NVIDIAは7月17日(現地時間)、「Isambard-AI, the UK’s Most Powerful AI Supercomputer, Goes Live|NVIDIA Blog」において、英国科学の転換点となるAIスーパーコンピュータ「Isambard-AI」の稼働開始を発表した。
Isambard-AIは英国における先端技術研究の主要拠点、ブリストル大学スーパーコンピューティングセンター(BriCS: Bristol Centre for Supercomputing)に設置された。同システムは英国内で最速かつ世界でもトップレベルのエネルギー効率を誇り、同国内の研究者や企業に新時代のコンピューティング環境をもたらすとして注目を集めている。
「Isambard-AI」の概要
Isambard-AIは5,448個の「NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip」で構成された、21EFLOPS(エクサフロップス)の計算能力を誇るAIスーパーコンピュータだ。世界ランキングのTOP500では11位にランクインが予想されている。
この性能は英国内の他のすべてのスーパーコンピュータを合わせた計算能力よりも高速で、同国2位のコンピュータの10倍以上の速度だという。NVIDIAはこのAI性能が英国の研究開発に飛躍的な成果をもたらし、AI主導の創薬、気候モデリング、材料科学、大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)開発のブレークスルーを加速させるとしている。
世界トップレベルの速度および効率を達成、英国をAIの最前線に導く
また、工期の大幅な短縮と世界第4位のエネルギー効率(Green500)を実現しているところも見逃せないポイントだ。工期はプロジェクトの並列管理とGPUの早期調達、施設のプレハブモジュール化で約半分の1年に短縮。エネルギー効率はNVIDIA GH200 Grace Hopper Superchipの採用と、Hewlett Packard Enterpriseの直接液体冷却アーキテクチャで電力使用効率1.1未満を達成している。
この高効率は環境に与える影響を低減すると期待されているが、それでも5メガワットの電力を消費するという。そこで、同システムでは廃熱を再利用できるように設計が行われている。まだ再利用の計画はないようだが、将来的に近隣のインフラで利用する可能性があるとのこと。
国家プロジェクトで利用開始
NVIDIAは同システムが英国の優先すべき国家プロジェクトにすでに利用されていることも伝えている。早期診断と個別ケアをサポートするマルチモーダル健康基盤モデルの開発や、公共サービスの提供を促進する大規模言語モデルの開発、より優れた工業材料の発見など複数プロジェクトが稼働中だという。
英国科学・イノベーション・技術省のピーター・カイル大臣は、Isambard-AIの開所式で次のように述べている。
「英国で最も強力なスーパーコンピューターを起動するこのスイッチを押すとき、AIがより優れた公共サービスを提供し、国家を繁栄させ、科学に深化をもたらし、より強固な国家安全保障に貢献する、英国の素晴らしい未来に乗り出すことになります」
英国政府は「AIを利用する国から作る国へ」との目標を掲げ、AI産業フォーラムの創設やAIインフラストラクチャの導入などに力を入れている。NVIDIAは英国と共に欧州連合(EU: European Union)を照らす舞台を整えると述べ、AIを英国経済の中核に成長させるべく今後も支援を継続していく方針を示している。