パナソニック エレクトリックワークス(パナソニックEW)は6月18日、2025年秋に開業する新アリーナ施設「TOYOTA ARENA TOKYO」の運営会社であるトヨタアルバルク東京(アルバルク東京)と、プラチナパートナーシップ契約を更新することを発表。併せて、アルバルク東京が目指す“国際標準のアリーナ”を実現するため、パナソニックEWの製品や演出ノウハウを導入することを明らかにした。

この発表に際し両社は記者説明会を開催し、新アリーナにて使用されるパナソニックEWの機器およびその強みを説明。そして、最新設備の導入などを通じて目指す“新たな観戦体験”の狙いや施策について語られた。

  • 記者説明会の様子

    アルバルク東京の林邦彦代表取締役社長(左)とパナソニックEWの稲継哲章副社長(右)

今秋開業の新アリーナ - パナソニックEW初の設備全面導入へ

2025年秋の開業が予定されるTOYOTA ARENA TOKYOは、スポーツ・モビリティ・サステナビリティという3つの重点テーマのもと、大迫力の演出や心地よい設計・視認性などを追求し、圧倒的な没入体験を得られる多目的アリーナで、B.LEAGUEの所属のプロバスケットボールクラブ「アルバルク東京」のホームアリーナとして使用されるほか、さまざまなアリーナスポーツや音楽興行などで活用されるという。

  • 「TOYOTA ARENA TOKYO」イメージ

    「TOYOTA ARENA TOKYO」イメージ(出所:アルバルク東京)

敷地面積は約2万7000m2で、スポーツイベントの際にはおよそ1万人を収容するメインアリーナを中心とした同施設では、多様なスポーツ観戦の楽しみ方の提案や最新テクノロジーの導入を通じ、“次世代スポーツエクスペリエンス”の実現を目指しているとのこと。そして今般、その構想に照明設備や映像演出設備などの面で貢献する形で、パナソニックEWが参画。2021-22シーズンにはゴールドパートナー、翌2022-23シーズンから3シーズンにわたりプラチナパートナーとして締結していたパートナーシップ契約を今般継続するとともに、新アリーナにおける照明・映像・音響設備などを一括で納入し、究極のエンターテインメント体験の実現に向け協力することが明らかになった。

パナソニックEWは2020年にスポーツ関連ビジネスを専門とするチームを立ち上げて以来、アリーナやスタジアム内の体験価値を向上させる内部演出に加え、施設の外構についても周辺施設と連動した賑わいを創出するなど、内外の総合演出を通じてスポーツの価値向上および街全体の賑わいを創出するソリューションを展開。国立競技場や阪神甲子園球場、エスコンフィールドHOKKAIDO、LaLa arena TOKYO-BAYなど、数々の大型スポーツ施設において空間演出を手掛けてきた。

  • パナソニックEWがこれまで手掛けてきたスポーツ施設

    パナソニックEWがこれまで手掛けてきたスポーツ施設

そして今回同社はTOYOTA ARENA TOKYOにおいて、演出技術に加えて運営の効率化にも貢献する総合的なソリューションをアルバルク東京に提案。数々の実績を有するパナソニックEWとしても初めての試みとなる、照明・映像・音響・送出装置すべてを一括納入する“総合演出ソリューション”の実現に至ったとのことだ。

FIBA認証の照明を導入 - 中継放送でも鮮やかな色彩を実現

照明については、会場を訪れる観客に感動や臨場感を与えるだけでなく、テレビや配信などを通じてスポーツを楽しむ観客にも高品質な映像環境を提供するため、次世代放送にも対応した技術を導入。また競技者がパフォーマンスを最大限行える環境であるとともに、施設管理者にとっても維持管理や運営の負担が軽減される設備を実現することを目指したという。

