NECでは、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)のあるべき姿について、「変化を捉え、データドリブンで経営の意思決定を行い、ダイナミックに対応すること」をコンセプトに「ダイナミックマニュファクチャリング」と名付け、取り組みを進めている。

同社は、この「ダイナミックマニュファクチャリング」の下で、ものづくりにおける5つのチェーン(エンジニアリングチェーン・サプライチェーン・サステナブルチェーン・プロダクションチェーン・サービスチェーン)がデータ活用を通じて有機的につながることで迅速な経営判断を可能にし、変化に対して動的に対応できる姿を想定しているという。

  • 「ダイナミックマニュファクチャリング」のイメージ

    「ダイナミックマニュファクチャリング」のイメージ

その中心となるのが自律的にタスクを遂行するAgentic AIベースのソリューションであり、NECはAgentic AIを活用して規制要件の製品適合を支援するサービスとして「NEC製品法規適合AIアシスタント」を開発中であることを発表した。

本稿では、この開発中のサービスの特色や開発背景に迫る。NEC 製造ソリューション事業部門 スマートインダストリー統括部の高野智史氏、増本貴樹氏に話を聞いた。

  • 右からNEC 製造ソリューション事業部門 スマートインダストリー統括部の高野智史氏、増本貴樹氏

    右からNEC 製造ソリューション事業部門 スマートインダストリー統括部の高野智史氏、増本貴樹氏

法規制遵守における課題

これまで法規制遵守における課題として、製品安全・環境・無線・サイバーなど、さまざまな領域において各国規制が頻繁に改正されるということが挙げられていた。

近年ではその件数もますます増えており、日本・アメリカ・ヨーロッパだけでも年間500件超の技術基準や通達が更新されているという。

さらに、IoT・5Gモジュールやソフトウェアが標準搭載されたことにより、1製品につき平均1万5000点超の部品や複数のファームウェア(ハードウェアを制御し、特定の機能を果たすために、その内部に組み込まれているソフトウェア)が組み込まれるようになっていることも、法規制遵守の難易度を高めている要因の1つだ。

このようなグローバル化や製品の複雑化により、法規対応の高度化が進んでいることで、製品開発の工数が増大しているのだという。

「これまでさまざまなクライアントにヒアリングを行う中で、『法規改正に気付けない』『解釈に迷う』『対応に漏れが出る』といった悩みの声を多く聞きました」(高野氏)

  • 法規制遵守における課題について説明する高野氏

    法規制遵守における課題について説明する高野氏

「NEC 製品法規適合AIアシスタント」の概要

このような課題に対し、AIを活用した情報監視・要約・影響分析によって、短時間で誰でも効率的な対応を可能にするのが「NEC 製品法規適合AIアシスタント」だ。

「NEC 製品法規適合AIアシスタント」は、最新の法規情報に対し自社での対応要否と適合のための要件を整理することで、製品開発における法規対応業務をアシストするサービスとなっている。

安全関連法規や電波関連法規、環境関連法規といったさまざまな新しく発表された法規に対して、製品仕様・部品表・過去対応履歴といった自社情報として蓄積されている、製品情報(PLM)ナレッジを活用。これをAgentic AIを用いて法規分析するというものだ。

「対応すべき法規の推定・アラート」「要対応法規における影響範囲・適合要件の整理」「各製品の対応法規とアクション管理」といった機能を搭載予定だという。 「まずは1stスコープとして、『対応すべき法規の推定・アラート』『要対応法規における影響範囲・適合要件の整理』の2点を先行して開発中です」(増本氏)

  • 「NEC 製品法規適合AIアシスタント」の概要を説明する増本氏

    「NEC 製品法規適合AIアシスタント」の概要を説明する増本氏

社内実証でさまざまな導入効果を確認

同社では、「NEC 製品法規適合AIアシスタント」について、自社をゼロ番目のクライアントとする「クライアントゼロ」での社内実証を行い、業務での有効性および違反リスク低減・生産性向上・属人化解消に寄与できることを確認できたという。

具体的には、「業務プロセスに沿ったUI/UX検証(機能性と画面遷移の最適化)」「AIのパフォーマンス検証(アウトプット精度の最適化)」「業務改善の効果検証」の3点について検証。

法規対応の業務システムとして有効であり、業務の改善効果として違反リスク低減・生産性向上・属人化解消を見込めたという。

「自部門に関係のない法規が分かることで、対応が必要な法規を優先できることに加え、AIのアシストにより、経験の浅いメンバーでも自律した業務が可能になりました」(増本氏)

また、判断プロセスが記録されることで教育にも活用可能だということが分かったという。

数値の面でも「法規情報分析や対応策の検討時間を50%削減」「経験の浅いメンバーの業務範囲を20%拡大」といった効果も確認できたそうで、NECは、このサービスを通じて「仕組みで品質をつくる時代」を目指す考えだ。

  • 社内実証の検証結果

    社内実証の検証結果

今後の予定としては、2025年7月~9月でMVP(Minimum Viable Product)として、ミニマムの機能を備えたプロダクトを開発。同年10月からPoCを実施し、2026年4月からの本格導入を目指していくという。

高野氏は、今後の展望について「まずは対応できる業務範囲のバリエーションを増やすこと。そしていずれは設計の部分にも活用してもらえるようなサービスに進化し、どんな対応策の実行にも食い込んでいきたい」と語ってくれた。