【著者に聞く】Y'sラーニング事務所代表・安田直裕 『「しあわせ」組織行動論 これからを担う「勤め人」たちへ!』

日本人が本来備えていたはずの強い「個」を取り戻せ

 今、わが国は、あらゆる面で「将来不安」を拭えないでいる。中でも若者が、国の将来に対し、著しく悲観的に捉えていることに驚いてしまう。そのような状況にした筆者たち親世代の責任は否めない。猛省が求められる。

 しかし、この先、状況を「主」となって好転させる担い手は、若者たち自身である。負の遺産を渡さざるを得ないにせよ、親世代がそれぞれに経験してきた幾多のことを知見として伝える役目だけは果たさねばいけない。それが最低限の責務であろう。その上で、次の時代を託すことになる。

 筆者が伝えたいことは、組織における「人」の態度、精神性での課題である。

 組織は、言うまでもなく「人」により成り立っている。構成員である「人」のありようで、組織は強くもなり発展もする。しかし状況は、長く低迷が続く。その原因は、周囲を見回し「何をするのが自分にとって得か」を考え、小利口に振る舞う「人」が「増殖」してしまったからだ。目に見える成果を急ぎ、短期的で狭隘な思考しか持てなくなったのである。

 これに抗うべく、拙著では組織を強くし、しあわせに働くための「行動三原則」を提唱している。それは、(1)周囲に「合わせない」、(2)上司に「遠慮しない」、(3)評価を「気にしない」の三つである。

 日本人の国民性からして、完全には履行できないかもしれないが、以前はこれらを墨守することで組織は強くあり続けたと思っている。よって、これからを担う「勤め人」たちには、日本人が本来備えていたはずの精神性、すなわち強い「個」を取り戻し、この三原則を愚直に履行して欲しいのだ。

 拙著を知人(某業界最大手の元人事部長)が早速読んで、共感してくれた。特に「行動三原則」は、大手企業グループの会長として今も活躍する親友の「勤め人」人生そのもののようだと、言ってくれた。その読後感に筆者は、拙著が組織を強くし発展させる「人」のあるべき姿(要諦)を記述していると、自信を持った次第である。

 40年余の「勤め人」経験に、独習して得た経営学や社会心理学などを裏付けた持論は、学術書に劣らぬ立派な内容であると思っている。しあわせに働ける組織は、エンゲージメントが高まり、生産性が上がる強い組織である。主役である「勤め人」がしあわせに働けるよう、若者たちにはぜひ自分事として、前面に躍り出て頑張るよう切望したい。拙著は、皆がしあわせになる「組織行動」の指南書であり、上司が心得るべき指導書でもあると思うが、いかがであろう。

 内容は平易になるよう心掛けた。もちろん浅学非才の身、難しい高尚な表現は知らない。量も140頁と少ないので、一気に読み切って頂けるはずである。

冨山和彦の【わたしの一冊】『日本が心配』