日本IBMは8月4日、5月の年次イベント「Think 2025」で発表したハイブリッド統合連携基盤「IBM webMethods Hybrid Integration」について、メディア向けに勉強会を開いた。

ここ数年、IBMではオートメーションプラットフォームに注力している。AIの普及で技術活用が進む一方でツールの乱立やITの複雑度の増大が進む中で、AI構築・運用の効率化で投資対効果を高め、ビジネスへの貢献を実現していくとともに、AIで成功するためには「AIを支える構築・運用の自動化と最適化」を同時並行で進める必要がある。

日本IBM テクノロジー事業本部 オートメーション・プラットフォーム事業部 事業部長 理事の上野亜紀子氏は「お客さまが構築するAIアプリケーションや、そのためのプラットフォーム、AIのさまざまな技術が連携する既存のシステムまでを含めて、AIで自動化することでITを戦略的に活用し、企業の競争力を高めて自動化を企業におけるITの武器にしてもらえるような機能を製品そのものに組み込み、提供することがIBMオートメーションのビジョン」と語る。

  • 日本IBM テクノロジー事業本部 オートメーション・プラットフォーム事業部 事業部長 理事の上野亜紀子氏

    日本IBM テクノロジー事業本部 オートメーション・プラットフォーム事業部 事業部長 理事の上野亜紀子氏

「IBM webMethods Hybrid Integration」とは

webMethods Hybrid Integrationは、IBMのオートメーション(自動化)製品の1つとして提供。同社のオートメーション製品は大きく「Invest(投資)」「Build(ビルド)」「Deploy(デプロイ)」「Manage(管理)」の4つの分野に分かれており、同サービスはビルドの部分を支援。

続いて、日本IBM テクノロジー事業本部 オートメーション・プラットフォーム事業部 シニア・オートメーション・テクニカル・スペシャリストの恩田洋仁氏がwebMethods Hybrid Integrationを解説した。

恩田氏は同サービスを「iPaaS(Integration Platform as a Service)と呼ばれる製品群に位置付けされる」と述べている。ただ、一般的なiPaaSはマネージドサービスとして提供され、さまざなまREST APIやクラウドサービスを柔軟に迅速につなぎ、新しいビジネス価値を創出できる技術として注目されているが課題があるという。iPaaSの特徴でもあるREST APIが前提のため、用意していない企業は新たにREST APIが必要なことに加え、ファイル連携やメッセージングなど局所的なユースケースでの採用が多いとのことだ。

  • 日本IBM テクノロジー事業本部 オートメーション・プラットフォーム事業部 シニア・オートメーション・テクニカル・スペシャリストの恩田洋仁氏

    日本IBM テクノロジー事業本部 オートメーション・プラットフォーム事業部 シニア・オートメーション・テクニカル・スペシャリストの恩田洋仁氏

同氏は「従来型のiPaaSだけですべてを行おうとすると、本来やりたかった企業全体の整備された統合は実現できず、プロジェクト・部門単位でツールだけが増えていく状況が起きてしまう。お客さまの環境はオンプレミス、複数のクラウドが混在する環境のため、統合する技術も当然ハイブリッドになる」と指摘。

多くの企業における場当たり的な対処の結果として、複数のクラウド環境が混在しているものの、各環境が孤立したり、ツールばかりが増えて技術的負債を蓄積したりするなど、ITコストが増加して実行力を伴わないITアーキテクチャになってしまうという。

ハイブリッドな統合を単一のコントロールプレーンの画面で統一的に管理

こうした状況に対し、IBMでは目指すべき姿として「Hybrid by Design(設計段階からのハイブリッド)」を重視。これはハイブリッド環境であることを念頭に意図的に設計するということだ。

  • IBMが考える「Hybrid by Design(設計段階からのハイブリッド)」の概要

    IBMが考える「Hybrid by Design(設計段階からのハイブリッド)」の概要

例えばさまざまなアプリケーションを適した環境に配置し、環境間の相互運用に加え、ポータビリティ性を備えることでどこにでも配置できる状況が必要だという。また、さまざまなツールを統合的に管理していくサービスが必要なことから、webMethods Hybrid Integrationをリリース。

