世界が混沌とする中、企業の役割とは? 答える人 ファーストリテイリング会長兼社長・柳井 正

「共存共栄」以外に 生きる道はない

(「財界」8月6日号インタビューから)

 ─ 今はトランプ米政権の関税政策などで世界が混沌としているわけですが、企業はつなぐ機能を持っていますね。

 柳井 つなぐ機能もありますし、グローバル化は止められない。元の世界にはもう戻れないんですよ。

 今の最先端産業は情報通信産業や金融産業ですよね。こうした産業は完全にグローバル化していて、社会的にも例えば、どこかで起きた事件でも、隣で起きた事件かのように毎日報道されていて、世界の出来事も近くのことのように感じられる。それくらい世界というのはつながっているわけで、一国だけで生きるというのは、ありえないですよね。

 今は世の中自体が、新しい技術や新しい産業革命を起こしていて、それが元に戻ることは、100%あり得ない。一時の揺り戻しはあるかもしれませんが、それがずっと続くとは思えないです。

 ─ 紆余曲折を経ながら、世界は進化してきていると。

 柳井 ええ。いろいろな意味で、自分たちが進化することによってお客様に利益を与え、われわれの利益にもなると。そういう事業を行っていくことが一番ではないかと思います。

 ─ これは全産業に共通した思いですね。

 柳井 共通できると思いますし、それが共通できない世の中のほうがおかしいです。

 完全に今は世界がグローバルにつながっていて、世界の中の一国に日本がいるわけです。だから、日米関係のことだけを考えても、世界は変わらない。米国も、日本も世界の一部ですから、世界全体のことを考えてどう行動するかということです。

 ─ 本当ですね。米中対立とは言っても、米国だって中国が必要だし、中国にとっても米国は必要なわけですね。

 柳井 ええ。よく米国と中国を見ていればお互いに交流しています。

 イデオロギーがどうこう言うよりも、その人たちがお互い安心・安全に、経済的に豊かな国にならないといけないということだと思いますし、そこで妙に対立して、お互いの関係を絶つということになれば、かえってお互いおかしくなるのではないでしょうか。

 ─ ここは経営者として、冷静に見ておく必要があると。

 柳井 全部がそうですよ。米国と中国との関係でも、国民自体はどんどん交流していると思いますし、お互いに交流して、その中で得意なものを売っていくということですよね。

 お互いに利益を出し、共存共栄を図る。そういう思想以外に生き残る道はないと思います。

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