今回の新アリーナでは、国内アリーナで初導入となる「グラウンドビームER」を屋内施設向けに改良したものが採用された。パナソニックEWは照明メーカーとして唯一FIBA(国際バスケットボール連盟)と認証契約を締結しており、同製品もFIBA認証契約を締結しているもの。競技用および客席用照明として合計144台が設置され、同社独自の3Dシミュレーション技術を活用した競技者視点での検証も繰り返すことで、競技者がパフォーマンスを発揮しやすい証明環境が構築される。その一方で、会場の観客には没入感や臨場感を与えるとともに、次世代の4K8K放送にも対応した高精細の映像環境を提供するとした。

  • 新アリーナに導入される「グラウンドビームER」

    新アリーナに導入される照明器具「グラウンドビームER」

加えて、観戦体験をより一層向上させるライティング演出については、業界最高水準のDMX制御技術を有するグラウンドビームERの採用により、それぞれ個別の照明の明るさを0~100%で微細かつ瞬時に調光できるため、多彩なエンターテインメント演出に対応できるとのこと。映像や音とも連動した調光パターンを作成できるため、音楽イベントをはじめ多目的での適用が可能だとしている。

ビジョンや音響も統合制御し会場の一体感を創出

映像の面では、アリーナ中央上部に「LEDセンターハングビジョン」を設置。観客からの視認性を高めるため逆台形型の特殊形状を採用しており、昇降装置も併せて導入されているため、イベントに合わせて自由に位置を制御できる。

そして観客席には、2層でのリボンビジョンが常設される。楕円形のアリーナを囲むように設置されたリボンビジョンは、下層のものが高さ1m・長さ220mで、上層のビジョンは高さ2m・長さ260mであり、センターハングビジョンとリボンビジョン合わせて総面積1000m2超というビジョンサイズは、国内アリーナにおいて最大級だとした。

そして音響設備としては独・d&b audiotechnikのラインアレイスピーカーが選択され、11台のスピーカーと1台のサブウーハーからなるアレイを8セット納入するとともに、ディレイスピーカー28台、アリーナスピーカー8台(4セット)を設置。アリーナ全体の音圧分布も検証しながら、高い臨場感を提供する空間を構築したとする。

  • 工事中のTOYOTA ARENA TOKYO

    LEDセンターハングビジョンをはじめ照明・映像・音響設備の設置が進むアリーナ(出所:)

そしてTOYOTA ARENA TOKYOでは、照明・映像・音響に関わる各機器まで含めた統合制御を行える“総合演出システム”「KAIROS」も併せて導入された。これにより、照明器具、ビジョン、スピーカーに加えて、エントランスやコンコースに設置された約130台ものサイネージも含めた一括制御が可能となるため、省力化や人的ミスの削減にも寄与するとのこと。そして試合進行に合わせた情報提供や演出連動により、アリーナ全体での体験価値や利便性の向上を実現するとした。

なお、新アリーナを本拠地として使用するアルバルク東京がホームゲームに勝利した際には、会場が一体となった特別演出も実施するとのこと。来場者の一体感を醸成することで、会場でしか味わえない感動を創出し、来場価値を高めるという。

一社での一括納入で運用効率と将来的な拡張性も向上

パナソニックEWの稲継哲章副社長は、アリーナでの観戦体験の演出を担うさまざまな設備を同社が一手に担ったことによる強みとして、「今後のアリーナ運用において変更や拡張の検討が必要となった場合にも、我々がワンストップで総合的にサポートできる点が重要だと感じている」とする。

またアルバルク東京の林邦彦代表取締役社長は、「スポーツの現場で数々の実績を持つパナソニックEWは、バスケットボールをはじめ多目的で用いられるアリーナにおいて非常に強力なパートナーだと認識している」とし、このパートナーシップの下で、“誰もが夢見る舞台”への成長、そして“アリーナ周辺とも一体となった賑わい”の創出に尽力していきたい」と語った。

  • パナソニックEWの稲継哲章副社長

    パナソニックEWの稲継哲章副社長

  • アルバルク東京の林邦彦代表取締役社長

    アルバルク東京の林邦彦代表取締役社長