エアークローゼット社長兼CEO・天沼聰が語る「創業10年、人々のライフスタイルを豊かにしたいという一心で」

人々のライフスタイルを豊かにしたい─。こんな志を共有する仲間3人と2014年にエアークローゼットを設立し、昨年で10年を迎えました。

 日本で初めて普段着に特化した月額制ファッションレンタルサービス「airCloset」を立ち上げたのですが、3人ともITには詳しいものの、ファッション業界とは無縁でしたし、何かしらの経営資源があったわけでもありません。まさにゼロからの起業でしたが、今でこそ会員数が130万人を超える規模となりました。

 当社のプロのスタイリストが自分のために見立ててくれた洋服が自宅に届き、返却期限なく好きなだけ着続けることができる。こんなサービスを提供できるようになったことで、様々なライフスタイルが生まれたのではないかと自負しています。

 例えば、仕事や子育てに忙しい毎日を送る女性は自分のスタイルを無意識に決めつけてしまう傾向にありますが、いつもの自分であれば選ばないファッションを提供されることで、予想もしなかった自分に出会うことができるようになりました。

 また、ECなどのデジタル社会となった今でも、インターネットを介して洋服に関する情報を収集し、自分の好みの洋服を探し出し、その中から更に絞り込み、実際にお店まで足を運ぶといった手間暇はかかるのが現状ですが、これらを当社が肩代わりすることで、より豊かなライフスタイル実現への一助になっているようにも思います。

 実はairClosetを実現する以前、我々の間では様々な構想がありました。月額制ファッションレンタルのプラットフォームを提供するだけで、当社が物流網や洋服の在庫を持たないローリスクな経営スタイルがその1つ。他にも倉庫管理システムの提供などもありました。しかし、人々のライフスタイルを豊かにするという志を本気で実現するためには、やはりリスクをとってでもリアルな物流網を整備し、洋服の在庫も持つことがビジョンの実現に近づくという結論に至ったのです。

 実際に動き出してみると、クリーニング工場や配送会社、倉庫などの様々なパートナーを見つけることから始めなくてはならず、パートナーにもメリットを生み出さなければなりません。当然ながら赤字でのスタートになりましたが、クリーニング工場での洗濯機の配置を緻密に改善したり、水温や洗剤、水洗いの種類など、一つひとつの改善の積み重ねを通じて、単価を下げることに成功しました。

 当社の強みは、お客様が使いやすいユーザーインターフェースのみならず、このリアルな舞台裏のパートナーとの協調関係にあります。今ではフォーマルウェアを取り扱う企業様に当社の物流網を使っていただくなど、一見、当社のライバルに見えるような競合企業にもサービスを提供しています。

 洋服は買うかレンタルするか─。まだ買うという選択肢が大半を占める世の中にレンタルという選択肢を消費文化として定着させるためには、もっと利用者を増やさなければなりません。ですから、上場を含めた創業からの10年間は、私にとっては準備期の10年だったと捉えています。今後は女性に限らず、男性にもこういった新たな選択肢を提供したいと考えています。

 ネットが登場し、世の中に浸透するまでには約30年かかっています。我々の取り組みもそれくらいの年月のかかる息の長いものかもしれません。それでも億劫に思う1分がワクワクする1分になる─。そんな世の中を実現したいと思っています。

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