西日本電信電話(NTT西日本)、日本電信電話(NTT)、QTnetは6月11日、地理的に離れたデータセンターに分散配置された計算処理環境において、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)APN(All-Photonics Network)を活用して処理配置最適化(計算負荷や電力消費に応じた最適な処理配置を動的に行うこと)が可能であることを共同で実証したことを発表した。

この成果により、再生可能エネルギー電力量に余力が見込める地域のデータセンターに処理配置を変更して、再生可能エネルギーを積極的に利用することでカーボンニュートラルに貢献できるようになると期待できる。

実証実験の内容

処理配置最適化の実行を検証するため、福岡と大阪のデータセンター間約600キロメートルの距離をIOWN APNで接続し、アプリケーションを配置した仮想化基盤および生成AI基盤からなる分散データセンター環境を構築した。

従来、長距離のライブマイグレーション(アプリケーションを停止させずに配置を変更)を行う際には、アプリケーションに影響を与えるダウンタイム(システムの一時停止時間)が課題となっていた。今回、IOWN APNの利用により、ダウンタイムの増加を抑えた分散データセンター環境が構築できたという。

次に処理配置最適化による再生可能エネルギー利用率向上の効果を検証するため、実際に九州地域で再生可能エネルギーの出力制御が発生した日のデータを用いて、再生可能エネルギーの発電量やデータセンターの電力利用量に応じて、処理するデータセンターを30分サイクルで選択させる実験を実施した。

  • 再生可能エネルギー需給に応じた自律制御実験

    再生可能エネルギー需給に応じた自律制御実験

実験の結果、今回の処理配置最適化計画は均一に処理を分散させる方式と比較して、当該データセンターにおいて最大31%の再生可能エネルギー利用率の向上が確認されたとのことだ(本実験環境に基づく試算)。

  • システム適用時の電力の推移

    システム適用時の電力の推移

処理配置最適化計画の算出は、外部の電力需給状況や各データセンター内部のリソース状況など多様な要件を考慮するため、膨大な計算量が必要とされていた。しかし今回の実証実験ではNTT独自のアルゴリズムを使用し、1日分の処理配置最適化計画を2分以内に算出した。

この結果より、さらに大規模な環境を対象とした処理再配置への適用も期待できる。なお、今回の方式は3つ以上のデータセンター接続にも適用可能だという。電力需給に余裕のある地域のデータセンターに処理配置を集中することで、積極的な再生可能エネルギー活用につながり、カーボンニュートラルへの貢献が期待できる。