北海道大学、岩見沢市、NTT東日本、NTTドコモは7月25日、2019年に締結した産官学連携協定に基づき「心ゆたかな暮らし」(Well-Being)と「持続可能な環境・社会・経済」(Sustainability)の実現に向けた新たな取り組みを開始することを発表した。

取り組み開始の背景

日本の農業は就農人口の減少や高齢化、後継者不足といった構造的課題により、深刻な労働力不足に直面している。さらに、気候変動の影響による作物の品質低下や収穫量の減少など、農業の持続に対する懸念が高まっている。

こうした状況の中、農業を持続可能な産業として維持・発展させるためには、これらの課題を早期に克服し、技術革新を通じた生産性の向上・品質確保が不可欠となる。「食料・農業・農村基本法」(2024年5月29日改正、同年6月5日施行)では、デジタル技術を活用した「スマート農業」の推進が明記されるなど、農業の高度化とともに地域社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)が期待されている。

北海道大学、岩見沢市、NTT東日本、NTTドコモの4者は2019年6月28日に産官学連携協定を締結し、最先端の農業ロボット技術と情報通信技術の活用による、スマート農業およびサステナブルなスマートアグリシティの実現に向けた検討を続けてきた。

この活動を通じ、スマート農業およびスマートシティを支える通信環境に関する知見や技術的なノウハウが蓄積された一方、データ駆動型農業の進歩に伴い通信環境の整備やデータの利活用手法を検討する必要があることも明らかになった。これに対し4者は、新たな課題の整理と検討に継続して取り組むことを決めた。

目指す姿

4者はこれまでの取り組みにより、スマート農業およびスマートシティを支える進化したデータ駆動型農業の実現に向け、通信環境の整備やデータの利活用手法について検討を開始する。

具体的には、多様なデータの収集と蓄積を行い、多方面のプレイヤーが当該データの分析やシミュレーションが可能な環境を整備することで、農業分野をはじめ地域住民生活の質の向上や地域経済の活性化につなげ、「どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」の実現を目指す。

取り組みの概要

4者は協定を継続し、データ駆動型農業の実現に向けて新たに3つのテーマに取り組む。1つ目はスマート農業の高度化に向けたデータ利活用の検討。圃場から収集されたさまざまなデータの蓄積と分析の手法を検討し、安心・安全かつ効率的な自動運転農機を活用した農作業の最適化を目指す。防災や社会インフラとの連携も視野に入れる。

2つ目はデータ駆動型農業の実現に向けた通信インフラ整備モデルの検討。通信環境が十分に享受できない地域の事情も考慮し、ネットワーク環境の整備およびデータ収集方法や多目的利用方法について確認する。

3つ目は地域社会DXに向けた課題解決と取り組みの検討。地域課題の抽出とデジタル技術を活用した対応策を検討し、地域住民の生活の質向上や地域経済の活性化を目指して持続可能な地方創生とスマートシティのモデル作りを進める。