「Innovation for All」をテーマにした「CEATEC 2025」が4日間の会期を終え、10月17日に閉幕した。
オープニングセッションでは、日本の未来を切り開くとされるAI、サステナビリティ、地方創生の3つのテーマが取り上げられた。ここではAIをテーマにした「AIエージェント産業革命と日本のポテンシャル」について紹介しよう。
オープニングセッションのトップバッターとして、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)会長の漆間啓氏が開会挨拶し、その後AIをテーマにしたパネルディスカッションがスタートした。
パネラーは次の3名。モデレーターはウフル 執行役員の田中正宏氏が務めた。
- コールセンターでの生成AI支援を行うGen-AX代表取締役社長 CEOの砂金信一郎氏
- アニメ制作にAIを活用するサラマンダー CEOの櫻井大樹氏
- データ×人の“フィジタルAI”でマーケットプレイスを最適化するUber AI Solutions Japan Commercial HeadのAya Zook氏
Uber事業を支えるAI技術。高品質なデータセットが鍵
パネルの前半は各社の取り組み紹介で、後半は3つの論点のクロストークという構成だった。
トップバッターはUber AI Solutions Japan Commercial HeadのAya Zook氏。UberはAIによるオペレーション効率化を図っており、現在は400以上のモデルに対し月2万件を超えるトレーニング、毎秒1,000万回の予測を行っている。そのAI技術を企業向けに提供するのがUber AI Solutionsとなる。
一方で、生成AIプロジェクトの失敗率は95%にものぼるという。PoC(実証実験)から先に進めず、投資回収できないケースが多いとのこと。
その原因として、「データの整理不足によりAIモデルが業務コンテキストを理解できないこと」と、「インフラのスケーラビリティ不足」が挙げられた。
Uber AI Solutionsは98%の高品質データラベリング、15万人の専門人材による(AIへの)知識組み込み能力、10年間におよぶAI活用の知見とスケールインフラを強みに、ユーザー企業に伴走する体制をアピールした。
立ち位置が難しいアニメ制作現場での生成AI、どう活用される?
サラマンダー CEOの櫻井大樹氏は、アニメ制作におけるAIの補助・加速・統一について紹介した。
倫理・労務・創造性の3軸でAIを再定義し、例としてコンセプトアートクリエイターへ説明、許諾を得た上で過去の作品を学習させ、クリエイターが書いたラフを元に候補画像を生成。その画像にクリエイターが修正を加えて完成させることで「0→1と9→10は人が行い、1→9はAIで短縮する」と話した。
櫻井氏はLLMの無断学習により「“〇〇風”画像」の生成が話題になっていることを踏まえ、「プロジェクト終了と共に学習モデルを破棄する」ことで、信頼を確保していると説明していた。
また、プロジェクトメンバー全員が合意することもポイントとして挙げていた。美術監督の意図通りの画像が生成されるのならば、大量作画の負担が減り人手不足が解消、作品の統一度も上がるとして、生成AIの利用に賛成する責任者の方も多いという。
コールセンターは「会話ログがAI学習データとして整っている」
Gen-AX代表取締役社長 CEOの砂金信一郎氏は、コールセンターDXに向けた支援について説明。
コールセンターは人手不足と委託費が構造的な課題だが、一方でAIに必要な会話ログが学習しやすい形で蓄積されている点がメリット。「社会実装の起点」として選んだとのこと。
コールセンターでのAIエージェント化のポイントは、実務を状態遷移として定義し、タスクを分解、自律的に実行すること。ダッシュボードで遷移の詰まりを可視化することで、スーパーバイザーの介入を容易にする。
また、応答中に割り込むような会話にも対応することで、日本でのサポート業務ならではの問題も解消していると説明していた。
日本は「ロボット」や「AI」を受け入れる下地がある
各社の取り組み紹介が終わり、後半のディスカッションでは「エージェント時代の日本の勝ち筋」、「人とAIの役割分担」、「現場での実装・活用における課題」という3つのテーマが議論された。
「エージェント時代の日本の勝ち筋」については、日本では「鉄腕アトム」や「ドラえもん」のように、ロボットやAIに対し好意的な受け入れ素地があるとした上で、「AIは人間を殺戮するためのものではなくて助けてくれる。日本人だからこそ作れるものを、強みとして活かしていくべきだと思う」と砂金氏がコメント。海外では厳しい声が上がるケースもあるといい、櫻井氏は、海外のクリエイターの中には、AIを使いたくても本国で批判的に見られるため日本で活動する人もいると、海外事情を紹介した。
また日本ならではの事情として、過去の膨大な紙書類で培ったデータ蓄積を活かすことで優位性が出るのでは、という議論も。Uber AI Solutions Japan Commercial HeadのAya Zook氏は、「(日本では)会社によって、過去の紙データが倉庫何個分というレベルで保管する“記録文化”があるので、これをAIエージェントにどう活用できるか」と提言した。
「人とAIの役割分担」「現場での実装・活用における課題」では、砂金氏が「AIの仕事と人間の仕事、線を引くことで安心しがちだが、“どっちの役割か”という議論ではなく、曖昧を許容できる組織の方が、AIに抵抗感がなくて現場でも導入しやすい。『今忙しいからAIちゃん、ちょっとやっといて』と自然に言える職場が理想」と述べていた。












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