
今年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)に国債に関する異例の文言が盛り込まれ、加藤勝信財務相の影響力が注視されている。
骨太方針の原案には「国債需給の悪化等による長期金利の急上昇を招くことのないよう、国内での国債保有を一層促進するための努力を引き続き行う必要がある」と明記され、足元の金利上昇に対する警戒感をにじませた。国債の安定的な発行に言及し、財政規律の重要性を示すことで、参院選をにらんだ歳出圧力をけん制した形だ。
財政運営を巡っては、自民党の参院選公約に消費税減税が入らず、減税を訴える野党各党との違いが鮮明になった。
石破茂首相は春先までは消費税減税に意欲的だったが、森山裕幹事長、林芳正官房長官とともに加藤氏も減税反対に回り、首相を翻意させた一人といわれる。さらに、小泉進次郎農林水産相が主導した政府備蓄米放出では、政府備蓄米の売り渡し方式を競争入札から随意契約への切り替えを進言したのが財務省だったこともあり「結果的に加藤大臣が小泉氏に協力したことで、米価抑制に貢献した」(財務省幹部)形だ。
一方、証券口座の不正乗っ取り事案に対する加藤氏の対応については「監督官庁の金融庁に丸投げしている」(金融機関幹部)との厳しい声もある。証券会社が被害者に補償をする方針の細部が詰め切れていない上、サイバー犯罪を民間だけで防ぐのは難しいため警察や東京証券取引所などの連携が不可欠なのだが、加藤氏の対応は「どこか他人事で危機感が薄い」(同)とみる市場関係者は少なくない。
官民あげての「貯蓄から投資へ」の流れに冷や水を浴びせる事案だけに、加藤氏の強いリーダーシップが求められる。