サイボウズは5月13日、ノーコード業務アプリ構築ツール「kintone」のユーザーイベント「kintone hive 2025 sendai」を仙台PIT(宮城県仙台市)で開催した。本稿では「さっぱりわがね〜教えてけねが?おめほの愛ときんとーん!」と題して行われた、kintoneと生成AIを組み合わせた活用のトークセッションの模様をレポートする。

ゲストとして登壇したのは、岩手県一関市にある京屋染物店の蜂谷悠介氏と、山形県米沢市にある後藤組の笹原尚貴氏。進行はサイボウズの東北営業担当で地域共創を担当する大越脩賀氏が務めた。

  • トークセッション、(写真左から)サイボウズ 大越脩賀氏、京屋染物店 蜂谷悠介氏、後藤組 笹原尚貴氏

    トークセッション、(写真左から)サイボウズ 大越脩賀氏、京屋染物店 蜂谷悠介氏、後藤組 笹原尚貴氏

ChatGPTを使いまくる2人が登壇

大越氏:日常業務の中で、生成AIを利用していますか。

蜂谷氏:利用しています。最近は、ChatGPTが社内や出張中の相談相手です。ChatGPTにばかり相談するので、社員から「ようやく友達ができて良かったね」と言われました。

笹原氏:私も使っています。業務利用はもちろんのこと、社員よりもChatGPTと対話している時間の方が長いかもしれません。先日1人で残業をしていたときにちょっと辛くなったので、ふと「私ってこの会社にとって必要でしょうか」と質問しました。すると、ChatGPTは過去の質問内容も引用しながら、「あなたはこんなに頑張ってますよ」と返事をしてくれたので、泣いてしまいました(笑)。

  • 後藤組 笹原尚貴氏

蜂谷氏:私も今度やってみます。私は検索が面倒なので、ChatGPTに情報の検索と整理をお願いしています。kintoneの利用例を挙げると、プラグイン検索をChatPGTにお願いすると、プラグインを教えてくれるだけでなく、プラグインが無い場合には「こういうJavaScriptなら実装できますよ」とソースコードまで出力してくれます。

  • 京屋染物店 蜂谷悠介氏

生成AIが実現するkintoneの便利な活用術

大越氏:kintoneをカスタマイズして利用している方にとっても、ChatGPTは無くてはならない存在ですね。最近、kintone AIラボから「検索AI」と「アプリ作成AI」の2つのAI機能がリリースされました。こちらは使いましたか?

笹原氏:どちらも使ってみましたが、私はアプリ作成AIがいいなと思っています。例えばアプリを作る際に、「プルダウンで47都道府県を選択できるようにしたい」と思った場合、AIが実装まで進めてくれます。当社は建設業ですので、現場のチェックリストを作る際に、人間が手を動かさなくてもAIが実装してくれるのはとても便利です。

蜂谷氏:私は特に検索AIを使っています。検索AIを使ってみると便利なのですが、まだちょっとだけ難点があると感じます。AIが過去に作成したアプリのデータを検索できる機能が、最大10個までしか対応していないんです。せっかくkintone上にデータがたまっているのに、AIが10個のアプリしか情報を取得してくれないのはもったいないので、サイボウズさんにはぜひ改善してほしいです。

一方で、最近「コメント一括ナレッジ登録」という素敵なプラグイン機能を見つけました。これは、各アプリの中のコメントや日付をテキストデータとして、一つのアプリに集約してくれる機能です。10個以上のアプリを使っている場合は各アプリで「コメント一括登録」のボタンを押せば、1つのアプリに全アプリのデータが集約されます。そのアプリに対して「検索AI」を使えば、すべてのデータに対しAIが検索をかけてくれます。

  • 「コメント一括ナレッジ登録」ボタン

    「コメント一括ナレッジ登録」ボタン

これにより、どの社員がどのアプリでどんなコメントを残したのかを可視化できます。例えば、社員との面談の前に「○○さんは最近どんなことをしているの?」とkintoneのAIに質問すれば、その社員の動きを把握できるわけです。面談で「君は最近、こんなことを頑張っているみたいだね」と声をかけられるようになりました。

  • 社員の働きが可視化される

    社員の働きが可視化される

お客様との商談前にも、「この企業との直近の取引は?」とAIに聞くと、過去の取引内容や「売掛金の回収に注意してください」といったポイントまで教えてくれます。

  • 商談前に情報を整理し確認できる

    商談前に情報を整理し確認できる

大越氏:ほかに、kintoneとAIを組み合わせて活用した事例はありますか。

笹原氏:これは弊社のkintoneを開くと、画面右下にいつもいるカエルくんです。カエルくんには自由に質問ができます。例えば「会社のスマホを落としてしまいました」と質問すると、報告先や今後の行動について具体的に指示してくれます。

  • 後藤組のkintoneに出現するカエルくん
  • 後藤組のkintoneに出現するカエルくん

    後藤組のkintoneに出現するカエルくん

カエルくんの裏側では、ChatGPTのAPIを使いつつ、社内の過去の問い合わせと回答を学習させています。この機能は、kintoneのAIラボが出るよりも前から活用しています。

もう一つの例が、議事録アプリです。kintoneには音声で議事録を残せるアプリがあるのですが、このアプリは「あのー」「えー」のような無駄な音声も拾ってしまいます。これをAIに要約してもらうと、文章をきれいに整えつつ、テーマごとにポイントをまとめてくれます。

AIの有効活用のために、まずkintoneの活用から始めよう

大越氏:今後、kintoneに期待していることはありますか?

  • サイボウズ 大越脩賀氏

笹原氏:さきほど蜂谷さんがおっしゃっていたように、ユーザーが求めるのは「kintoneに聞けばなんでもわかる」という状態だと思います。そう考えたときに、AIが情報を検索する目が足りないなと思います。また、今はAIがテキストで返事をしてくれるだけですが、いずれはレコードの編集や追加もしてくれると、よりエージェントっぽく使えるかなと思います。

蜂谷氏:kintoneのAIラボは、スペースの内部までは見てくれません。でも、スペースの中はその企業の知識のかたまりと言えるほど、企画やアイデアが詰まっていますよね。ぜひ、そのデータをAIで活用できるようにしてほしいです。

大越氏:残り時間が少なくなってきました。最後に会場のみなさんにメッセージをお願いします。

蜂谷氏:kintoneをすごく活用している方と、そうではない方がいると思います。AIを活用しようと思ったら、そもそもkintoneの中に情報が入っていないとAIをうまく活用できません。つまり、まずはkintoneをゴリゴリに使って些細なことでも情報をたくさん入れておくと、いずれAIが答えてくれるようになると思います。