の「新事業開拓は、若者、変わり者、よそ者のYMOプロジェクトで!」

社会課題を解決する 永遠のベンチャーとして

『ベンチャーとして社会のイノベーションの起点になりたい』─。藤原弘治氏は今年4月の東京センチュリー社長就任以来、同社グループの社員、関係者にこう呼びかけ、自分たちの使命と経営の方向性を指し示す。

「はい、就任直後に、地球規模の社会課題を解決する永遠のベンチャー企業でありたいという話をしました。さまざまな社会問題が日本にもあるし、世界中にも多々あります。特に日本は課題先進国として、人口減少、少子・高齢化、エネルギー問題、地方創生、さまざまな問題を抱えています。海外を見渡しても、地政学リスクがあり、それが地経学リスクにシフトしたり、グローバリゼーションへの反発、さらには気候変動や脱炭素問題など、こういった構造的な問題がわれわれのビジネスを覆ってきています」

 藤原氏は内外の社会問題、構造課題をこう表現し、それらの諸課題に対して、「われわれはある意味、課題解決の結節点になりたいと」と抱負を語る。

 内外の社会課題を解決する永遠のベンチャー企業でありたい─という藤原氏の使命感だ。

「自ら一人で解決できるわけではないので、やはりしっかりしたパートナーと一緒に諸問題の解決に向き合っていきたいと思っています」

 そのパートナーに関しては、例えば、株主でもある伊藤忠商事、NTTグループをはじめ、みずほフィナンシャルグループ(FG)、さらには富士通、IHIといった企業が並ぶ。こうしたパートナーと提携して、新事業領域への投資を進め、事業を創出していくという同社の経営方針である。

 東京センチュリーは、金融危機のリーマン・ショック(2008)後の2009年、伊藤忠商事や旧第一勧業銀行(現みずほFG)などを主要株主とするセンチュリー・リーシング・システムと同行系の東京リースが合併して誕生した会社。

 旧東京リースは1964年(昭和39年)に設立され、リース業界の草分けとされるが、創業から半世紀以上が経った今、東京センチュリーとして、祖業のリース業に加えて、諸サービスを提供し、自ら事業を手がける会社に成長・発展。

「リースをやる会社から、リースもやる会社に変わってきたと。リースの事業は2009年時では資産残高の約8割で、それ以外は2割だったのが、今は逆転してリースが2割で、それ以外が8割位になっています」

 藤原氏はこう語り、次のように続ける。

「われわれはリース以外の金融サービスや事業投資も手がけていくと。ある意味、コングロマリットカンパニーになると。そういう意味では、コングロマリットディスカウントを、いかにコングロマリットプレミアムに変えていけるかというのが、われわれのビジネスモデルの中心的課題になります」

  藤原氏はみずほフィナンシャルグループ出身で、みずほ銀行頭取を2017年4月から2022年4月まで務めた。〝3年間の空白〟を経て、今年4月に事業会社の東京センチュリー社長に就任して半年が経つわけだが、銀行とリース(事業会社)の違いについて、次のように述べる。

「社会イノベーションということですが、銀行はどちらかというと社会的なインフラなんですね。われわれは社会的イノベーションの起点になりたい。社会インフラの基盤と、社会イノベーションの起点。そういう意味で銀行とは違う役割を果たしていくということです」

目標達成へ向けて 難題から逃げず

 藤原氏は1961年(昭和36年)6月生まれの64歳。建設・土木関係の仕事をしていた父親の仕事の関係で幼少期は北海道で育ち、父親の転勤で中学2年時に福岡に移住。福岡県立筑紫丘高校から早稲田大学商学部に入学。1985年(昭和60年)に早大を卒業し、第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)に入行。

 高校時代はスポーツ(水球)に熱中し、「1番を目指す」と鍛錬の日々を過ごした。大学時代は、米国に短期留学する費用を稼ぐために、築地市場で約100キロの冷凍マグロをカギ(鉤)に引っ掛けて運ぶ重労働もこなした。

