【厚生労働省】今国会後半で最大の焦点 年金関連法案が成立へ

今国会後半で最大の焦点だった年金制度改革関連法案が、与野党の修正合意により6月22日の会期末までに成立する見通しとなった。自民、公明両党が基礎年金の底上げ策を明記する立憲民主党の修正案を受け入れたためで、年金が「政争の具」となって改革が遅れる事態は回避された。衆院で与党が過半数割れする厳しい国会運営を強いられた石破茂政権にとって、重要な成果といえそうだ。

 全ての人が受け取る基礎年金は、少子高齢化の影響で若い世代ほど給付水準が低下する見込み。政府は厚生年金の積立金と国費を活用した基礎年金の底上げ策を法案に盛り込む方針だったが、自民党内で高齢世代の厚生年金額が一時的に減り、国民の負担増にもつながりかねないことに懸念が続出。政府は底上げ策を削除した形で国会に提出した。

 これに対し、立民は改革の目代である底上げ策の削除を「あんこのないあんパンだ」と批判。与党との修正協議で、29年の財政検証で基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合は底上げ策を実施すると記した修正案を提示した。底上げ策で厚生年金額が減る高齢世代への緩和策も盛り込んだ。

 与野党で修正できる環境が整ったため、夏の参院選への影響を懸念して底上げ策削除を訴えた参院自民幹部も容認に転じた。厚生労働省幹部は「自民と立民は経験上、年金を政争の具にしても選挙で全く有利にならないと知っているため、修正合意へ歩み寄れたのだろう」と解説する。

 ただ、底上げ策への国民の理解は進んでいない。自民幹部は「多くの人は、国民年金保険料を納めて老後に基礎年金を受け取るという仕組みをあまり知らない」と語る。立民幹部は「年金制度は難しい。厚労省年金局はもっと周知広報に力を入れて欲しい」と訴えていた。

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