三菱電機は、鉄道事業者向けの取り組みとして、列車の乗降人数や駅窓口の滞留時間などをカメラ映像から計測し、データ分析する実証実験を実施。列車や駅窓口の混雑状況を可視化することに有効だと確認したことを、7月9日に発表した。

  • 琴電・栗林公園駅構内における実証の概要

同社では、混雑傾向に基づいて列車の運行ダイヤや車両編成、駅窓口の人員配置の最適化を行うといった、鉄道事業者の運用課題を解決する映像解析ソリューションの提供に向けた検討を進める。

この実証実験は、香川で運行している高松琴平電気鉄道(琴電)の琴平線・栗林公園駅で行われたもの。

琴電では従来、混雑状況の把握を目的として、朝ラッシュ時間帯の乗降人数を都度人手でカウントしていたという。しかし、限られた人員で、短日数・短時間での計測であったため、列車運行の改善に資する継続的なデータ取得が難しいことが課題だった。

三菱電機は今回、琴電の栗林公園駅構内にカメラを設置し、4週間にわたり、始発から終電までの乗降人数データを取得してグラフ化し、データを分析。その結果、同駅における夕ラッシュ時間帯の列車利用者数は、朝ラッシュ時間帯の半数以下だったことがわかり、夕ラッシュ時間帯の車両数を朝ラッシュ時間帯から減らせることを導き出した。

また、駅窓口付近に設置したカメラから、利用客の滞留時間データを取得・分析した結果、曜日・時間帯ごとの混雑傾向も明らかになり、窓口業務の人員配置最適化に活用できることを確認した。

今後はこの実証成果をもとに、複数駅での検証や、より多様な映像解析の実証を重ね、映像解析技術をさらに高性能化。鉄道事業者向け映像解析ソリューションの事業化をめざすとしている。

具体的には、列車運用の最適化については、列車乗降人数の自動計測により乗降人数カウント業務を省人化し、混雑状況に応じた最適な運行ダイヤ編成を提案する。

駅窓口の人員配置最適化に関しては、カメラ映像に基づく人物同定・追跡技術やボディカメラの活用により、一人当たりの利用時間や問合せ内容の傾向を分析。駅員の配置見直しやタブレット端末等による遠隔対応の導入も含めた、駅員の省人化に資する人員配置計画の策定を支援する。

さらに顧客のニーズに応じて、映像解析システムと既設の防犯カメラとの連携による映像解析・課題解決も追求。三菱電機独自のデジタル基盤「Serendie」と連携することで、より迅速かつ詳細なデータ分析、映像データの取得から分析、課題解決までの一元管理など、新たな価値を生み出すことも視野に入れ、鉄道事業者向けの循環型・映像解析ソリューションの創出をめざす。