 目標達成には努力を惜しまない姿勢とその熱量は今も変わらない。

 旧第一勧銀時代にはニューヨーク支店に赴任。そこで自分には財務や経理の知識が不足していると痛感し、自費でニューヨーク大学経営大学院の夜学に通い、MBA(経営学修士号)を取得(1993年)。その後、MIT(マサチューセッツ工科大学)でもMBAを取得するなど、頑張り屋で努力家という評判。本人は自らを「負けず嫌いの性格」と分析している。

 ただ、人生は平坦ではない。時に、激しい雨風に身をさらされることもある。

 バブル経済がはじけた後の1990年代後半、旧第一勧銀で総会屋への利益供与事件が発覚。当時、若手として、企画部に在籍していた藤原氏は、監督官庁の財務省への説明に当たる〝MOF担〟となった。また、海外知識が買われ、米FRB(連邦準備制度理事会)に事業説明に出向く副頭取(国際担当)に同行するなど、縁の下の仕事をこなした。

 その後、金融再編が起き、第一勧銀は富士銀行、日本興業銀行と統合し、みずほホールディングスを設立(2000)、さらに2003年にみずほグループの統括会社として、現在のみずほFGが誕生した。

 2017年、藤原氏はみずほ銀行の頭取に就任。金融界を代表する全国銀行協会会長も務めた。

 しかし、コロナ禍の2021年2月以降、みずほ銀行では相次いでシステム障害が発生。再発防止に取り組み、責任を取る形で、2022年4月、頭取を退任した。

 この時の出処進退や人柄もあって、周辺では再起を支援する声が多く、〝3年の猶予〟を経て、東京センチュリーの指名委員会からの指名を受け、今年4月、同社社長に就任というこれまでの経緯である。

シナリオプランニングで 「想定外をつくらない」

 21世紀に入って25年目の今年、内外では混沌とした状況が続く。この現状況を藤原氏はどう捉えているのか?

「トランプ関税もさることながら、何て言うんでしょうかね、資本主義の副作用とも言える格差や分断も生まれて、ロシアのウクライナ侵略、中東情勢の不安定と、世界でさまざまな事が起きている。先行きの予測もなかなかしきれない。こういう世の中にあって、企業経営者としてどうあるべきなのかと、常に自らを問い直している日々です」

 藤原氏は「現在の不安定な時期に一番大事なのは、想定外をつくらないことだと思うんですよ」と次のように続ける。

「これは何かというと、シナリオプランニングが大事だと。将来を正確に予測することは不可能なんですけど、何か起きた時に素早く対応するためには、さまざまなシナリオを想定しておくと。これが一番大事なことで、予想外はさておき、想定外は駄目だと思っています」

 シナリオプランニングということで言えば、想定通りに物事が運ぶストライクケースシナリオだけではなく、ワーストシナリオもあり得る。

「想定の範囲の中でのワーストケースというのは、想定内なんです。ただ、そこにも入っていないような事が起きてしまうと、これは想定外なんです。経営者としては、そこがすごく大事なことだと思うんですね」

 経営の持続性を確保するには、企業そのものが時代の変化に対応していかなくてはならない。

社会課題解決へ、新事業を 創出するパートナー戦略

「社会的イノベーションの起点になりたい」という志を持ち、「社会課題解決の結節点になりたい」という使命感を持つ藤原氏。そうした志や使命を果たすうえでの東京センチュリーの強みとは何か?

「われわれにはおかげ様で、長い歴史の中でほとんどの産業の方々とのお付き合いがあります。われわれは直接、消費者に接するBtoC(企業対消費者)のビジネスは限られていて、敢えて言うと、ニッポンレンタカーサービスというレンタカー会社がありますが、それ以外は基本的にBtoB(企業対企業)の会社なので、やはりそういったネットワークが非常に大切な財産ですね」

 ネットワークづくりを進めていくうえで、NTTグループや伊藤忠商事などのパートナーの存在は大きく、自分たちの強みであると氏は認識する。

 特に、NTTとは2005年のオートリース事業の統合に始まり、2019年度に資本業務提携し、共同出資会社のNTT・TCリースを設立(2020)。NTTグループ各社とは、インドや米国で需要が高まるデータセンター事業などを推進中だ。

