プライム・ストラテジーは6月24日、高速CMS実行環境「KUSANAGI」がリリース開始10年で累計稼働台数10万台達成したことを発表し、今後5年間の開発ロードマップも公開した。

同日、海外の市場への拡販を柱としたWordPressの海外展開にまつわる方針も発表された。

代表取締役 吉政忠志氏は、これらの発表に伴い、以下のコメントを出している。

「黎明期からWordPressコミュニティで培った技術を生かし、“WordPressを簡単に超高速化したい”簡単にセキュリティを強化したい”といった想いで10年前に始まった高速CMS実行環境であるKUSANAGI。お陰様で全世界で累計稼働台数10万台を超えるまでに成長しました。KUSANAGIは現在、3割が海外で利用されていますが、今後は海外戦略を強化し、2031年には全体の売り上げの半分が海外で占めるように体制を強化します」

  • プライム・ストラテジー 代表取締役 吉政忠志氏

将来は「Autonomous」「Secure」「Unified」を実現

同社は2002年に設立したが、2003年以降、Amazon Web Services、Google Cloud、Microsoft Azureと、ハイパースケーラーのパブリッククラウドが次々と開始した。

クラウドサービスの拡大とともに、Webサービスの高速化の要求が高まってきたことから、同社は2015年にKUSANAGIを発表した。以降、ネットワークやブラウザの使われ方の変化に合わせてバージョンアップが行われてきた。

昨今は、Webガバナンスとセキュリティ対策が急務となっていることから、KUSANAGIもセキュリティに注力している。

製品企画担当執行役員 相原知栄子氏は、開発ロードマップの柱として、「グローバル市場での差別化」「パートナーエコシステム」「新しい価値創造」を挙げた。

  • プライム・ストラテジー 製品企画担当執行役員 相原知栄子氏

グローバル市場においては、「高速化・コスト削減」「運用効率化」を訴求する。新しい価値については、製品やサービスとの連携やAIによる運用自動化・データ活用によって創造する。

「自ら動き、守り、つながる未来のウェブ」を実現するための取り組みとして、相原氏は3点紹介した。

1つ目は、セキュリティ運用の強化と、可視化とコントロールの実現だ。2026年に、Security Editionにおけるテスト・巻き戻し機能の提供、KUSANAGI Appにおけるサーバ・サイト状況可視化と仮想マシンのコントロールの提供を予定している。

2つ目はKUSANAGIとKUSANAGI Appの連携だ。2027年に、フリー版 KUSANAGI 10の提供と既存のKUSANAGI 9からのアップデートを実現し、フリー版にKUSANAGI Appの可視化機能を提供する計画だ。

3つ目は、KUSANAGI AppをAIベースのWebの統合基盤に進化させることだ。具体的には、2031年に、AIによる運用の自動化、KUSANAGI App でのAdd-onとサポートの提供を予定している。

  • 「KUSANAGI」の開発ロードマップ

2031年度の海外稼働台数を5万台に

KUSANAGIの次の10年に向けて、海外展開の方針も発表された。現在、KUSANAGIは海外で本格的な戦略を展開していないにもかかわらず、全体の30%の売上が海外によるものだという。そこで、本格的に海外戦略を展開し、さらなる累計稼働台数の実現を目指す構えだ。

マーケティングアンドセールス部担当執行役員 入江直樹氏は、海外展開のビジョンとして、「『WordPressを動かすならKUSANAGI』という世界的なプレゼンスを確立する」ことを紹介した。そして、会社よりもKUSANAGIというプロダクトを全面に押し出すという。

  • プライム・ストラテジーマーケティングアンドセールス部担当執行役員 入江直樹氏

対象とする市場については、WordPress市場が活発で、経済成長が見込まれる国・地域を優先する。EU圏はスペインを起点に、また、東南アジア圏はインドネシアを起点にアプローチする。加えて、インドを起点にネパール・バングラディッシュ・スリランカの市場圏にアプローチし、オーストラリアもターゲットとする。

また、海外市場はエンドユーザー自身でWeb構築することが主流であることから、海外向けマーケティングの基本パッケージを開発する。重点国において顧客基盤・チャネルを持つ有力企業と戦略的提携するほか、WordCampなどのイベントを起点に、現地のオピニオンリーダーやインフルエンサーと協業にも取り組む。

チャネル戦略としては、主要クラウドベンダーと共同マーケティングを行い、KUSANAGI関連のテーマ・プラグイン・サービスを提供するエコシステムを構築する。

海外展開を進めるために、海外向けに最適化されたマーケティングチームと運用体制も整備しているという。

中長期マイルストーンとしては、2031年度(5年後)の累計稼働台数15万台を目指し、そのうち海外5万台、構成比33%を想定している。

  • KUSANAGI海外展開戦略のポイント