AIエージェント元年となった2025年
アクセンチュアは9月9日、AIによる全社変革の最新動向に関するメディア向け説明会を開催。AIがビジネスの最前線でどういった形で活用されるようになってきたかについての説明を行った。
説明を行った同社 執行役員でビジネス コンサルティング本部データ & AIグループ日本統括 AIセンター長、アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京統括の保科学世氏は冒頭、「2025年は、AIエージェント同士の連携方法を規定する『A2A(Agent-to-Agent)』と、エージェントが外部システムをつなぐプロトコルである『MCP(Model Context Protocol)』が登場したことで、AIエージェントを大きく活用するための土台が整ってきた年となった」との見方を示すほか、「マイクロソフトのCopilotのような特定のITサービスやプラットフォームを生かすようなAIエージェントや業務支援をするAIエージェント、そうしたAIエージェントを開発するツールなど、いろいろと周辺環境も出てきており、エージェント元年と言われる状況となっている」と、AIエージェントを取り巻く環境が大きな広がりを見せていることを強調。一般ユーザーにもAIエージェントが身近な状況になってきているとする。
複数のAIを結び付けて業務に活用するために必要なものとは?
そうした、さまざまなAIソリューションやサービスが登場するようになってきた結果、そうした複数のAI機能を組み合わせる形での活用が期待されるが、「そうしたさまざまなものを組み合わせる際に大切なのは、どういう全体設計思想(アーキテクチャ)でそれらを活用していくのかという部分。いろいろな技術が出てくるがゆえに、それらを見極めて、組み合わせて使っていかないと、企業のデータを生かすという意味では単なる機能の寄せ集めになってしまう可能性がある。それを防ぐためには、どのように業務に組み合わせていくのかという視点と、そのための準備や仕組みが重要」として、そうしたAIプラットフォームの導入の準備や仕組みの構築に向けて以下の5つの項目が重要になるという。
- AIの進化への備え
- 複数AIの組み合わせ
- 責任あるAIへの備え
- 社内情報との連携
- 外部サービスの積極活用
1つ目は進化し続けているAIにどのように追随していく仕組みを作るのかを考える必要があるという観点。2つ目については、生成AIは賢いが、何か事業の予測を立てされたとして、それが正解であるのか、AIの特徴を見極めて組み合わせていくことが重要であるという観点。3つ目はハルシネーションやセキュリティ、パフォーマンスといった部分に対する対策を行う必要があるという観点。4つ目は、自社の保有する情報を活用ことが他社との差別化につながるということを認識する必要性。そして5つ目が、自社にない社外の個別の技術やサービスなど、良いと思ったものを社内のシステムにうまく取り入れていくことの重要性とする。
現在、アクセンチュア自身もAIエージェントによるさまざまな仕事の置き換えを進めているという。例えば請求書の支払いプロセスにおいては5つのスーパーエージェントと、それに紐づく15のユーティリティエージェントを活用して処理を行っており、7割ほどの効率向上を実現したとする。
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アクセンチュアが請求書支払いプロセスで活用しているAIエージェントの例。5つのスーパーエージェントが、ユーザーの意図を理解して、それぞれの機能を自動実行するユーティリティエージェントを実行することで自動化を実現しているという
同社ではこうした取り組みを踏まえて、顧客に向けて業務プロセスごとの理想形を提供する「Accenture AI Poweredサービス」をシリーズとして展開しているが、「人間がAIを使ってサービスを提供する状況から、AI同士が協業する世界が始まっており、その活用が進みつつある」(同)と、人間を介さないでAI同士によるやり取りで業務が進む時代が到来しつつあるという。
経営者層がAIに対する理解を深めることができるAIセンターを京都に開設
こうした動きは社内オペレーションのレイヤのみならず、重点的なAIとの対話を通じた事業経営や意思決定にもおよびつつあるという。こうした状況の変化に対応するべく同社も2024年に京都に「アクセンチュア・アドバンスト・AIセンター京都」を設立した。同センターは、主に経営者層(CxO)がどうAIと向き合って、AIを使いながら意思決定を進めるのかを体験するための施設。例えば、役員たちに同センターにて、あるテーマについての経営ディスカッションをしてもらう裏で、それら役員のAIエージェント同士が同じテーマでディスカッションを実施。人間側がそのテーマに対する結論を出した後に、役員AIエージェントたちの結論を参照、比較して、その違いを比べるといったこともできるという。実際に、このケースで行われた事例があるというが、その際は、人間、AIともにほぼ同じ結論に至ったという。