パートナーと一緒になった投資が続く。写真は米国シカゴにあるNTTと共同出資でつくったデータセンター

 祖業であるリース業でいえば、業界トップのオリックスや銀行系の三井住友ファイナンス&リースや三菱HCキャピタル(2021年に三菱UFJリースと日立キャピタルが合併して誕生)がある。

 2025年3月期の業績で見ると、オリックスは売上高2兆8748億円、営業利益3318億円、次いで三井住友ファイナンス&リース(売上高2兆2091億円、営業利益1714億円)、三菱HCキャピタル(売上高2兆908億円、営業利益1871億円)の順。

 東京センチュリーは売上高1兆3686億円、営業利益1170億円で総体的には4位の座にあるが、各社とももはや〝リース業〟で一括りできる業容ではない。また、そういう時代でもない。

 みずほFGグループ内にも、みずほリース(2025年3月期の売上高は6954億円、営業利益489億円)や芙蓉総合リース(売上高6783億円、営業利益647億円)があるが、東京センチュリーは歴史的に見ても銀行色は薄い。

 藤原氏は、こうした現状況を踏まえて、「もはやリース業という括りではない所まで来ていますし、現にわたくしどもも他のリース業といわれる各社さんとも業容が違います」と語り、「わたくしどもの差別化の最も大きな源泉は、豊富な経営資源を持ち、かつグローバルに活躍しておられるパートナーの存在があることです」と強調する。

 同社の取引先会社数は現在、大企業から中堅、中小企業まで約2万社以上。この中でNTTや伊藤忠商事、富士通など各業界をリードし、グローバルに事業を展開するパートナー企業と連携して、ジョイントビジネス(合弁事業)を行っている。パートナーシップ戦略での新事業創出である。

「これだけ課題自体が複雑で多様になってきている時に、自らだけで解決策を追うというよりは、やはり誰か専門性を持ったパートナーの方々と一緒にやるというアプローチが大事だと思います」と藤原氏は語る。

地方創生に繋げる

 日本の社会課題の一つである地方創生にはどう取り組むのか?

「みずほ銀行は全国に支店や拠点がありますから、わたしは銀行に居た時から地方創生というものにも取り組んできました。今度、そうした仕事にわれわれ自身が入ることで、金融以外のところで、お役に立てるような連携の仕方があると思います」  同社はすでに、福岡銀行との折半出資でリース会社(FFGリース)を立ち上げている。

 東京センチュリーが持つリース機能やネットワークを活かし、車やIT機器といった従来のリースにとどまらず、不動産投資や開発等による都市開発や地方創生を手がける。

 最近では、その地域の特性を活かした工場の誘致や、データセンター、物流センター建設といった事例も出始めている。

「地方を元気にするプロジェクトはこれから膨らんでくると思います」と藤原氏。地方創生は日本が抱える重要な社会課題の一つであり、同社がどのような役割を果たすかが注目される。

5つの事業分野に注力!

 藤原氏は、東京センチュリーがこれから注力する事業として、〝5つの事業分野〟を掲げる。

 まずは、『国内リース』事業。これはIT機器などのリース、各種ファイナンスやパートナーとの共創ビジネスなどの業務。

『オートモビリティ』事業ではニッポンレンタカーをはじめ、法人向け・個人向けのオートリースや次世代オート(EV=電気自動車、データ等)を展開。

『スペシャルティ』事業では、航空機リースや船舶・不動産などに関わるリース・ファイナンスや投資業務を展開。

 そして、『国際』業務として、IT機器リースやオート・建機のファイナンス、データセンター事業が含まれる。

 さらに、『環境インフラ』事業として、太陽光発電やバイオマス発電などの再生可能エネルギーや蓄電池事業、法人のPPA(電力購入や電力販売に伴う契約)を支援する業務を手がける。

 氏は、社長就任後直ちに『YMOプロジェクト』を立ち上げ、注力する5つの事業領域の下、20のプロジェクトを実行することを決定した。

 YMOとは何か?

