
稼働から60年を超えた原発の運転を可能にする「グリーントランスフォーメーション(GX)脱炭素電源法」が、6月6日に全面施行された。運転期間を最長60年とする従来の枠組みは維持しつつ、原子力規制委員会の安全審査などで停止した期間分を上乗せできるようにする。データセンターの新設などで電力需要の増加が見込まれる中、政府は既設原発をフル活用することで、電力の安定供給につなげる狙いだ。
原発の運転期間は、東京電力福島第1原発事故後に「原則40年、最長60年」とするルールを定めた。新制度では、規制委による安全審査や国による行政指導、裁判所の仮処分命令などで停止していた期間について、60年のカウントから除外。停止期間分の延長を認め、実質的に原発の60年超運転が可能となる。
新制度により、国内で稼働している原発の中で最も古い関西電力高浜原発1号機(福井県)は今後約20年間運転が可能になる計算となる。1974年11月に運転開始の同原発は、福島第1原発事故後の安全審査などで約12年停止しており、この期間が追加できれば、運転開始から最長72年動かせることになる。
一方で、電力会社が起こしたミスで原発が停止した期間の延長は認められない。具体的には、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)でテロ対策の不備により、規制委から事実上の運転禁止命令が出ていた約2年8カ月などが該当する。
政府は、2月に閣議決定したエネルギー基本計画に既設原発の「最大限活用」を明記し、2040年度の電源構成で原発の割合を現在の1割弱から2割程度まで増やす方針を掲げた。この水準は30基以上の稼働を前提としているが、再稼働した原発は14基にとどまる。
新増設のハードルも高く、既存原発を長期利用できる仕組みを整えることで、喫緊の電力需要の増加に対応し、脱炭素との両立も目指す。