ター京都| |I@017.jpg,A@アクセンチュア・アドバンスト・AIセンター京都| |M@「アクセンチュア・アドバンスト・AIセンター京都」の概要と、その活用イメージの一例|
「小ネタだが、AIのCxOという存在は人間と話をする時に忖度せずに、経営者にとって耳が痛いことも話すが、逆にそれが好評を博している。人間に面と向かって言われると腹が立つものだが、AIに言われると感情抜きに言われるため受け入れやすいといったものが見えてきた。この経験は、AIと人間、それぞれに良さがあるということを示したものだと思っている」(同)と、すでにAIエージェントを経営の意思決定に活用する中で、大なり小なりの成果が出てきているとし、育てたAIエージェント同士が外部環境を読み解き、そこからどういった未来があり得るのかを予測し、具体化していくということも可能になってきたとする。
こうしたAIエージェントは、なにも社内の人間だけをベースに作るわけではない。同社では市場ならびに顧客のAIエージェントを作ることで、マーケティングから商品やサービスの開発まで一気に仮想空間上で先行して展開でき、それを現実社会に落とし込むデジタルツインの実用化も進めているという。「SNSのデータであっても、独自のデータであっても、そこからニーズを引っ張り出し、消費者が何を考えているのか、出てきた案をブラッシュアップし、バーチャルでテストマーケティングを行い、受けるかどうかをテストすることができるようになる」という取り組みを通じて、デジタルツイン化による市場投入までの短縮を図りつつブラッシュアップを可能とする効果を得ることができるようになるという。
ただし、こうしたさまざまなAIエージェントを活用していく中で、従来型の発想から始めると、「人間がやってるプロセスを自動化しようという発想になるが、それが最適化につながるかというと必ずしもそうではない。AIを活用していくために、大変だがAIに最適なプロセスは何かを考える必要がある。また、AIエージェントの導入が進んでいるが、プロセスの一部だけに入れても、その真の力は発揮できるわけではないため、ビジネス全体で見て考える必要がある」と、AIの活用においては従来からの考え方そのものを改める必要性があり、人間が介在する必要があるのか、といったことも含めて、あるべき業務を俯瞰する必要があると説明する。
AIエージェント時代の人間に求められることとは?
こうして社内のデスクワークの大半がAIエージェントが肩代わりするようになると、人間にとってのデスクワークの価値が低下していくこととなる。そうした変化に伴う人間の業務価値は現場に出て、まだ世の中にデータとしてまとまっていない情報を拾いに行ったり、対人コミュニケーションを増やして相手に信頼される存在になっていかないといけないとの見方も示す。「AIに言われると人間に言われるよりも受け入れやすいという話の逆として、人間をモチベートするには人間の方が良いと思っていて、相手に信頼される関係になることが重要なのではないかと感じている」(同)と、人間性に基づく周囲からの信頼こそが人間がビジネスをしていくうえでの重要度を増していく可能性を示唆している。
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AIエージェントがオフィスで人間が行っていた作業を肩代わりするようになってきた時、人間に求められるのは現場での積極的な対人コミュニケーションの増加による生の情報の取得と相手との信頼関係の構築だという見立てをアクセンチュアでは立ててている
AIの導入により、望む望まざるを別に企業や全社規模で変革を迫られることとなっていく。そうした中、アクセンチュアとしては「ビジネス・業務を変える」「人財・組織を変える」「基盤を変える」の3つが重要になるとの見方を示す。1つ目については、人の働き方が変わる中で、人そのものも変わる必要があるとのことで、アクセンチュアとしても人の育成に注力しているとする。そうして人を変えていく中で、事業の成長を果たしていくためにはAIの基盤構築も重要で、働き方の変化に合わせた人の変化、そしてそれを支える基盤の変化という3つはセットとして進めていく必要があるとする。
なお、同氏はこうしたAIエージェント時代におけるアクセンチュアの役割として「AIエージェント時代というビジネスの大変革期において、これまでの業務変革の支援を通じて、大規模システムの構築であったり、AIの進化を可能とする運用体制の構築などを含めた実戦経験を踏まえた知見を交える形で、顧客の全社変革をサポートしていくこと」としている。ちなみに京都のAIセンターは、世界に20か所以上あるAIセンターの中でももっとも新しく設立された拠点で、かつすべての業種・領域を対象とするフルスケールAIセンターという重要な位置づけだという。京都以外にフルスケールAIセンターの位置づけはインドのベンガルールのみで、京都が2拠点目という扱いになるとのことで、日本の経営層のみならず海外からも経営層に来日してもらって活用してもらうべく、新技術やシミュレーションの強化などを継続して行っていき、全社変革の支援につなげていくとしている。