「YMOは何の略かというと、僕らの世代はあのYellow Magic Orchestraというニューミュージック、ニューウェイブの音楽の新しい風を吹かせたあのバンドを思い浮かべますけど、実はこれ、Yはヤングとかユースの若者、Mはマーベリック(maverick)で変わり者、Oはアウトサイダー(よそ者)を意味します。だから基本的には、若者、変わり者、よそ者を集めて、この企業変革プロジェクトをやってみようと思ったんです」

 事業戦略、財務戦略、経営インフラ戦略、人事戦略の全てにおいて、一番大事なのは「社員の意識改革だ」とする藤原氏は、企業変革について語る。

「われわれは業界ナンバーワンになるという強い意識を持ってこれに取り組んでいきます。そういう気運をぜひ社内で盛り上げていきたいと考えています」

祖業リースの可能性は?

 祖業のリースは、時代の推移と共に、さまざまな事業と融合し、形を変えて進化してきた。リースの可能性・潜在力はまだ掘り起こせるのか?

「今、(産業界全体の)設備投資で、リースの使用割合は4%位しかない。2000年代前半(ピーク時)は8%位あったのが、今は4%位に落ちているんです」

 藤原氏は、投資に対する産業界のトップの取り組みも変化してきているとして、「見直しされる」と期待する。

「お客様からしてみると、単に物を借りたいだけじゃなくて、やはり解決策を知りたいんですよ。そういう意味でいうと、例えば人手不足の中で、IT機器や車のメンテナンスにしても、アウトソーシングしたいとか、在庫管理を任せたいというニーズですね。車のドライバーも探してきてくださいといったニーズは増える一方です」

 デジタル投資の増加もあり、藤原氏は、「われわれの出番は絶対に増えるし、まだまだ伸びます」と強調する。

『早く、正しく、新しく』を キーワードに

『早く、正しく、新しく』─。藤原氏は社長就任直後から、この3つのキーワードで、グループ内の社員(約8000人)の意識改革を推進中。

「これだけ時代の変化が激しい中で、やはり早さは価値だと。例えば1週間後の100点より、翌日の80点のほうが価値があるんだと」  次に、『正しく』にはどういう意義を含ませているのか─。

「われわれは東京センチュリーとして、社会課題の解決に導くのだから、これには戦略ストーリーがあって、それに沿った戦略的整合性というのはすごく大事にします」

 藤原氏は「それだけに、やはり世の中がわれわれを見ている。そのことを強く意識してほしい」と社員に訴える。

 倫理的、道徳的に正しいことをやっているか─という自らへの問いかけである。例えば、環境エネルギーにしても、算盤ずくだけでやっていないかという自省が大事で、周囲との調和を大切にして、「道徳的、倫理的に正しい形で進めなければいけない」という氏の思いである。

 業績向上の数字だけを追いかけていて、「儲かることなら何でもやる」─といった風潮が世の中の一部に見られる。

 こうした〝儲かるものなら何でも…〟といった考え方とは一線を引く生き方。経営には基本軸(コア、中核)となるものが不可欠という考え方である。

「わが社は絶対に、地球規模の社会課題を解決するというコアをつくりたい。儲かるからといって、何でもやらない。正しく稼ぐことが非常に大事なことで、そこの道徳観、倫理観を大事にしていきたいと思っています」

 最後に、『新しく』について、氏は「これは、わたしのビジネスパーソンとしての信念でもありますけれども、やはり前例踏襲は思考停止の第一歩だと思っているんですよ」と話す。

 自分で物事を考え、行動することの大切さ─。

「ええ、これまでのやり方はこうだったとか、昨年もそれでやりましたとかいう発想は要らない。やはり自分で物事を考え、行動する。その軸の中で、やはり常に新しい発想で臨んでいく。それを育むような職場環境をつくるのがわたしの仕事でもありますし、社員の皆さんもそこに挑戦、チャレンジしてほしいなと思っています」

 藤原氏が1985年(昭和60年)に大学を卒業し、社会人となって40年が経つ。さまざまな修行をし、困難を経験して、今思うこととは何か?

「成功の反対は失敗ではなくて、挑戦しないこと、だと思っています」と藤原氏。新しい事への挑戦がこれからも続く。

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