その機能について恩田氏は「REST APIにとどまらず基幹系システムの連携やファイル連携、BtoB連携、Kafkaを中心としたリアルタイムイベントなど複数の統合ユースケースにハイブリッドに対応しているほか、ハイブリッド環境にも対応している。オンプレミスとさまざまなクラウド同士をつなぐことができる機能を持つ。ハイブリッドな統合を単一のコントロールプレーンの画面で統一的に管理できる」と述べている。

  • 「IBM webMethods Hybrid Integration」の概要

    「IBM webMethods Hybrid Integration」の概要

環境管理やユーザー管理、ランタイムの統合、エンドツーエンドモニタリング、メータリング、接続管理などを単一画面の「ハイブリッド・コントロール・プレーン」からオンプレミス、クラウドのシステム統合機能を一元管理できる。さまざまな環境への統合やランタイム、プロビジョニング、運用管理、モニタリング、メータリングといった横ぐしの機能を提供する。

  • 「ハイブリッド・コントロール・プレーン」の概要

    「ハイブリッド・コントロール・プレーン」の概要

アプリケーション統合やAPI管理、Kafkaを中心としたイベント駆動処理、パートナー取引の最適化、信頼性の高いファイル転送など、IBMの統合技術から必要な機能を必要な分だけを選択し、SaaS(Software as a Service)またはソフトウェアで提供。

  • 「IBM webMethods Hybrid Integration」で提供される統合機能

    「IBM webMethods Hybrid Integration」で提供される統合機能

この中でもアプリケーション統合機能はAPIとクラウドサービスを簡易かつ迅速に統合に加え、エッジランタイムで任意の環境のコンテナ基盤上でiPaaSで開発したフローの稼働やオンプレミスのシステムとの統合を可能としている。また、メインフレームやOS「IBM i」などとの統合は、Enterprise Service Bus(ESB)の機能で統合し、エッジランタイムとESB、iPaaSの通信はインターネット経由のセキュアな双方向通信で行う。

さらに、AIの活用では例えばマーケティングで新しいキャンペーンを打ち出す際に、販売システム、CRMシステムと対応しながら一定期間の値引きとポイント2倍ということをwebMethods Hybrid Integrationに自然言語で依頼する。すると、AIがステップを明示してフローを作成し、販売システムと統合して、次にCRMシステムとの統合に取り掛かるという。

これはESBに「IBM watsonx Code Assistant」が統合されており、自然言語の指示でJavaやESQLのコード生成や生成されたコードの単体テストの生成、既存コードを自然言語で説明、実データからスキーマ定義の作成など、基幹システム統合の迅速化と学習コストを低減。恩田氏は「AIと人間が適切に対話しながらAIの支援を受けて業務処理を効率化することができる」と話す。

  • ESBのAIアシスタント機能の概要

    ESBのAIアシスタント機能の概要

API管理・イベント駆動型処理で加速する業務変革

一方、API管理も重要だという。既存のITをAPI化あるいは新しいアプリケーションやサービスであればAPI化されていることから、開発者向けにカタログ管理・公開し、セキュアに制御しつつセルフサービスでも使える基盤となっている。

  • API管理の概要

    API管理の概要

制御は単一画面で行うが、API管理のためのゲートウェイは分散配置することが可能となっており、IBM製品に加え、AWS GatewayやAzure API Management Serviceをはじめ、複数のゲートウェイで地理的に分散しているものを1箇所に統合管理することができるとのこと。加えて、APIゲートウェイの機能はAIの機能をAPIと同様にゲートウェイで一元管理し、カタログ化して共有することを可能としている。

また、AIエージェントが外部システムと対話するためのMCP(Model Context Protocol)サーバ機能を既存のREST API定義から生成し、生成AIがAPI化された業務と対話が可能になっている。

そのほか、イベント駆動型処理としてREST APIと同様にKafkaイベントを制御・利用の最大を実現する基盤を提供。

  • イベント駆動型処理の概要

    イベント駆動型処理の概要

恩田氏は「さまざまな企業がKafkaなどによるリアルタイムイベントの活用を重視している。IBM側ではイベント処理、Kafkaサーバ、イベントカタログ、イベントゲートウェイで構成するソリューションを提供し、アプリ開発者はイベントの検索や利用申請、使用、サンプルコードの入手ができる。これにより、APIとイベントを組み合わせたコンポーザブルなITが俊敏な価値創出を実現することができる」と述べていた。