戸建て住宅「へーベルハウス」や集合住宅「へーベルメゾン」の設計や施工管理・販売を手掛ける旭化成ホームズは、「ALL for LONGLIFE」というビジョンの下でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している。
今回は、旭化成ホームズ DX・IT推進本部 本部長の中村干城氏、同本部 データ戦略部 CXT推進グループの坂井智亮氏に同社の展開するITサービスについて聞いた。
いのち・くらし・人生を守る「ALL for LONGLIFE」
旭化成ホームズは、1998年にヘーベルハウスブランド内で「ロングライフ住宅の実現」を宣言し、業界に先駆けて、50年にわたる長期点検を導入するといった、取り組みを進めてきた。(なお現在は「60年無料点検システム」を導入)
そして、時代の移り変わりともに、「ロングライフ住宅」の考えのもとで進められていた「建物」のロングライフ化だけにとどまらず、人々の「いのち・くらし・人生」に貢献できる企業を目指すように進化していったという。
その中で新しい価値観として掲げられたビジョンが「ALL for LONGLIFE」だ。
「ALL for LONGLIFE」では、地震などの災害に強い構造や災害後のサポート体制の充実などを通じて、災害から家族の『いのち』を守り続けることと、人生100年時代と言われる現代において、ライフスタイルの変化に応え続け『くらし』を豊かにすることを宣言している。
「『いのち』『くらし』と並んでLONGLIFEを支える3つ目の柱は『人生』です。住宅を建てる時も、建てた後も、引き継ぐときも、さらには売ることになった場合でも、弊社はお客さまの『人生』を生涯にわたって支え続けることを目標にしています」(中村氏)
人生に関わる全ての出来事を支えるサービス「HEBELIAN NET.」
このような「ALL for LONGLIFE」の理念の下、旭化成ホームズでは「HEBELIAN NET.」というサービスを展開している。
「HEBELIAN NET.」は、旭化成ホームズが提供するヘーベルハウスやヘーベルメゾンのオーナー向けの会員制Webサイト。
具体的には、ヘーベルハウス・ヘーベルメゾンオーナー向けに、建物の定期点検の予約・確認ができる機能や、災害危険度情報の確認ができるなど、「へーべリアン=ヘーベルハウス・ヘーベルメゾンのオーナー」が抱えている暮らしや住まいにまつわる困り事を解決してくれる。
前述した住宅に関わるサービス以外にも、毎月の出費を節約する「家計の見直し」、将来の不安解消・介護中のアドバイスなどを行う「オンライン介護相談」など、人生全般にわたるサービスを展開している。
「住まいを中心に、『あらゆる場面でお客さまの役に立ちたい』という想いから、住宅に関わることだけでなく、お客さまの人生に関わる全てのことを、HEBELIAN NET.でサポートしています」(坂井氏)
その中でもとりわけ注力しているのは「オンラインショップ」だという。
販売カテゴリとしては、掃除用品・お手入れ用品、浄水器のカートリッジや換気扇フィルターなどを販売しているほか、ペット用品やHEBEL HAUSオリジナルのアロマ、防災用具といったラインアップも扱っており、ここからも「あらゆる場面で顧客の役に立ちたい」という同社の想いが感じられた。
IoTで宅配サービスの悩みを解決
さらに同社は、「いのち・くらし・人生」をDXで支え続けるデジタルサービスプラットフォームとして、「スマートクローク・ゲートウェイ」の提供を行っている。
旭化成ホームズはコロナ禍の2019年から、AI活用を含むデータサイエンス技術を用い、くらしに関する多角的なサービスを創出するデジタルサービスプラットフォームの構築を目指した活動をスタートしている。
この活動は、建物内に設置されたIoT機器などで収集された、住まい手の建物内部における生活記録を、データ専用の通り道であるゲートウェイを通じて、クラウド上に据えた独自のデジタルサービスプラットフォームに集約。
その上でAIを活用し情報を解析することで、生活の利便性だけでなく、健康や、災害に対する安全性向上、さらに持続可能な社会実現に資する多様なサービスの創出によるDXの実現を目指すというものだ。
「スマートクローク・ゲートウェイ」は、そんな取り組みの第1弾として提供開始されたもので、現代の生活には欠かせない宅配サービスに関する悩みを解決する、室内の鍵付き置き配スペース。
「宅配の受け取りを含めた、宅内収納空間のセキュリティおよび利便性向上」をテーマとして開発されたという。急な外出への対応や置き配で不安な防犯対策、非対面での受け取りなどを実現している。
独自データとLLMの活用で生活実態に合った住宅サービス提供へ
また旭化成ホームズのDX施策は、2025年に入っても加速している。
同社は、IoT機器で収集された生活記録などをクラウド上に集約し、AIで解析することで、生活の利便性、健康、安全性、持続可能性を向上させる多様なサービスを提供することを目的として、生成AI(LLM)と連携したデジタルサービスプラットフォームの構築を発表した。
Preferred Roboticsが開発した人の声や専用アプリの指示で家具を運ぶことが可能な自律移動ロボット「kachaka(カチャカ)」と、同社オリジナルの顧客データを活用したデジタルサービスプラットフォームを介して、家族構成や環境による違いからLLMが生活者に応じた会話や行動を選択することを実現。これにより、住まい手固有の生活実態に合った住宅サービスの実現を目指しているという。
DX・IT推進本部の挑戦は続く
DX・IT推進本部は、「情報システム部」と「働き方改革推進室」を統合する形でできた「業務改革・IT戦略本部」を前身としており、業務改革を通じた生産性向上・顧客価値向上・新たなビジネスモデルの創出を目的に、2023年に組織名が改称された。
中村氏は、DXについて「ITは手段であることを忘れてはならない」とした上で、課題解決とその結果として生まれる事業価値創出こそが追い求めるべきテーマ」という見解を語ってくれた。
今後は、同社の「ALL for LONGLIFE」の理念の下、「顧客の人生に寄り添う」ことを最も重要なミッションとして、ITの活用を進めていくという。
さらに生成AIなども含め、さまざまなサプライチェーンでAIの活用が進んでいくことを視野に入れた上で、挑戦を進めていきたい構えだ。







