日本NPOセンターはこのほど、NPOをはじめ非営利団体のIT活用を支援する取り組み「NPTechイニシアティブ」の一環として、フォーラム「AI時代におけるNPOの未来」を開催した。NPTechとはNonProfit Technologyの略で、NPO職員のデジタルスキル向上に特化した研修プログラムを開発しており、2023年9月よりスキルアップ支援を目的とする研修を開始している。

本稿ではイベントの中から、「非営利団体のIT活用のための実態調査2025年」の結果と、生成AIを含むIT活用に対する期待について紹介する。調査は日本NPOセンターがデジタル支援などを通じて関係を構築した約1000団体に対し依頼し、うち320団体から回答が得られた。

非営利団体でも進むIT活用、最多の用途は「広報の強化」

事業活動におけるIT活用を調査したところ、「インターネットを通じた広報の強化」(77.8%)や「オンラインでのセミナーや研修・体験、相談対応など」(75.0%)、「団体ウェブサイトの改善・機能強化」(69.1%)など、多くの団体でITが活用されていることが明らかになった。

事業活動で将来的にITを活用したい業務は、「団体ウェブサイトの改善・機能強化」(52.8%)が最多で、「インターネットを通じた広報の強化」(50.0%)、「利用者データベース(顧客管理システム)の開発・導入」(36.6%)が続いた。

また、組織運営や管理業務におけるIT活用では、「データ・書類の保存・共有」(89.7%)、「会計」(71.9%)、「寄付者・会員管理」(54.1%)、「テレワーク」(51.9%)などに使っている団体が多い結果に。すでに非営利団体でもITの利活用は進み、欠かせないものとなっている。

組織運営および管理業務での将来のIT活用については、「業務の可視化」(48.4%)が最多の回答。続いて、「情報セキュリティ対策」(43.1%)、「データ・書類の保存・共有」(37.2%)、「電子契約」(36.9%)が挙げられた。

  • 多くの団体でIT活用が進んでいる(資料:日本NPOセンター)

    多くの団体でIT活用が進んでいる(資料:日本NPOセンター)

約9割の団体がIT人材不足を実感

一方で、IT人材の人数については48.1%が「大幅に不足している」、39.7%が「やや不足している」と回答し、実に9割近くの団体がIT人材不足を感じていた。同様に、IT人材のスキル・知識については44.4%が「大幅に不足している」、46.3%が「やや不足している」と回答した。

  • 9割の団体がIT人材やITスキルの不足を実感している(資料:日本NPOセンター)

    9割の団体がIT人材やITスキルの不足を実感している(資料:日本NPOセンター)

IT人材の「人数」または「スキル・知識」のいずれかで、「やや不足している」もしくは「大幅に不足している」を選択した団体は298団体。この団体に対し必要なIT人材を確保できない理由を聞くと、「原資や予算の不足」との回答が71.5%で最も多かった。「事業活動や組織運営でのIT活用に関する情報や知識が少ない」が46.0%、「IT人材について相談先がない」が18.8%だった。

現在のIT担当者の役割を調査すると、「パソコンやソフト・サービスなどITツールの調達・導入や運用・保守」が52.2%で最多。その他に、「Webサイト、ブログ、SNSの設計・開発や運用・管理」(51.3%)、「パソコンの使い方などのヘルプデスク」(35.0%)などの担当者が多いという。

今後IT人材に期待したい、または必要なIT人材を確保できる場合に期待したいIT担当の役割については、「Webサイト、ブログ、SNSの設計・開発や運用・管理」が54.4%で最も多かった。「組織運営や事業の課題解決のためのIT活用の企画・提案」(49.7%)、「情報セキュリティ対策の運用・管理」(45.6%)が続いた。

生成AIの導入は約半数、業務効率化に期待

生成AIの利用について、7.5%が「業務に本格的に取り入れている」、42.8%が「試しで利用している」と回答し、すえに約半数の団体が利用を開始していることが明らかとなった。「今後、利用を検討している」は12.8%、「これから情報収集をする予定」は16.3%だ。

また、今後の利用については30.0%が「大いに活用したい」、46.9%が「活用したい」と回答。具体的に期待する効果を聞くと、「業務効率化」が82.7%で最も多く、61.4%が「新たなアイデアの創出」、42.5%が「人材不足解消」と回答した。

  • 生成AIの活用に対する期待は高いようだ(資料:日本NPOセンター)

    生成AIの活用に対する期待は高いようだ(資料:日本NPOセンター)

その一方で、生成AIの利用における課題や懸念を聞いたところ、「データの正確性」が65.6%と最も多く、続いて「技術的な理解」が52.8%、「ノウハウの不足」が52.5%、「利用するコスト」が43.8%だった。

  • 生成AIの活用における懸念(資料:日本NPOセンター)

    生成AIの活用における懸念(資料:日本NPOセンター)

日本NPOセンターで事務局次長を務める上田英司氏は、これらの結果を受けて、「NPTechイニシアティブではIT企業の支援の下で、AI活用の方法だけでなくAIのリスクやガイドライン制定についても紹介してきた。今回の調査結果では、セキュリティの懸念や生成AIのデータ保存に対する不安は、一般企業よりも低い結果となった印象がある。今年度以降はこの領域の研修を強化していく」と、今後の活動方針を紹介した。

  • 日本NPOセンター 事務局次長 上田英司氏

    日本NPOセンター 事務局次長 上田英司氏