
「JR東日本と包括提携の一環で出てきたアイデアだ」と語るのは西武ホールディングス(HD)関係者。同社傘下の西武鉄道を巡って業界の注目を集める動きが出てきている。
1つ目はJR武蔵野線と西武池袋線との直通運転構想だ。JR東日本と西武鉄道が28年度を目途に直通運転を実施する方向で検討している。実現すれば、両社間としては初となる直通運転となるが、前出の関係者によると、「臨時列車などでの運行になる可能性が高い」という。
路線図だけを見れば、西武池袋線の埼玉・秩父エリアから武蔵野線の千葉・東京湾臨海部までが結ばれるように見えるが、事はそう単純ではない。両線は同じ高さの地上を走っているわけではなく、JR新秋津駅と西武・所沢駅間にある既存の連絡線を使って結ばれる。
その連絡線は府中本庁方面と所沢方面をつなげているため、仮に所沢からJR舞浜駅に向かうためには連絡線を使って武蔵野線に乗り入れ、途中で「スイッチバックしなければ対応できない」(同)。
連絡線の近くには、新秋津駅と西武・秋津駅があり、両駅間約400メートルを歩いて移動する利用者が多く、相互乗り入れを求める声もあった。今回の構想が解決策になるわけではないが、「直通運転で利便性が高まれば新たな需要が生まれる」(同)。
2つ目は東京メトロ東西線と西武新宿線との相互直通運転の構想だ。西武新宿線は地下鉄との直通列車が運転されていない。しかも、新宿線のターミナル駅である西武新宿駅は新宿駅と離れており、池袋線の池袋駅と比べても利便性は劣る。
西武HD会長兼CEOの後藤高志氏も「ぜひ実現させていきたい」と前向きな姿勢を示す。ただ、新宿線と東西線は高田馬場駅で接続はしているが、線路が直接つながっているわけではない。実現には新たな連絡線の建設などが必要になる。
技術面や資金面での課題はあるにせよ、線路がつながれば沿線住民の移動需要は刺激されるだけに、西武鉄道の知恵が試されることになる。