NECは8月21日、AI技術を活用し、障害物が多く経路生成が困難な環境下でもロボットの安全で効率的な自律走行を実現する制御技術を開発したことを発表した。
発表に併せて、メディア向けに説明会が開催され、NECビジュアルインテリジェンス研究所 所長の宮野博義氏、主任研究員の安田真也氏が同技術の詳細を説明した。
「リアルタイムで最適経路を抽出する独自AI」が最大の特徴
近年、労働力減少や現場作業の生産性向上へのニーズから、大型の物流倉庫や工場ではロボットの導入による自動化が進展している。
「自動化の発展している一方で、既存の中小規模の物流倉庫や小売店舗では、ロボット専用区画の未整備や通路の狭さ、通路付近に荷物を仮置きする運用の常態化、陳列棚や商品が障害物となっていることから、移動経路の確保が難しいため、ロボットの導入が進まないという課題がありました」(宮野氏)
加えて、ロボット制御技術においては、これまで経路生成にかかる時間と生成される経路の質はトレードオフの関係にあり、最適な経路生成に時間を要していたため、障害物が多い環境下では実用的ではなかったという。
これらの課題に対してNECは、「障害物が多い環境下でもロボットが安全で効率的な自律走行を実現する制御技術」を開発した。
開発された技術は、複数のAIの知見を学習させたNEC独自のAIを活用することで、安全性を考慮した最適な移動経路をリアルタイムで生成できるもの。最大の特徴は「リアルタイムで最適経路を抽出する独自AI」が用いられているという点だ。
「より適切な経路を生成するには複数のAIを組み合わせる手法もありますが、AIの数が増加するほど処理時間を要し、リアルタイム制御が難しくなる傾向があります。今回NECは、複数のAIがそれぞれ生成する経路をまとめて学習し、一度に複数の経路を生成できる独自AIを開発しました。これにより、障害物が不規則に置かれた環境下でも、安全で効率の良い最適経路を生成し、リアルタイムでのロボット制御を実現します」(安田氏)
NECの手法を活用することで、単一のAIで多数の予測を一度に生成できるようになったため、処理速度と経路の質を両立させることに成功した。
同技術の活用により、ロボットの専用区画の整備や移動経路の確保が難しく、スペースに制限がある中小規模の物流倉庫や工場、小売店舗などでのロボット導入が可能となるのだという。
社内実証でロボットの移動時間を50%短縮
さらにNECは、今回の発表に先駆けて、社内実証として同技術を利用したロボットで、長さ50mのテストコースに障害物をランダムに配置したシミュレーションを行った。
その結果、走破するのにかかった時間が従来手法と比較して最大で50%短縮できることを確認したという。
これにより、安全性を確保しつつ、ロボットの移動効率を約2倍程度向上させることができ、現場の作業効率化に貢献。NECは人手不足の解消や生産性向上に寄与することに期待を寄せている。
応用先として、作業中の作業者が障害物となるケースや通路上に一時的に荷物が置かれて障害物となるケースが混在している「倉庫内搬送」、研究開発中の小売店舗向け巡回ロボットの稼働時に、顧客や品出し中の従業が障害物となるケースが考えられる「小売店舗」での導入を検討するという。





