セルフメディケーションの実践へ  龍角散が家庭薬メーカー2社と提携

専門性とオーナー経営の強み

「医療財源が限られている中、日常的なケアまで医療機関で受診していては、本当に医療機関での治療が必要な人の分まで医療資源を使ってしまうことになる」――。のど飴を手掛ける龍角散社長の藤井隆太氏は語る。

 同社はこのほど、同じ家庭薬メーカーである山崎帝國堂、宇津救命丸と戦略的資本業務提携を締結。国内外で販売網を持ち、SNSで注目を集めるマーケティング手法を駆使する龍角散のネットワークを2社が活用する。

 家庭薬とは医師の処方箋がなくても購入できる一般用医薬品。長い伝統のある薬が多い。1871年創業の龍角散は、のど専門のメーカー。山崎帝國堂は1888年創業の便秘薬「毒掃丸」の製造販売元。宇津救命丸は1597年創業で、子どもの夜泣きやかんむし(急速に発育する乳幼児の精神と身体のアンバランスによって起こる症状)などの「宇津救命丸」を手掛ける。

 ただ、山崎帝國堂も宇津救命丸も欧米や日本の製薬メーカーによる新薬の登場などで「認知度が下がった」(宇津救命丸社長の宇津善行氏)ことや「他の選択肢が増えたことで埋もれてしまった」(山崎帝國堂社長の竹内眞哉氏)といった課題を抱えていた。龍角散も業績好調とはいえ、手掛ける領域はのどだけだ。

 家庭薬業界は専門企業が多い。また、「オーナー経営が多いため、意思決定のスピードも速い」と藤井氏。既に山崎帝國堂の毒掃丸とは龍角散のゼリーと服用するシーンを新聞広告などで告知。毒掃丸の販売数は伸びたという。

 家庭薬の特長は自ら服用して病気を予防できる「セルフメディケ―ション」を実践できるという点だ。国民医療費が50兆円規模に膨らみ、医療機関の人手不足も深刻になる中、家庭薬メーカー連合の腕が試される。

医療経済研究・社会保険福祉協会 辻 哲夫理事長に聞く《超高齢社会を迎えた日本はどのような国づくりを目指すべきですか?》