次期後継者は社内から? ソフトバンクG・孫氏が言及

過去には後継者候補の退社が相次いだことも

 

「頭の中では何人か絞っている。(自社)グループ社員の中にいる」――。

ソフトバンクグループ(SBG)会長兼社長の孫正義氏が、後継者選びについて言及。自身の後継者が着実に育ちつつあると語った。

 6月27日の株主総会で、後継者に関する質問に答えた。孫氏は「いつ何があっても任せられるよう気持ちの準備はしている」とも述べた。

 こうした発言の背景には、過去、後継者候補の退社が相次いだことがありそうだ。

 例えば、2016年、当時の副社長のニケシュ・アローラ氏が突如退任。「技術、ビジネスモデル、人脈で私をはるかに上回る才覚を持つ。最重要の後継候補だ」と孫氏に絶賛された人物で、15年3月期には総額165億円余りの報酬を手にした。孫氏は17年にもアローラ氏に社長の座を禅譲する考えだった。

 だが、孫氏は16年に「あと5~10年は社長を続けたい」として前言を撤回。その後、副社長を務めた佐護勝紀氏やラジーブ・ミスラ氏らも退任し、22年には副社長全員が会社を去る事態となった。

 佐護氏やミスラ氏も孫氏が三顧の礼で迎えた人物だった。孫氏は”ほれっぽい”側面を持ち、それが大失敗を招くこともある。最たる例が、米シェアオフィス大手ウィーワークの共同創業者アダム・ニューマン氏だ。SBGはウィーワークに累計約160億ドルを投じたが、同社は23年11月に破綻した。

「(巨額投資は)間違った判断だからやめるべきだと、役員や社員から何度も忠告を受けた。全て僕の責任であり、人生の汚点だ」(孫氏)

 孫氏はこうした反省を踏まえて後継者の育成を図っているとみられる一方、短期的に交代が実現する可能性は低そうだ。

 実際、今般の株主総会では「もうしばらく俺がやりたいという気持ちもある」と語った。自社の投資対象であるAI(人工知能)分野について「オールイン(総賭け)するくらい賭けている」と熱弁する場面もあった。自身の”暴走”を止めてくれる統治体制の構築が引き続き課題になりそうだ。

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