
慶應義塾長の伊藤公平が塾長に再任された。伊藤氏は2021年から塾長をつとめており、今回で2期目となる。
近年はAI(人工知能)など技術の発展や時代の変化が激しく、世の中は効率化を重視するばかり。伊藤氏はAIや効率化も大事だが、時間をかけた学びの場をつくることが大事だとし、「運動にしても、語学にしても、10代、20代にどれだけの時間を使って、そこで蓄えたことが人生100年時代の全ての礎をつくる。このような教育の原点にかえっていく」と語る。
米国ではトランプ米大統領が米ハーバード大の留学生らの入国を停止する布告を出すなど、教育現場が混乱している。すでに香港の大学が留学生の受け入れを打ち出した他、日本でも日本学生支援機構(JASSO)によると、東京大学や京都大学など、6月12日時点で国公私立94大学が何らかの留学生受け入れ支援を表明している。
ただ、慶應は学生からの個別の相談や大学から直接要請があった場合は支援するという考えに留まる。伊藤氏はハーバード大学が自由や独立を勝ち取ろうとしている姿勢を支持するとし、「大学にとって一番ツライのは学生がいなくなること。学生を引き抜くようなメッセージは送りたくない」と話した。
ここ数年、慶應には韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領や『ChatGPT』を開発するオープンAIのサム・アルトマンCEO(最高経営責任者)など、世界のリーダーが訪れ、教授陣や学生との交流を図ってきた。
8年後の2033年に175周年を迎える慶應義塾。「今後も世界の本物に触れる環境をつくっていきたい」と語り、2033年に向けて「慶應だけでなく、日本の教育のグランドデザインをつくっていきたい」と話す伊藤氏。大学のあり方、教育のあり方の追求が今後も続く。