【株価はどう動く?】 株価の行方を左右する参院選後の政権枠組み、トランプ関税を市場は織り込んだか

 4万円の壁を巡る3つの要因は解消へ

 今後の日米の株式市場を展望すると、短期で日本株は4万円の壁をなかなか突破できない3つの要因がありました。その1つが「トランプ関税」です。一時は30%、35%もあり得ると言われていたものが、結果的に当初見通しとほぼ同水準の25%が提示されました。

 もう1つは、日本銀行の利上げが年内にもあるかもしれないという見通し、最後に参議院議員選挙で自民党が大敗するのではないかという予想という3つの株安要因がありました。

 しかし、米トランプ大統領が日本に相互関税25%を課すと明らかにした直後の7月8日、日経平均はむしろ上昇しました。また、日銀の利上げがあるかという見方の中で、しばらく円高が続いていましたが、足元で円安に動いています。

 そして参院選については、前回も指摘したように、おそらく自民党が負けても株価は下がらないと見ています。大敗したとしても織り込み済みで、むしろその後にできる新政権に対する期待の方が大きい状況です。

 どんな政権の枠組みになるかを市場は見ているわけですが、その中でも自民党と立憲民主党は、どちらも増税派なので、よい組み合わせとは言えません。

 それよりは国民民主党や参政党、日本保守党といった保守系との組み合わせが望ましいと言えますが、いずれにせよ株式市場としては石破政権が終わることを望んでいます。

 参院選で参政党や日本保守党などの保守系の政党が伸長しているのは、自民党がかつての旧社会党のように左傾化してしまい、受け皿とならなくなったからです。森山裕幹事長の「消費税減税には絶対反対。消費税を守り抜く」というような発言は、その典型的な例です。

 次に、株価の上値を押さえていたトランプ関税、25%は相場に織り込まれました。日銀の利上げは年内に行われるかもしれませんが極めて慎重です。参院選についても織り込み済みです。なかなか突破できなかった4万円の壁を巡る3つの要因がほぼ解消されつつあるのです。

 日経平均は6月27日、6月30日と4万円の大台を久方ぶりに回復して、4万円の壁の攻防戦になっています。

 この壁を完全に突破するためには、1つは前述のように、参院選後の新たな政権の枠組みが、期待が持てるような形になることです。そうすれば株価は4万円から4万5000円というゾーンに入っていきます。低支持率の石破政権が継続するようなら、株価は4万円の壁を前にモタモタするでしょう。

 一方、日本の株式市場に大きな影響を与える米国株式市場ですが、前回指摘したように24年12月と25年1月に4万5000ドルでダブルトップを付けた後、4万3000ドル台まで下落したわけですが、その後回復して、再び4万5000ドルに近づいてきています。

 今後、正式に相互関税が発令されるのが8月1日ですから、ここで再びショックがあるかもしれませんが、トランプ関税ショックは日米の株式市場ともに織り込み済みになりつつあると見ています(7月22日、米トランプ大統領が相互関税15%で日本と合意したと表明)。

 その後ですが、米国では大幅減税が打ち出されましたから、当面は景気が良くなると見ています。日米の主要メディアはこの政策について、大企業や富裕層に恩恵があって、労働者階級には厳しいと報じています。しかし、いずれの社会もまず大企業、富裕層が潤わないと景気は良くなりません。

 大企業の業績が好調で、富裕層が税制面で優遇されると、当然投資や消費が拡大します。一方、日々の生活が苦しい人々の税金を多少安くしても、景気は良くなりません。生活必需品に消費されるだけですから。

 その意味で、今回のトランプ減税はいわゆる既存エリートであるメディアからは不評ですが、短期的には米国の景気をよくする可能性があります。

 ただし、長期的には、テスラのイーロン・マスク氏が批判しているように、米国が抱える膨大な債務をさらに増大させます。ただ、トランプ大統領は、そのことは百も承知だと思います。

 債務削減、DOGE(米政府効率化省)の仕事も大事ですが、トランプ大統領の頭の中には、それよりも米国の景気をよくして、米国民の懐が温かくなるような政策を実行しなければいけないという考えがあるのだと思います。

 この大幅減税で米国の株価、資産価値が上がり、富める者が一層富む形になり、さらに消費、投資をするようになり、米国の景気浮揚につながります。来年11月の中間選挙に向けて追い風となります。ただ、これは米国社会の分断が今後も続くということになります。

 この分断社会は世界に広がっています。日本を含め、世界中がインフレ傾向を強めており、これが拡大すると資産を持てる者と持たざる者の格差が広がります。日本も同様ですが、欧米ほどではないでしょう。それは日本の税金が世界で最も高いからです。

 インフレによって各国で資産価値が上がり、経済規模が大きくなるというのが長期の流れですから、目先、トランプショックで日米の株価が下がったところは、絶好の買い場になるというのが見通しです。

 日本企業は トランプ関税を打ち返す

 25%の関税は見通し通りとは言え、日本の輸出産業には打撃です。しかし、過去の歴史を振り返ると、日本企業はこうした危機を乗り越えてきています。一時的なショックはあったとしても、トヨタ自動車に代表される自動車産業などは、今回も乗り越えるものと見ています。

 例えば、米国での生産を増やす、輸出先として欧州市場をさらに開拓するといった手立てが考えられます。日本企業は、今回のトランプ関税のような難しいボールを投げられても、しっかり練習をして、必ずや打ち返すでしょう。

 そして、米国は今後、大幅減税や対米投資の拡大で株高が予想されますから、選挙結果がどうあれ、連動して日本の株も上がることになるでしょう。