サイボウズは6月20日、1000ユーザー以上の大規模導入に対応する大企業向けの「ワイドコース」について、専用機能の説明会を開催した。ワイドコースは1ユーザー当たり月額3000円。アプリ数の上限が3000個、スペース数の上限が1000個、1アプリ当たりの1日のAPIリクエスト数は10万回など、大規模な利用に対応する。

  • kintone各コース比較

    kintone各コース比較

大企業におけるkintone利用の課題

kintoneはノーコードで業務アプリを開発できるため、従来の業務システム開発に必要とされていたプログラミングの専門知識を持っていなくても、ドラッグ&ドロップだけで業務システムを構築可能。JavaScriptの記述によるプラグインやAPI連携を活用すれば、外部システムと連携できる。

  • ノーコードだけでなくローコードでの利用も可能

    ノーコードだけでなくローコードでの利用も可能

サイボウズは2024年7月、大企業での利用を想定した「ワイドコース」の提供を開始。これには、kintoneを全社のaPaaS(Application As A Service:アプリケーション開発基盤サービス)として幅広く(ワイドに)利用してもらうという狙いがある。

ワイドコースの新設には、サイボウズがこれまで大小さまざまな企業へとkintoneを届ける中で見えた、大企業ならではの課題が背景にあるという。中堅・中小企業向けにはアプリの作りやすさや開発の迅速さから、導入が進んでいる。その一方で、kintoneのアプリ数や利用者数の拡大に伴って、目的のアプリが探しづらい、多階層や多組織での横断的なアプリ活用を促したい、セキュリティやルールを守ってアプリを運用したい、といった要望が顕在化してきた。

  • 大企業におけるkintone利用の課題

    大企業におけるkintone利用の課題

大企業向けkintone「ワイドコース」の専用機能

それらの課題に対し、kintoneのワイドコースでは、アプリ数と利用者数の拡大に対応する「ポータル拡張」「プロセス管理強化」「アプリ分析」機能を提供する。利便性の向上だけでなく、統制や運用の効率化も支援する。

全社での利用が進むに連れてアプリの数も増えるため、ユーザーごとに必要なアプリや情報への導線が異なる。例えば、部署や役職に応じて使用するアプリが異なる場合、業務効率化のためには必要なアプリに応じた導線を設計する必要がある。こうした課題に対応するのが「ポータル拡張」機能だ。

組織やグループごとに情報やアプリをソートできるため、「IT申請」「経理業務」「人事関連業務」など、そのときに必要なアプリに迅速にアクセスできるようになる。

  • 「ポータル拡張機能」機能の概要

    「ポータル拡張機能」機能の概要

また、経費申請など複数の部門や組織をまたいでkintoneアプリを利用する場合、承認の経路や条件の分岐が把握しづらい課題がある。これに対し「プロセス管理強化」機能では、承認経路の可視化や、過去の承認・コメント履歴を一元管理できる。業務の属人化を防止するとともに、ガバナンス強化や監査対応など大規模利用ならではのニーズにも答える。

  • 「プロセス管理強化」機能の概要

    「プロセス管理強化」機能の概要

また、大企業において複数部署でユーザーが自由にアプリを作成すると、全社ではどのようなアプリがいくつ作られ、どの程度使用されているかが見えづらい。その結果、似た機能を持つアプリの重複や、不要となったアプリの放置、権限設定の不備など、セキュリティやガバナンスの観点でリスクが生じやすい。

「アプリ分析」機能は社内で利用されているアプリの一覧やその利用状況、権限設定の状況を可視化し、アプリの適切かつ有効な活用をサポートする。部門ごとにアプリの総数や作成数の推移、プラグインの利用状況、添付ファイルの容量などをグラフで可視化できる。

  • 「アプリ分析」機能の概要

    「アプリ分析」機能の概要

  • 「アプリ分析」機能の利用イメージ

    「アプリ分析」機能の利用イメージ

さらにワイドコースでは、スタンダードコースでも利用可能な標準APIに加え、ワイドコース専用のAPIも利用可能。アプリ情報取得やスペース情報取得といった専用のAPIを活用することで、独自の機能開発が可能となる。

説明会において、エンタープライズ事業本部の玉田一己氏は「kintoneは大企業向けの販売を強化するが、大企業との日々の商談の中では"セキュリティ"や"ガバナンス"といったキーワードが多く出てくる。こうした現場の声を開発側にもフィードバックしながら、kintoneがより良いツールになるようブラッシュアップしていきたい」と話していた。

  • サイボウズ エンタープライズ事業本部 玉田一己氏

    サイボウズ エンタープライズ事業本部 玉田一己氏