NHKのドキュメンタリー番組「プロジェクトエイリアン」は、現実社会では出会わないような人たちが自分のプロフィールや"ペルソナ"を伏せたままVRのアバターで交流し、それぞれの価値観を乗り越えて理解を含めていくドキュメンタリー番組で不定期で放送している。

第8回「PA008 10代 ココロの修学旅行」では、生きづらさを感じる若者の心の課題を研究する横浜市立大学「Minds1020Lab」とコラボレーションを行い、横浜市立大学附属病院 児童精神科 講師 藤田純一医師ら研究チームが番組出演者の精神疾患をもつ10代の若者3名の心理状況の影響を調査。収録前後のアンケートからレジリエンス(回復力)の向上、抑うつ症状の軽減、社会的つながりへの意識向上、感情表現の段階的変化などを確認している。

研究の詳細は医療・デジタルヘルス分野における予備的・形成的研究(formative research)を専門に扱う学術誌「JMIR Formative Research」に2025年5月30日付で掲載されているが、藤田純一氏は、VR技術を活用した対話による治療的効果の可能性を示す予備的な知見であり、従来の対面療法が困難な若者にとって、匿名性と安全性を保ちながら他者とつながる新しい選択肢となる可能性があると述べている。

「Minds1020Lab」は、横浜市立大学 研究・産学連携推進センター/医学群 教授宮﨑智之氏がプロジェクトリーダーを務め、抑うつや適応障害の増加、高い自殺率に見られる若者の生きづらさを大きな社会問題と捉え、これを解決すべく、包括的研究やインタラクティブプラットフォーム上でのヘルスケアコンテンツとサービスの整備や効果検証を行う産学連携のプロジェクトになる。

VR空間やアバターがもたらす可能性は、ビジネスにおける会議活性化などでも効果が示されて(記事)いるが、ともに心理的安全性の担保がアクティブな効果を喚起している。VR空間やアバターなど一定の匿名性を担保した状態で本音で話し合える場が解決できるシーンは広がりを見せているようだ。