米Microsoftは11月6日(現地時間)、AI部門であるMicrosoft AIの下に「MAI Superintelligence Team」を新設した。Microsoft AIのCEOであるムスタファ・スレイマン氏がリーダーとなり、「Humanist Superintelligence(人間中心の超知能、以下HSI)」というビジョンを掲げて研究と実装を進める。同社はHSIを、“無制限の自律性をもつ汎用超知能”ではなく、明確な目的と制約のもとで人間に奉仕する“問題解決型の技術”と位置づけている。

スレイマン氏は、高性能AI開発を競争ではなく、人々の生活と将来の展望を改善するための、より広範で深い人間的な取り組みの一部として捉えているとした。超知能の潜在力を認めつつも、制御(コンテインメント)および人間の価値との整合(アライメント)を継続的に確保する必要があるとし、開発と同時に安全性の検証と運用上のガードレールを重視する姿勢を示した。

HSIは、特定の領域における具体的な問題解決に特化し、常に人間の管理下に置かれる、安全で実用的な技術を目指す。今後注力していく応用分野として、以下の3つを挙げた。

  • AIコンパニオン: 学習・行動・生産性・情緒的サポートを提供する個人支援パートナーとしてのAI。
  • 医療用超知能:診断や臨床オペレーションの計画・予測を専門家水準で支援する。今後の進展が見込まれる分野であり、同社の初期の研究成果として、人間の医師の正答率が約20%にとどまる「New England Journal of Medicine」の症例チャレンジにおいて、同社のオーケストレーター「MAI-DxO」は正答率が85%に到達したという。
  • クリーンエネルギーの潤沢供給:データセンターの需要増加に伴い電力消費が増大する中、AIを活用して核融合発電の実現や、新素材の開発、既存グリッドの効率化などを加速させ、2040年までに安価で豊富な再生可能エネルギーの実現を目指す。

MicrosoftのMAI Superintelligence Team設立の背景には、急速に進むAI開発競争が存在する。Metaは2025年6月にMeta Superintelligence Labsを設立し、汎用超知能の実現に向けた研究を加速させている。また、OpenAIやAnthropic、OpenAIの元幹部らが設立したSafe Superintelligenceなども、それぞれのアプローチで高性能AIの開発を進めている。

一方で、高性能AIの社会実装には、評価指標の標準化、説明可能性の担保、学習データのライセンスやプライバシーの整理、モデルの堅牢性・セキュリティ確保、そして規制当局との協調など、多くの課題が残る。Microsoftは「より早く」の競争から距離を置き、教育・ヘルスケア・エネルギーの三領域を中核とした“実用”重視で競合との差別化を図る。スレイマン氏は、課題の克服には、AI研究者・規制当局・一般市民とのビジョンの共有が不可欠であるとし、この取り組みについて率直に説明し、社会全体での対話を進めていく考えを示した。