AIを活用したコーディング環境「Cursor」が6月中旬に発表したプラン変更の内容説明が不明瞭だったとして、一部の利用者の間で混乱が広がった。運営するAnysphereは7月4日、公式ブログを通じて謝罪し、該当期間中に想定外の課金が発生したユーザーには返金対応を行うと発表した。

混乱の発端は、6月16日に上位サブスクリプションプラン「Ultra」の追加とともに行われた「Pro」プランの変更内容の表記である。新プランでは、Ultraプランにおいて、Proプランの20倍に相当するプレミアムAIモデルの利用枠が提供される。一方、Proプランについては「Unlimited agent requests(無制限のエージェント機能リクエスト)」と記載されていた。

しかし、このProプランの無制限利用は「Auto」モードに限られており、その点が明確に説明されていなかったことが誤解を招いた主因とされる。Autoモードは、ユーザーのリクエストをCursorが処理能力に余裕のあるAIモデルに自動で振り分ける仕組みである。一方、ユーザーが特定のモデルを選択して使用する場合には、毎月20ドル分の利用クレジットが提供され、それを超過するとAPI単価に応じた従量課金が発生する。

プレミアムモデルは1リクエストあたりの処理コストが高く、これらを選択すると数回のプロンプトで20ドルのクレジットを使い切ってしまうこともある。その結果、SNSや掲示板には「知らないうちに課金された」との不満の声が相次いだ。

Anysphereによれば、今回のプラン変更の背景には、最先端AIモデルの運用コストが従来よりも大幅に増加しているという事情がある。例えば、Anthropicの「Claude Opus 4」は、入力トークン100万あたり15ドル、出力トークンは75ドルと高額である。従来、Anysphereはこれらのコストをある程度吸収していたが、今回の変更により、その負担が利用者側に移された形となった。

Anysphereは7月4日、公式ブログにて説明不足を認め、6月16日から7月4日までの期間に予期せぬ課金が発生したユーザーには全額返金に応じる方針を示した。

同社は6月30日に価格ページを更新し、Proのエージェント機能利用の説明を「Extended limits on agent(エージェントの上限拡大)」へと修正。さらにプラン価格のページに移動して詳細を確認できるリンクを設けたほか、Cursorダッシュボードに利用制限が近づいたことを示す機能を追加した。今後数週間のうちにさらなる改善も予定されているという。

AI開発環境は、プロンプトの与え方次第で大きく結果が変わる一方、利用コストも変動しやすいという難しさがある。Anysphereは今後、料金改定時には事前通知の徹底、明確な情報提供、移行期間中のサポート体制強化を進めるとしている。