紀文食品・堤 裕社長「『すこやかなおいしさ』を、日本から世界に届け、 今以上に世の中の役に立っていきたい」

新商品・高たんぱくの『SURIMI BAR』ですり身の魅力発信を

 当社はかまぼこ、ちくわ、はんぺんなどの水産練り製品を主軸に、総菜を多く展開しています。その原料である魚のすり身の約6割をアメリカから輸入しており、昨今のアメリカの人件費上昇が価格転嫁され、当社にとっては原材料価格の上昇となり、昨年度は増収減益という着地でした。

 現在、海外食品事業は売上高の約1割にとどまっていますが、海外では、特にカニ風味かまぼこの需要が非常に高まっています。さらにインバウンド需要の増加で日本の味を知ってもらう機会が増えていますので、今後われわれも水産練り製品を中心として市場を開拓し、海外事業の拡大を目指します。

 日本では食の多様化が続いていますが、われわれの強みをより発揮する高付加価値商品として、今年2月に『SURIMI BARシリーズ』を発売しました。80年近く作り続けている水産練り製品を、現代のライフスタイルに合わせ摂取しやすい形状やパッケージにし、いつでもどこでも魚肉たんぱく質を摂取できるという商品です。

 世界的な健康志向の流れを見ても、肉より魚の方がヘルシーというイメージがあるため、魚を摂取したいというニーズは年々高まっています。しかし、魚は鮮度が落ちるのが早く、独特な匂いや骨、内臓の除去など、調理と摂取にはハードルが高いという点もあります。そこを当社が食べやすく美味しい食品に加工し、鮮度の高い状態で商品をお客様に届けるということが、社会的存在意義でもあると思っております。

 海外では水産練り製品、特にカニ風味かまぼこは「SURIMI」と呼ばれ、日本発のヘルシーフードとして人気です。

 水産練り製品の良質な魚のたんぱく質が摂取でき、低脂質・低カロリーという健康感を、「SURIMI」と表現することで若い世代の方々にも親しんでいただきたいと考えております。またバータイプにすることで、調理をしなくても冷蔵庫から出してサッと食べられる、即食性があるという利点も広めていきたいと思っております。

2500億円のビジネススケールに持っていくことが目標

 今後の展望として、2038年の創業100周年に向けて、企業規模を拡大し、2500億円のビジネススケールを実現することを目標に掲げています。そのために、「すこやかなおいしさ」をテーマに、日本食を世界に広める取り組みを強化します。

 日本食を世界に広める際には、日本の伝統的な食文化をそのまま持ち込むのではなく、各国の食文化に合わせた形で提供することが重要です。先日の米国出張では、スーパーに出向き、水産練り製品の棚を見てきましたが、当社商品を増やして、まだまだ売り場を拡大していきたいという思いを強くしました。

 それから、魚肉だけでなく、大豆や卵、畜肉などのたんぱく質についても、新しい感覚をもっていただけるように商品開発を進めていく考えです。

 秋にはこれまでとは異なる驚きや楽しさ、新鮮さを付与した新商品を発表する予定でして、お客様に喜んでいただけることを期待しております。