NTTドコモビジネス(旧 NTTコミュニケーションズ)は9月16日、顧客接点の高度化を支援するSaaS(Software as a Service)型のコミュニケーションサービス「docomo business ANCAR(アンカー)」を12月より提供開始することを発表した。

同サービスは、コンタクトセンターや営業所、店舗など、企業が持つさまざまな顧客接点をAIで進化させ、CX(Customer Experience:顧客体験)の最大化やNPS(Net Promoter Score)改善、EX(Employee Experience:従業員体験)の向上を支援するという。

サービス提供開始の背景

コンタクトセンターや営業所、店舗などの顧客接点については、多くの企業が事業の成長や従業員の生産性向上につながる重要なポイントと捉えている。CXの指標の一つである「CSAT(Customer Satisfaction Score:顧客満足度)」では、最も重要な要因として「コミュニケーション体験」が挙げられ、これが購買に与える影響は80%を超える。

  • CX向上にはコミュニケーション体験が重要とされる

    CX向上にはコミュニケーション体験が重要とされる

しかし昨今は多くの企業で人材が不足しており、特に人材確保や人材の流動性などが具体的な課題として挙げられる。そうした中、人材の課題を解決する策としてAI活用に対する期待が高まっている。

企業におけるAIの活用実態を見ると、従業員やオペレーターの支援、社内業務の効率化など、社内利用のユースケースは2023年度の7%から2024年度には18%へと伸長している。一方で、顧客接点など社外向けのAI利用率は2023年度の1.1%に対し2024年度は1.5%と、依然として低い。

その主な理由として、AIの利用開始に必要な設備やライセンスなどの初期費用の他、顧客接点に適したAIの構築・運用に関する不安、そもそもAIの導入効果が高い業務が分かりにくいといった点が考えられる。

  • 社外向けのAI活用はあまり進んでいない

    社外向けのAI活用はあまり進んでいない

そこでNTTドコモビジネスは、フリーダイヤルやナビダイヤル、Arcstar IP Voice、モバイルサービスなど、通信サービスや通信キャリアならではの独自データとさまざまなAIを組み合わせ、業務効率化やカスタマ―ハラスメント対策、災害・障害への対策などを支援する。顧客接点におけるCXおよびEXを向上し、企業の事業成長や生産性向上に寄与するとのことだ。

なお、通信キャリアならではの独自データとは、「混雑でつながらなかった」「問い合わせを諦めてしまった」など、企業の窓口につながる前の通信キャリア網内のデータなどだ。

「docomo business ANCAR」のサービス概要

今回提供を開始する「docomo business ANCAR」は、通信キャリアであるNTTドコモグループであるNTTドコモビジネスが手掛ける通信サービスとAIを組み合わせ、企業の顧客接点の高度化を支援する。

サービス名のANCARは、「AI Native Communication with Advanced Resilience」というサービスコンセプトに由来する。AIを当たり前のように活用するコミュニケーションと、自然災害やカスタマーハラスメント対策などさまざまな環境変化に対応可能な回復力を意味するという。

同サービスでは、顧客の要望を分析して最適な窓口へ転送する「ANCAR Routing」や、24時間対応可能なAIチャットボット「ANCAR Chat」、ボイスボット「ANCAR Voice」、録音が可能な「ANCAR Rec」、通話内容を要約する「ANCAR Summarize」、顧客体験を分析し可視化する「ANCAR Analyze」など、複数の機能群をラインアップして提供する。

  • 「docomo business ANCAR」の主な機能

    「docomo business ANCAR」の主な機能

また、これらの各機能はポータルサイト「Portal with AI」から管理可能。将来的にはAIエージェントを実装し、各機能を統合的にオーケストレーションするサービスへと発展させる方針だという。

「docomo business ANCAR」が提供する3つの価値

NTTドコモビジネスでコミュニケーションおよびアプリケーションサービスの責任者を務める高橋聡子氏はサービスの特徴について、「現地設備や工事が不要なSaaS型で提供すること、フリーダイヤルやIP Voiceなど通信サービスと連携したサービスであること、通信キャリアだからこそ保有しているデータを活用して本当の顧客体験を可視化できること」の3点を挙げた。

  • NTTドコモビジネス 執行役員 プラットフォームサービス本部 コミュニケーション&アプリケーションサービス部長 高橋聡子氏

    NTTドコモビジネス 執行役員 プラットフォームサービス本部 コミュニケーション&アプリケーションサービス部長 高橋聡子氏

その後、ユーザーに提供する具体的な価値について、以下の通りに説明した。

CXの最大化

顧客の発話内容から要望を分析して適切な窓口へ転送する「ANCAR Routing」、時間外や混雑時でオペレーターが不在の場合でも対応可能なチャットボット「ANCAR Chat」、およびボイスボット「ANCAR Voice」を組み合わせることで、CX向上が期待できる。

さらに、管理者は通話データを基にした顧客体験を分析可能な「ANCAR Analyze」を利用することで、通話内容や通話状況だけでなく、オペレーターにつながる前の切断理由や離脱箇所などを分析できるようになる。

  • 「docomo business ANCAR」によるCX最大化のイメージ

    「docomo business ANCAR」によるCX最大化のイメージ

EXの向上

2つ目の効果は、カスタマーハラスメント対策やアフターコールワークの業務効率化によるEXの向上。キャリア網上で通話を自動録音可能な「ANCAR Rec」、録音内容をテキスト化する「ANCAR Convert」、通話内容を自動要約する「ANCAR Summarize」を組み合わせることで、カスタマーハラスメント対策や日報の作成などに利用できる。

  • 「docomo business ANCAR」によるEX向上のイメージ

    「docomo business ANCAR」によるEX向上のイメージ

顧客接点の強靭化

従来のオンプレミス型の通話サービスとは異なり、「docomo business ANCAR」はSaaS型で提供するため、災害時や障害時にも異なる拠点から顧客対応を継続できる。迂回中の通話録音や通話データも保存できるため、BCP(Business Continuity Plan)対策などに活用できる。

  • 「docomo business ANCAR」はSaaS型のためBCP対策にも有効だという

    「docomo business ANCAR」はSaaS型のためBCP対策にも有効だという