富士通は7月30日、2025年度第1四半期の決算を発表し説明会を開いた。連結合計での売上収益は為替影響や欧州におけるハードウェアソリューションの計上基準を変更した影響などから、前年同期比1.2%減の7498億円。調整後営業利益は各セグメントで増益となり、同185億円(112%)増の351億円、四半期利益は新光電気工業の売却益を計上したことで同1548億円(918%)増の1717億円と過去最高益を更新した。

  • 富士通 2025年度第1四半期 連結PL

    富士通 2025年度第1四半期 連結PL

国内のサービスソリューションが伸長し増収増益

同社が成長ドライバーと位置付けるサービスソリューションは、前年同期比130億円(2.6%)増の5146億円で着地し、引き続き成長を示した。特に国内でDX(デジタルトランスフォーメーション)やモダナイゼーションの商談が伸長し、前年から6%の増収となった。

調整後営業利益は478億円と、前年から128億円の増益。調整後営業利益率は9.3%。国内売上の伸長によるグロスマージンの増収に加え、採算性の改善が進捗し過去最高益を記録。開発プロセスの標準化や自動化など、生産性の改善が効果を示したという。

  • サービスソリューションは過去最高益を記録した

    サービスソリューションは過去最高益を記録した

国内での受注状況を領域ごとに見ると、エンタープライズ向けビジネスは前年までの複数年商談の影響があり前年比97%だった。業種別では特に流通向けのソリューション売上が好調だったという。

ファイナンス向けでは金融機関向けの大型商談を獲得し、同119%と伸長した。パブリック&ヘルスケアは前年の官公庁向け大型案件の反動で同96%と低調な推移だ。

代表取締役副社長 CFOの磯部武司氏は「第2四半期以降の今年度に受注獲得を予定している商談パイプラインの規模は、前年比で115%を上回る水準に拡大している。デリバリーリソースの確保に多少の心配はあるが、しっかり対処しながら着実な受注拡大につなげる」と説明した。

  • 富士通 代表取締役副社長 CFO 磯部武司氏

    富士通 代表取締役副社長 CFO 磯部武司氏

第1四半期の売上実績は3898億円、受注残高は8830億円で、合わせると1兆2638億円。2025年度の売上計画1兆8000億円に対し、カバー率は70%だ。第2四半期以降、単純計算で5361億円の売上が必要となる。

Fujitsu Uvance・モダナイゼーションが成長をけん引

富士通の事業成長の要となるFujitsu Uvanceは、受注高が前年同期比184億円(17%)増の1276億円、売上収益は同502億円(52%)増の1467億円。その内訳は、Vertical領域が69%増、Horizontal領域が44%増だ。

サービスソリューション全体に占めるFujitsu Uvanceの売上構成比は、前年同期の19%に対し、今期は29%まで拡大した。なお、同社は2025年度の売上構成比目標を30%(7000億円)と定めている。

  • Fujitsu Uvanceの概況

    Fujitsu Uvanceの概況

モダナイゼーション事業は受注額が低下したものの、売上収益は同225億円(44%)増の738億円。なお、同社は中期経営計画における2025年度の年間売上目標を300億円上方修正し、3300億円としている。モダナイゼーションの需要拡大は継続しており、次年度以降も引き続き増収傾向が続く見込みだという。

  • モダナイゼーションの概況

    モダナイゼーションの概況

富士通は採算性改善に向けた取り組みとして、AIの活用を進めている。議事録作成といった日々の業務効率化だけでなく、モダナイゼーション事業における既存アプリケーションの構造解析、SI業務におけるアプリケーション設計やレビューの支援、コードの自動生成、テストデータの生成など、その用途は多岐にわたる。

「デリバリー強化における生成AI活用は、単なるリソース確保や作業効率化にとどまらない。その本質はお客様へのサービス提供のスピードアップと、サービス品質の向上。まだAI活用は限定的であり緒に就いたばかり」(磯部氏)

ハードウェアソリューションは減収もコスト改善で増益

ハードウェアソリューションは欧州での為替変動や一部の売上計上基準を見直した影響もあり、前年同期比264億円(11.6%)減の2021億円。しかし調整後営業利益はコスト効率化などの影響により、同50億円増の13億円と増益だった。

減収の要因は主に欧州におけるシステムプロダクト。サーバ事業の他社ライセンス販売を総額売上から純額売上へと基準変更したことや、為替の影響で減収となったという。一方で、間接コストを効率化し利益を改善したことで増益となった。

ネットワークプロダクトの売上収益は、同13億円(4.0%)増となる349億円。高採算製品の売上増とコスト改善が増益の要因だ。

  • ハードウェアソリューションの概況

    ハードウェアソリューションの概況