【金融庁】「誰もが認めるエース」伊藤長官が満を持して登板

金融庁は7月1日、伊藤豊長官をトップとする新体制をスタートさせた。直近まで中核の監督局長を3年務めた「誰しもが認めるエース官僚」(霞が関の経済官庁幹部)。満を持してのトップ登板となった。

 伊藤氏は財務省時代から「将来の事務次官候補の一角」とも目された実力派。若手時代には旧大蔵省銀行局・証券局に在籍し、旧金融監督庁や金融庁でバブル経済崩壊後の銀行の不良債権問題の解決に尽力した。また、産業再生機構に出向し過剰債務を抱えた有力企業の経営再建を後押ししたり、東京証券取引所に派遣され資本市場改革を担った経験もあり、金融界や産業界に幅広い人脈を持つ。

 省内では次官や国税庁長官への出世を嘱望する声もあったが、伊藤氏本人の希望で金融庁に転身。この際、財務省から金融庁に「エースを出す以上、将来、必ず長官にするように」との強烈な申し入れがあったとされる。

 「本格政権」発足の感もあるが、金融行政の先行きは険しい。足元では地域金融機関の不祥事や経営不安が相次いで発覚。国民の間に不安や不信感が高まる中、立ち入り検査を始めとした金融機関の経営の健全性を確保するためのモニタリング体制の抜本的な強化を迫られている。

 サイバー犯罪集団による証券口座の乗っ取り問題も悩ましい。金融庁と証券各社は口座ログイン時の「多要素認証」の義務化など本人確認手続きの厳格化を進めているが、再発防止につながっていないのが実情だ。

 国民の信頼回復に向けてタイムリーな一打を放てるか。東京大学野球部で捕手兼主将を務めた伊藤氏のリーダーシップが試される。

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