Broadcomは6月17日(米国時間)、モダンプライベートクラウド向けプラットフォームの最新版「VMware Cloud Foundation(VCF) 9.0」が一般公開された。同製品は昨年の年次イベント「VMware Explore」で公開された。

「モダンプライベートクラウド」とは

同社が標榜する「モダンプライベートクラウド」とは、どんなものなのか。

ヴイエムウェア カントリーマネージャ 山内光氏は、「多くの企業がパブリッククラウドのコストを管理できておらず、企業の69%がワークロードをパブリッククラウドからプライベートクラウドに移行している」と述べ、企業においてプライベートクラウドが優先されている現状を明らかにした。

  • ヴイエムウェア カントリーマネージャ 山内光氏

また、セキュリティ、生成AI、コストの予測可能性という要因もプライベートクラウドの導入を推進しているという。

ただし、プライベートクラウドの導入においても課題があり、最大の課題はITのサイロ化となっており、山内氏は「ITのサイロを解消するプラットフォームが必要」と指摘した。

加えて、日本は「不確実な経済」「労働人口の減少」「経済安全保障の強化」といった課題に直面していることから、山内氏は「ITインフラストラクチャの再定義が必要」と訴えた。

同社は、今日の課題に対応するITインフラとして、モダンプライベートクラウドを掲げている。モダンプライベートクラウドは、パブリッククラウドとデータセンターの長所を融合したものとなる。

  • 「モダンプライベートクラウド」の特徴

「VMware Cloud Foundation 9.0」の特徴

モダンプライベートクラウドのためのプラットフォームがVCFだ。「VCF 9.0」については、Broadcom VCF部門 製品担当バイスプレジデント ポール・ターナー氏が説明を行った。

ターナー氏は、「VCF 9.0の中核はサーバの仮想化ではない。IT全体を可視化すること。サーバ、ストレージ、ネットワークの自動化を実現し、オンプレのようなセキュリティを実現し、コスト管理もできる。パブリッククラウドの最大の課題はコスト。コスト効果の高いITを提供する。これまでの集大成となる」と述べた。

  • Broadcom VCF部門 製品担当バイスプレジデント ポール・ターナー氏

同製品は新しいアーキテクチャを採用しており、パブリッククラウドで得られる俊敏性と拡張性と、オンプレミス環境が備えるセキュリティ、パフォーマンス、アーキテクチャ制御、総所有コスト(TCO)の利点を兼ね備えている。

  • 「VMware Cloud Foundation 9.0」の構成

  • 「VMware Cloud Foundation 9.0」の主な機能

以下、VCF 9.0の特徴を紹介する。

管理者向けの単一のインタフェース

旧VMwareは製品のラインアップが多く、管理製品も複数あった。そこで、VCF 9.0では運用の簡素化を図るため、クラウド管理者向けに統合されたインタフェース(VCF Operations コンソール)が導入された。これにより、プライベートクラウド全体の運用状況を包括的に把握できる。

コスト管理とポリシー適用の統合により、コンプライアンス対応と運用効率の向上を実現するほか、フリート管理により、クラスタ全体のアップグレードを効率的に計画・スケジュール・実行することが可能。

クラウド利用環境向けの単一インタフェース

VCF 9.0は、プラットフォームチームと開発チームの両方に向けた統合インタフェース(VCF Automation コンソール)を提供する。

プラットフォームチームは、テナントのリソースをきめ細かく管理しながら、編成・プロビジョニングできる。ロールベースのアクセスを用いる組み込みのポリシー適用が可能で、デプロイにおけるコンプライアンスは、組み込みのガバナンスポリシーにより維持される。

開発者は、自動化されたセルフサービス型IaaSサービスにアクセスできる。

仮想マシン、コンテナ、Kubernetesを統合

VCF 9.0はvSphere Kubernetes Service(VKS)があらかじめ組み込まれているため、仮想マシンとコンテナをネイティブに実行できる。これにより、Kubernetesと仮想化ワークロードを同時に構築・デプロイ・実行でき、複雑なDevOpsスタックや統合作業が不要になる。

単一のインタフェースと運用モデルで、仮想マシンベースのアプリ、クラウドネイティブワークロード、AI/MLアプリ、従来のエンタープライズデータベースを管理できる。

コスト管理

VCF 9.0は、インフラだけでなくソフトウェアライセンス、運用コスト、データセンターコストまでを網羅したTCO(総所有コスト)を総合的な視点で提供する。

分析機能により予測コストモデリングを実行できるので、財務上の課題を回避できます。リソース最適化も自動化されているため、使用率の低いキャパシティを動的に再割り当てし、ワークロードの効率を高め、不要なインフラの拡張を抑止する。

さらに、リソース配分に基づくショーバック(利用状況の可視化)とチャージバック(部門別課金)の詳細なデータにより、インフラ投資に対する明確な投資回収(ROI)を実現する。

主権、コンプライアンスを確保

VCF 9.0は強固なデータ管理、コンプライアンス対応、耐障害性を備えたIT運用を実現する機能を備えている。

例えば、新しいSecOpsダッシュボードにより、プラットフォームのセキュリティやデータ制御の状況を迅速に確認できるほか、統合コンプライアンスポリシーと連動する。

また、規制ガイドレール(枠組み)により、一貫したガバナンスの構築を支援する。

ターナー氏は、メモリ、サーバ、ストレージ、パフォーマンスなど、さまざまな点で、VCF 9.0がイノベーションを果たしていると述べた。

例えば、AIアプリケーションはGPUで実行されているので、その稼働環境はコストがかかる。しかし、AIのためのvMotion「vGPU vMotion」を利用すれば、AIアプリケーションを一つのサーバに統合可能になるという。

ターナー氏は「これは他社ではできないこと。しかも、オーバーヘッドは1%未満だ。サーバの仮想化は高価と思うかもしれないがそうではない」と述べていた。

  • 「VMware Cloud Foundation 9.0」のイノベーション