2025年4月13日、大阪湾に浮かぶ人工島・夢洲を舞台に、大阪・関西万博が開幕した。数多くのパビリオンが立ち並ぶ“お祭り会場”では、「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマのもと、世界各国の人々が描いたさまざまな未来が集結。連日の酷暑が続く中でも、大きな盛り上がりを見せ続けている。
そんな大阪・関西万博のシンボルが、会場全体をつなぐように建設された「大屋根リング」だ。日本の伝統的な工法で創り上げられた全周約2kmの巨大木造建築は、“多様でありながら、ひとつ”という会場デザインの理念を象徴するように、万博に訪れた人々を見守っている。
大きな大きな木造の輪は、太陽が沈み暗くなり始めると、柔らかな明かりに照らされる。よく眺めるとその光は繊細に変化していて、まるで人が呼吸をするかのようなリズムで、会場全体をつなぐ通路としての建築物に表情を与えている。
そんな全周2kmの巨大リングを照らし出すのは、膨大な数のライト。その明滅や明るさは、パナソニック エレクトリックワークス(パナソニックEW)が提供する街演出クラウド「YOI-en」によって一括で制御されているという。照明システムに限らず、音響や暑さ対策のミストまでも集中管理しているという同クラウドシステム。その強みはどこにあるのだろうか。
“良い縁”を結ぶ街演出クラウド「YOI-en」
パナソニックEWが提供する街演出クラウドのYOI-enは、空間演出に不可欠な照明をインターネットに接続し遠隔で制御することで、新たな体験を創出するクラウドサービス。“宵”(夜のはじめ)と“縁”(つながり)を組み合わせ、“良い縁”に結び付くとの願いから名付けられた同サービスは、一括で多数の照明を管理し、リアルタイムでの制御も行えることから、何度でも訪れたくなる光景づくりに貢献するソリューションとして期待される。新たな景観を創出し継続的にアップデートを加えることで、地域活性化や観光地への滞在時間長期化など、街の資源を活用した持続的な賑わいにつながるとする。
そんなYOI-enは、時間帯やシーズンに合わせたライトアップの変化が可能な点に加え、街に点在する複数拠点の連動などクラウド活用による拡張性の高さ、そして繊細な光表現による意匠性の向上などが強みとのこと。またAPI連携を通じてスマートフォンなどでの操作も可能なため、現地に設置したQRコードからアクセスすることで、ユーザーに合わせたカラーライトアップに変化させるなど、特別感のある体験型コンテンツも可能。すでに国内では多くの街を照らし出し事例を積み上げている。
2023年にさいたま市 大宮盆栽美術館にて行われたYOI-enでのライトアップ映像(出所:YouTubeチャンネル「Panasonic ArchiBiz」)
全長約2km・約1600台の照明を一括で制御
そして現在開催中の大阪・関西万博では、シンボルである大屋根リングの2階通路「スカイウォーク」の全周に設置された照明の遠隔制御に活用されている。来場者の足元を照らすため1.2m間隔で設置されたパナソニック製のフルカラースポットライト「DMXスポットライト」の総数は、なんと約1600台。万博会場を1周する距離を照らすライトの数は膨大だが、それらはYOI-enを介してそれぞれ1台ごとに色温度・カラー・明るさが制御されているという。
実際に夜のスカイウォークに足を運ぶと、数多くのライトが足元に並んでいるのだが、よく見るとその明るさはゆったりとした周期で繰り返し変化している。パナソニックEW ソリューションエンジニアリング本部 ソリューション事業統括部 パブリックエンターテインメントカテゴリー 商品・サービス企画部 街演出サービス企画課の上野山浩志氏によれば、これはYOI-enによる「呼吸」の演出。通常時には、来場者が落ち着きを感じるリズムを明るさで生み出し、ただ明るさを与えるだけでなく“体験”に繋げている。さらに毎時0分および30分には、リアルタイム一括制御によって季節ごとの照明演出が行われ、約2kmにわたる光の道がさまざまに表情を変えながら来場者を楽しませている。
大屋根リングに設置されているフルカラースポットライトは、コントローラおよびゲートウェイを介してYOI-enに接続され、クラウドでの制御を実行。またリングにはカメラも多数設置されていて、インターネットにより「人検知システム」にも接続しているといい、それをさらにYOI-enとAPI連携させることで、来場者の往来に合わせた明るさの変化などさらに高度な演出を可能にしている。さらに、遠隔での制御により機器の管理や演出スケジュールの変更にも柔軟に対応できるため、運用の効率化にも貢献しているといえるだろう。
パナソニックパビリオン「ノモの国」でも活用
大屋根リングのライトアップに活用されているYOI-enだが、その活躍は他の場所でも見られる。それがパナソニックグループが出展するパビリオン「ノモの国」だ。手にした結晶をさまざまな場所にかざすことで、自分の新たな可能性を探るという独創的な体験ができる同パビリオン。その内容は別の機会に紹介することにして、今回はYOI-enが活用されている“建物の装い”にフォーカスしたい。
数多くの曲線が自由な形を成すノモの国の外観は、「循環」を表現したものだという。昼間はパステルカラーのオーガンジーが風になびく様子が印象的なのだが、日が沈むとパビリオンの雰囲気は一変。はためくオーガンジーは場所によってさまざまな風合いに照らし出され、暗がりの中に幻想的な姿が浮かび上がる。
そんなノモの国の外装照明でも、YOI-enが強みを発揮。75台設置されたLEDフルカラー投光器などを細かく制御することで、3段構成となったパビリオン外装の全体を均一に照射し、ダイナミックかつ繊細なライトアップが可能になっているという。また同パビリオンでは、大林組が提供するスマートビルプラットフォーム「WELCS place」とも連携。IoTセンサで取得した気温・湿度・雨量などのデータを両プラットフォームを介して通信し、照明をはじめ、スピーカーや暑さ対策用のミスト噴霧器などを自動制御しているとする。
さらにYOI-enの活用により、1つのSTEAM教育プログラムが実現された。この取り組みでは、小学生向けのプログラミング学習におけるワークショップを通じて、子どもたちは光の演出データを作成。シミュレーションなどを経て出力した後、YOI-enシステムに入力することで、実際に作った演出をリアル空間に再現し、ノモの国を照らすことができるのだという。上野山氏によれば、演出データを作成した子どもたち自身が訪れた際に、万博会場の一角を実際に照らしている様子を見ることも可能だとした。
夜に輝くパナソニックEWの照明制御技術
万博会場全体をつなぐ大屋根リング、そして多くの来場者を迎えているパナソニックパビリオンのノモの国。夜になってもそれらの姿が照らされ新たな雰囲気を感じさせる裏側では、パナソニックEWのYOI-enを通じた照明制御が活躍していた。
また今回取り上げたほかにも、YOI-enでのリアルタイム制御は行っていないものの、大屋根リングを下から照らし上げつつも天空への光漏れを抑えた照明器具や、夜間でも安全な歩行に必要な明かりをともし続けるライン照明など、パナソニックEWの照明技術が数多く活用されている。
万博の開催期間中、しかも日が暮れてからしか見られない幻想的な光の演出を、一目見に行ってみてはいかがだろうか。











