NECは8月29日、「自然関連財務情報開示タスクフォース(The Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:TNFD)」の提言に沿った、自然資本に関わる事業リスクや機会をまとめた第3版レポートを発行したことを発表した。
この発表に伴い、NECはTNFD発行を担ったNEC サプライチェーンサステナビリティ経営統括部メンバーからのレクチャー会を実施した。
TNFDレポート 第3版の概要
「TNFD」とは、自然資本への依存と影響、および事業リスクと機会を評価して開示する枠組みを指す。投資家や金融機関が企業を適切に評価できるように、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP-FI)などが2023年9月に策定したものだ。
近年、グローバルにおける生物多様性・自然資本に関する情報開示の要請が急速に強まる一方で、企業には専門的な知識と大きな作業負荷が求められており、NECは持続可能な社会の実現をPurposeに掲げ、この分野に積極的に取り組んでいる。
同社は、2023年7月に国内業界初のTNFDレポートを発行したことを皮切りに、2024年6月にTNFD提言を踏まえて第2版を発行。今回、第3版の発行に至った。
「NECでは、TNFDレポートの発行だけでなく、経団連自然保護協議会や電機・電子4団体 生物多様性WGなど、現在進行中の国際イニシアティブに多数参画しています」(蟹江氏)
同社は、第3版のポイントとして「自然関連リスク評価の深化と拡張」「NECの強みを生かした機会の考え方を整理」の2点を挙げている。
自然関連リスク評価の深化と拡張
- NECグループの事業場およびバリューチェーン上流の約2000拠点に対し、専門機関との連携による水不足・洪水/高潮リスクの定量分析と、生成AIやAgentic AI活用による水関連ローカルリスク分析の実現
- 要注意地域に立地する拠点を訪問し、地域の関係者との対話(ランドスケープアプローチの実践)
- 生成AIを活用し、将来の自然シナリオが事業に与える影響の分析
- バリューチェーンの上流(素材・原材料・部品製造)の階層を整理し、今後の調査方針を検討
NECの強みを生かした機会の考え方を整理
- クライアントゼロとして、本レポート作成過程で開発した生成AIやAgentic AIを活用したサービスや、業務システムへの環境情報の織り込み
- NECのトラスト技術やマテリアルインフォマティクス技術などを活用し、他セクターとのパートナリングによって、環境課題解決の価値につながっている事業共創5テーマを紹介
TNFDレポートにAIを活用
NECは第3版の発行において、同社の環境知見とAIの知見を掛け合わせたAI「AI for TNFD」を開発した。
この専門知識を有する人材の知見を形式知化したAIを「ローカルリスク」「将来の自然シナリオ分析」「顧客・各国法規制の動向×NEC技術の可能性分析」に活用することで、調査評価における92%の工数を削減したほか、リスク評価において8万時間相当の自動化を実現したという。
「今回開発した生成AIやAgentic AIを活用することで、対象拠点の網羅性と分析の深度を大幅に向上させることに成功しました。これにより、人にしかできない『現地ステークホルダーとの対話』『リスク最小化・機会最大化のための経営判断』『社内関係者の巻き込みと実行』といった業務に時間を掛けられるようになりました」(岡野氏)
具体的には、従来の汎用ツールでは把握が難しかった拠点ごとの水インフラに関するローカルリスクを分析し、自動で資料作成するとともに、詳細分析の対象拠点を約2000拠点に拡大。
これにより、事業拠点や関係者と実態に即した対話ができるようになっており、今後はさらに、バリューチェーンの上流とのエンゲージメントを深めていく予定だという。
今後NECは、サプライチェーンリスクの深堀調査を2026年からの次期環境中期計画「エコ・アクションプラン」に組み込み、推進していく構え。
また、今回開発した生成AIの知見はサステナビリティ開示基準(SSBJ)対応や社外調査回答などにも応用していく予定で、サステナビリティ分野にて、同様な課題に直面する企業への貢献を目指す。


