10月22日、OpenAI Chief Global Affairs OfficerのChris Lehane(クリス・レへイン)氏が来日し、都内で「AIが国の発展にどのように寄与しうるか」をテーマに、日本版の「Economic Blueprint」に関してメディア向けイベントを開催した。
AIは世界を動かす“テコ”
冒頭、レへイン氏はOpenAIのこれまでを振り返り「OpenAIは2015年に非営利組織として設立されました。当初の大きな賭けは“人間の脳の学習プロセスを再現するアルゴリズムを設計できる”というものでした。これがディープラーニング(深層学習)です。AIは40年以上研究されてきましたが、実質的なブレークスルーはありませんでした。しかし2017~2018年ごろ、この仮説が現実味を帯び始め、2022年11月にChatGPTが登場し、世界的に爆発的な注目を集めました。さらに2024年9月、次の大きな進化がありました。それが推論能力です。これはAIが人間のように“考え、分析し、理解する”能力を持つことを意味します」と述べた。
同氏によると、AIを歴史的文脈で考えれば汎用技術であり、過去の例として火、車輪、蒸気機関、印刷機、電気、インターネットなどとの類似性を示唆。特に生活、仕事、遊び方を変えた電気との類似性が強いと考えており、AIが異なる点は「人間の知性そのものをスケールさせる」ことだという。
また、同氏は「過去の技術は人間の肉体的な限界を超えるものでしたが、AIは脳の能力を拡張する技術です。哲学者アルキメデスの言葉を借りれば『十分に長いテコがあれば世界を動かせる』であり、AIはそのテコです。人間はより多く考え、学び、創造し、生産できるようになります」と期待を口にする。
OpenAIから日本への3つの提案
レへイン氏はAIのロードマップとして、2025年はコーディングや計画立案などをAIが代行するAIエージェント、2026年は難題解決のスピードと質が科学分野で飛躍的に向上し、2027年はロボティクスとの融合と位置付けている。
日本におけるOpenAIの現状としては、過去1年で利用者数が4倍、約1300万人が定常利用し、企業導入率は世界トップクラスであり、有料ユーザー数は世界第4位、AIスタートアップ開発者数は同5位となっている。
同氏は「日本は明治維新や戦後復興、電子・デジタル時代をはじめ、歴史的に技術転換に強い国です。政府もイノベーションに前向きで、企業の技術リテラシーも高い。これらは大きな競争優位性です」と話す。
日本版のBlueprintの柱は誰もがAIを使える「インクルーシブなアクセス」、電力網や道路に相当するAI基盤「計算インフラの整備」、企業だけでなく一般市民もAIリテラシーを獲得する「教育とリスキリング」の3点を挙げている。
そして、重点分野は中小企業の導入を促進する「商業・産業」、高齢化社会での効率化を図る「医療」、ChatGPTや教育ツールによる個別最適化学習の「教育」、サービス提供を効率化する「行政」の4分野だ。
先日には、日立製作所と次世代AIインフラの構築とグローバル規模のAIデータセンター拡大を軸に戦略的パートナーシップに関する覚書(MOU)を締結。両社はインフラ分野で協力を見据えて、日本国内のみならずグローバル展開も視野に入れているほか、関西電力とも連携している。
AIは100兆円規模の価値とGDPを16%押し上げる
レへイン氏は「AIは中立ではありません。人間社会がどのように設計するかで方向性が決まります。日本と米国はアジアで重要な役割を果たすべきです」と述べており、重要な原則として以下の5つのポイントを示した。
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アクセスの民主化
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安全性と標準化
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個人の自由と選択
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政府の積極的活用
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インフラ・データ・人材の整備
このようなポイントをふまえて、最後に同氏は「日本には現状の制約や慣性を突破し、急速な成長軌道に乗るための勢いがあります。高齢化による生産性停滞を打破し、経済を再活性化するチャンスです。AIの導入で日本は100兆円規模の価値を創出し、GDPを最大16%押し上げる可能性があります。今こそ行動の時です。私たちは日本とともに、未来を築くことに全力を尽くします」と述べ、講演を締めくくった。



