米Anthropicは6月25日(米国時間)、AIアシスタント「Claude」において、ユーザーがコーディング不要でインタラクティブなAIアプリケーションを作成し、リンクを通じて共有・利用できる機能を導入した。これは、Claudeが従来のAIチャットボットから、誰もが実用的なAIアプリを作成・提供できるプラットフォームへと進化する大きな転換点となる可能性がある。

Claudeには、「アーティファクト(Artifacts)」と呼ばれる機能がある。これは、Claudeとの自然言語による会話を通じて作成・編集されるコンテンツ(コード、HTML/CSS/JavaScript、Reactコンポーネント、マークダウン文書、SVG画像など)である。

今回のアップデートにより、従来の静的な成果物(アーティファクト)とは異なり、作成したアプリにAI機能を組み込むことが可能となった。AIが生成したコンテンツが単なるテキストやコードの断片ではなく、それ自体が独立して機能するアプリとなる。例えば、特定のトピックのフラッシュカードを一度生成するのではなく、ユーザーが任意のトピックを選んでカードを生成できる「フラッシュカードアプリ」そのものを作成できる。

  • Anthropicによるアプリ作成のデモ

    Anthropicによるデモ、「Claude APIを使用して、ユーザーが返信を待たずに複数のメッセージを連続して送信できるチャットアプリを作成」

ユーザーは自然言語で「このようなアプリが欲しい」とClaudeに指示するだけで、Claudeがアプリのコードを自動生成する。共同作業の過程では、Claudeがフィードバックに基づき自らのコードをデバッグ・改善する。作成したアーティファクトは、サイドバーからアクセス可能な専用スペースで一元的に管理できる。

さらにAnthropicは、「デプロイ」作業も不要にした。デプロイとは、開発者が作成したアプリやサービスを、ユーザーが実際に利用可能な環境(主にサーバーやクラウド)に配置する工程を指す。

一般的にアプリを公開すると、利用者が増えるほどに開発者はサーバー代などのインフラコストに悩まされるが、Claudeでは、共有されたアプリを他のユーザーが利用する際のAPI使用量は、作成者ではなく利用者自身のClaudeサブスクリプションにカウントされる。これにより、作成者は利用量に応じたコストを負担することなく、自身の作品を広く共有できる。APIキーの管理も不要である。

これらの新機能はベータ版として、Claudeの無料、Pro、Maxプランの全ユーザーに提供される。現時点では、外部APIの呼び出しや永続的なストレージ機能には対応していない。また、アプリとAIのやり取りはテキスト補完に限定される。

従来の生成AIは、ユーザーがプロンプトを入力し、AIがテキストやコードといった「静的なレスポンス」を返すことが主な利用形態であった。しかし今回のClaudeの新機能は、ユーザーの指示から、それ自体がClaude APIと対話する能力を持つ「動的なアプリケーション」を生成する。これは、AIが単にユーザーの問いに答える存在から、ユーザーの要望に応じてアプリのロジックやUIを構築・提供できる実質的な開発者としての役割を担うようになることを意味し、AIの利用形態におけるパラダイムシフトとなる可能性を示している。