米Googleは11月18日(現地時間)、AIモデルのメジャーアップグレードとなる「Gemini 3」を発表し、検索やGeminiアプリ、開発者向けのGemini APIなど、同社の主要サービスへ「Gemini 3 Pro」プレビュー版の展開を開始した。併せて、Gemini 3を中核に据えた新しいエージェント・ファーストの開発環境「Google Antigravity」も発表した。コード生成からデバッグ、実行までをAIエージェントが担う、新しい開発体験を打ち出している。

Gemini 3は、テキストだけでなく画像や動画、音声、コードなど複数のデータ形式を扱えるマルチモーダルな大規模言語モデル(LLM)である。Googleは、Gemini 1でマルチモーダル対応と長文コンテキスト処理を拡張し、Gemini 2系で推論力とエージェント機能を強化しており、Gemini 3はこれらの技術的進化の集大成に位置づけられる。

Googleによれば、「Gemini 3 Pro」は既存のGemini 2.5 Proを主要なAIベンチマークで上回り、特に「複雑な推論」、「マルチモーダル理解」、「エージェントコーディング能力」において大きな進歩を示しているという。

独立したAI評価指標であるLMArenaのテキスト推論リーダーボードでは、これまでどのLLMも到達しなかった1501 Eloを達成。また、100以上の専門分野にまたがる問題を含み、推論力や論理的思考を問う難関ベンチマーク「Humanity’s Last Exam」でも、ツール使用なしで37.5%という過去最高スコアを記録した。

さらにGoogleは、「Gemini 3 Deep Think」という推論強化モードも発表した。これはより複雑な問題解決を目的に設計されたモードであり、「Humanity’s Last Exam」のスコアは41.0%(ツール使用なし)を記録した。AIの抽象的な推論力や未知の課題への適応力を測る高難度ベンチマーク「ARC-AGI-2」では45.1%(ツール使用)という数値を達成し、多段階の仮説生成や検証プロセスにおける有効性を示している。

Gemini 3 Deep Thinkは、安全性テスターによる安全評価を終えた後、 Google AI Ultraの加入者に提供される予定である。

開発者向け機能、エージェント時代のコーディング基盤

開発分野では、コード生成に加えて、テスト、デバッグ、改修といった一連の開発フローをエージェントに任せやすくなったとされる。

Gemini 3 Proは、AIエージェントが実際のターミナルでどの程度の操作を行えるかを評価するベンチマーク「Terminal-Bench 2.0」で54.2%、コーディングエージェントの能力を測る「SWE-Bench Verified」で76.2%を記録した。

Googleは、Gemini 3が「バイブ・コーディングの真の可能性を解き放つ」としている。エージェント主導のWeb開発能力を評価する「WebDev Arena」で1487 Eloを獲得し、リーダーボードのトップに立った。

このエージェント能力を最大限に活用するために、Googleは新たな開発プラットフォーム「Google Antigravity」を用意した。ワークスペース全体でエージェントを管理し、開発者が細かい手順ではなく、目的レベルでタスクを指示できるようにするエージェント・ファーストの開発環境である。

  • エージェント・ファースト:開発者がアーキテクトとして振る舞い、AIエージェントがエディタ、ターミナル、ブラウザを横断して自律的に複雑なタスクを計画・実行する。
  • マルチエージェント管理:エージェント中心の「マネージャー画面」により、複数のワークスペースにまたがる複数のエージェントを並行して起動、調整、監視できる。これにより、ユーザーはエージェントとより非同期的に対話し、自律的な作業を実現できる。
  • アーティファクト(Artifacts):エージェントが作業を完了する際、タスクリスト、計画、スクリーンショット、ブラウザ記録などのアーティファクト(成果物)を生成し、ユーザーが作業内容と次のステップを容易に検証できる。

現在Antigravity は、macOS、Windows、Linux向けにパブリックプレビュー版が無償で提供されている。

幅広いサービスへの展開

Gemini 3は、Google検索の「AIモード」、一般向けの「Gemini」アプリ、開発者向けの「Google Antigravity」「Gemini CLI」、企業向けの「Vertex AI」など、Googleの幅広いサービスに同時展開される。

Gemini API経由でも、Gemini 3 Proがプレビュー提供されており、Google AI StudioやVertex AIから利用できる。プレビュー時点での料金(20万トークン以下のプロンプトの場合)は、入力100万トークンあたり2ドル、出力100万トークンあたり12ドルに設定されている。これは、Gemini 2.5 Pro(入力1.25ドル、出力10ドル)より高価格帯のモデルに位置づけられる。

現在のGeminiアプリの月間アクティブユーザーは6億5000万人以上、Googleの生成AIを利用する開発者は約1300万人であり、同社は「Gemini 3をGoogle全体の規模で展開する」としている。