AIによりインターネットが様変わりしつつある。World Wide Web(WWW)の発明者であるTim Berners-Lee(ティム・バーナーズ=リー)氏はこの変化をどう見ているのか。同氏は、自身が長年提唱してきた「セマンティックWeb」がAIで実現しつつある一方、AIが既存のWeb経済モデルが立ち行かなくなるとの懸念を抱いているようだ。

AIによりセマンティックWebの新しい波が到来

バーナーズ=リー氏は以前から「セマンティックWeb」を提唱してきた。セマンティックWebとは機械が理解できる構造化されたWeb構想だが、現在AIによって実現しつつある。

同氏は「セマンティックWebは、公開データベースやSchema.orgなどである程度成功してきた。だが、非セマンティックデータからセマンティックデータを抽出するものを私たちは作らなかった。今、AIがそれをやってくれる。AIによってセマンティックWebの新しい波が来ている」と説明している。

現在のAI企業は、バーナーズ=リー氏らが行ったように、生データをもらうために企業を説得するのではなく、(許可の有無にかかわらず)抽出している。このような抽出に対して、同氏は技術的にはデータ所有者が抽出を制御する仕組みを構築可能だと述べている。

OpenAIやPerplexityなどAI企業がブラウザを構築しはじめた動きについて、バーナーズ=リー氏は「エキサイティングでイノベイティブ」と述べつつ、「AIを最初の入り口として活用することはエキサイティングだが、広告収入で生計を立てる人々が作り出す膨大なデータの流れを支えるWebのインフラには懸念している」と話す。また、同氏は「誰もリンクを辿らず、検索エンジンを使わず、実際にWebサイトを使わなくなれば、広告収益の流れが途絶える。ビジネスモデル全体が崩壊する」と警告した。

同時にすべてのブラウザがChromiumをベースとしていることを指摘しながら、「ブラウザに競合があった方が良いが、ブラウザエンジンの構築は簡単ではない」とも述べている。

バーナーズ=リー氏は現在、自身が立ち上げCTOを務めるInruptで、ユーザー専用のデータウォレットにアクセスできるAIアシスタント「Charlie」を開発している。外部データと個人データの活用により、「ユーザーのために働くAI」を目指す。医師や弁護士がクライアントの最善の利益のために働くように、AIもユーザーのために働く能力を持つことが重要、と述べている。11月11日付のThe Vergeが報じている。